債権回収
自社で債権回収する際の5つの注意点!失敗しないための全知識
「未回収債権を自社で回収したい」と考える経営者必見。自力回収で陥りがちな落とし穴、法的リスク、そして成功のための準備と注意点を弁護士が徹底解説します。トラブルを避け、確実な回収を目指しましょう。

「未回収の売掛金があるけど、弁護士に頼むのは費用がかかるし、まずは自社でどうにかしたい…」 「督促しているけれど、なかなか支払ってもらえない。何かまずいことしてる?」
企業経営者や個人事業主の皆さん、未回収債権の問題に直面し、自社での回収を検討していませんか?
経費を抑えたい、取引先との関係を壊したくない、といった思いから、まずは自力で解決しようと考えるのは当然のことです。
法的な知識がないまま進めると、最悪の場合、貴社自身が違法行為に問われる可能性さえあります。

1. なぜ自社での債権回収は難しいのか?

1-1. 自社回収の現実と直面する壁
- 資金繰りへの影響と焦り: 未回収債権は、貴社の資金繰りを直接圧迫します。資金が滞ると、仕入れや給与の支払いに影響が出始め、焦りから不適切な対応をしてしまうリスクが高まります。
- 担当者の負担増大: 債権回収は、精神的にも時間的にも大きな負担がかかる業務です。本業の傍らで督促や交渉を行うのは容易ではなく、担当者の疲弊や離職に繋がりかねません。
- 法的知識の不足: 債権回収には、民法、商法、民事執行法など、専門的な法律知識が不可欠です。適切な手続きを踏まないと、証拠が不十分になったり、時効を成立させてしまったりするリスクがあります。
- 債務者の悪質な対応: 悪質な債務者は、貴社の法的知識の不足や交渉力の限界を見透かし、支払いをずるずる引き延ばそうとします。連絡を無視したり、居留守を使ったり、さらには反論や虚偽の主張をしてくることもあります。
1-2. 弁護士法と債権回収
自社で債権回収を行う際に最も注意すべきは、弁護士法です。
- 何が「法律事務」にあたるのか?
- 債権回収における交渉、裁判手続きの代理、和解契約の締結などは「法律事務」に該当します。
- 単なる事実の通知(例:「〇月〇日付けの請求書、まだお支払いいただけておりません」)であれば問題ありません。
- 「支払わなければ法的手続きを取る」といった法的な意味合いを含む通告や、債権額の減額交渉、分割払いの提案などは、法律事務に該当する可能性があります。
- 債権回収会社との違い:
- 債権回収会社(サービサー)は、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」に基づき、法務大臣の許可を得て、特定の種類の債権(金融機関の債権など)についてのみ債権回収業務を行うことができます。一般企業は、この許可を持たないため、サービサーと同じような活動はできません。
この弁護士法の規定を理解せずに行動すると、意図せず違法行為に及んでしまうリスクがあるのです。

2. 【核心】自社で債権回収する際の5つの注意点

注意点1:法的リスクを理解する(非弁行為、違法な取り立て)
- 違法な取り立ての禁止:
- 暴力団対策法や貸金業法で規定されているような、強引な取り立て行為は絶対に避けてください。
注意点2:証拠の保全と整理を徹底する
- 必須の証拠:
- 契約書: 売買契約書、業務委託契約書、金銭消費貸借契約書など。口約束は避け、書面で交わすことが重要です。
- 請求書・納品書・領収書: 債権の発生原因と金額、サービスや商品の提供事実を証明します。
- 銀行振込履歴: 支払いの有無や一部入金の証拠となります。
- 補完的な証拠:
- メール・チャット履歴: 債務者とのやり取り、支払いの約束、督促の記録など。
- 議事録・覚書: 交渉内容や合意事項を記録したもの。
- 通話記録・録音: (一部の例外を除き)相手に断りなく録音することは可能ですが、プライバシー侵害のリスクもあるため慎重に。
- 配達証明付き内容証明郵便の控え: 催告の事実と内容を証明します。
注意点3:時効の管理と中断手続きの知識を持つ
- 主な債権の時効期間(民法改正後):
- 一般的な債権(売掛金、貸付金など):
- 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間
- または、権利を行使できる時から10年間
- 上記のいずれか早い方が経過すると時効が成立します。
- 商事債権(事業者間の取引)も、改正後は上記一般債権と同じです。
- 一般的な債権(売掛金、貸付金など):
- 時効の中断(完成猶予・更新):
- 時効の進行を止めるためには、適切な手続きが必要です。
- 催告: 内容証明郵便を送付することで、送付から6ヶ月間時効の完成を猶予できます。ただし、猶予期間内に裁判上の請求(訴訟など)を行わないと、再度時効の進行が始まります。
- 債務の承認: 債務者が一部を支払ったり、支払いを約束したりすること。
- 裁判上の請求(訴訟提起、支払督促など): 裁判所に法的手続きを行うことで、時効は完全にリセット(更新)されます。
- 時効の進行を止めるためには、適切な手続きが必要です。
注意点4:債務者の状況を冷静に見極める
- 支払い意思の有無:
- 本当に払う気がないのか、それとも資金繰りが一時的に厳しいだけなのか。
- 相手の連絡態度や言動から、その意思を推測します。
- 支払い能力の有無:
- 債務者に本当に支払い能力があるのかが最も重要です。いくら債権があっても、相手に財産がなければ、法的な手続きを取っても回収は困難です。
- 可能な範囲で、相手の事業状況(法人)、勤務先(個人)、保有財産(不動産など)を把握しておくと良いでしょう。
注意点5:和解案の提示と柔軟な対応
- 和解案の検討:
- 一括払いが難しい場合、分割払いを提案することも有効です。
- 債務者が支払いに応じる意思があるものの、金額で折り合いがつかない場合は、多少の減額も視野に入れることも検討しましょう。
- 書面での合意:
- 口頭での約束は、後々「言った、言わない」のトラブルになる可能性があります。
- 分割払いなどを合意した場合は、必ず書面(合意書、和解契約書など)で作成し、相手の署名・捺印をもらうようにしましょう。できれば、公正証書にすることも検討すべきです。

3. 自社での債権回収ステップ(目安)

- 事実確認と証拠の整理:
- 債権の発生経緯、金額、支払い期日、これまでの督促履歴などを正確に整理し、関連証拠(契約書、請求書、メールなど)を全て手元に揃える。
- 初期の督促(電話・メール):
- 支払い期日を過ぎたら、まずは電話やメールで穏やかに、期日を過ぎている旨と支払いを依頼する。感情的にならないように注意する。
- 書面での督促(請求書再送・督促状):
- 電話やメールで反応がない場合、内容証明郵便ではない一般的な督促状や請求書を再送する。期限を設けて支払いを促す。
- 内容証明郵便の送付(重要!):
- 一般的な督促に応じない場合、法的手段への移行も視野に入れ、内容証明郵便を送付する。これにより、催告の事実を公的に証明し、時効の完成を6ヶ月間猶予させる。この段階で支払いに応じる債務者も多い。
- 最終交渉(必要であれば):
- 内容証明郵便後も反応がない場合、最後の任意交渉として、書面または電話で接触を試みる。具体的な支払い計画や、分割払いの提案などを打診する。
- 弁護士への相談・依頼の検討:
- ここまでの対応で進展がない場合、自力での回収は困難と判断し、弁護士への相談を強く検討する。

4. よくある質問(FAQ)

自社での債権回収に関して、多くの方が抱く疑問点にお答えします。
Q1:債務者への電話連絡で、絶対に言ってはいけないことはありますか?
Q2:時効が成立しそうな債権でも、自社で回収できますか?
- 内容証明郵便の送付(6ヶ月間の完成猶予)
- 裁判上の請求(訴訟提起、支払督促など)(時効の更新) これらの手続きは法律の専門知識が必要であり、自社で行うには限界があります。時効が迫っている債権は、一刻も早く弁護士に相談することをお勧めします。
Q3:債務者が分割払いを希望してきました。自社で対応して問題ないですか?
- 必ず書面で合意する: 口頭での約束はトラブルの元です。分割払い合意書を作成し、債務者に署名・捺印をもらいましょう。この合意書には、分割金の金額、支払期日、回数、そして「〇回滞納したら残金全額を請求できる」などの条項を明確に記載してください。
- 公正証書の検討: 可能であれば、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成することをお勧めします。これは公証役場で作成する公文書で、債務者が支払いを怠った場合、改めて訴訟を起こすことなく、すぐに強制執行(財産の差し押さえなど)を行うことができる強力な債務名義となります。
分割払いの合意書作成や公正証書作成は、法的な知識が必要です。内容に不備があると、後々不利になる可能性がありますので、不安な場合は弁護士に相談し、サポートを受けることを強くお勧めします。

5. まとめ:自社回収の限界を知り、賢く専門家を頼る

自社での債権回収は、コストを抑えたいという思いから挑戦する企業が多いでしょう。
自力での債権回収は、あくまで初期の督促や、法的な問題が生じない範囲での穏やかな交渉に限定すべきです。
もし、以下のような状況に陥っている場合は、迷わず専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。
弁護士は、貴社の債権の状況を正確に判断し、適切な法的手続き(内容証明郵便、支払督促、訴訟、強制執行など)を駆使して、確実に回収できるようサポートしてくれます。
そして、何よりも、貴社を違法行為のリスクから守り、本業に集中できる環境を取り戻してくれます。

【補足:成功報酬で債権回収するならXP法律事務所とは】
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FAQ
①売掛保証・債権保証とは?
売掛保証とは、企業が商品やサービスを販売した際に発生する売掛金(未回収の代金)が、取引先の倒産や支払い遅延などで回収できなくなった場合に、保証会社や保険会社がその損失を補償してくれるサービスです。
これは、債権保証とも呼ばれ、企業の資金繰り安定や貸倒れリスクの軽減を目的としています。売掛保証を導入すれば、安心して新規取引や大口契約に挑戦でき、事業拡大を後押しする効果が期待できます。いわば、会社の売上を守る「安心の保険」のようなものです。
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②債権回収・未払い回収とは?
債権回収とは、企業や個人が、商品やサービスの提供、または貸付などによって発生した「債権」(お金を受け取る権利)について、約束の期日になっても相手方(債務者)から支払いがない場合に、そのお金を取り戻すための一連の活動を指します。
具体的には、支払いの催促(督促)、交渉、そして最終的には法的手段(内容証明郵便の送付、少額訴訟、通常訴訟、強制執行など)を通じて、未回収の資金を回収するプロセスです。会社の資金繰りを健全に保つ上で非常に重要な業務です。
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