債権回収

自社で債権回収する際の5つの注意点!失敗しないための全知識

「未回収債権を自社で回収したい」と考える経営者必見。自力回収で陥りがちな落とし穴、法的リスク、そして成功のための準備と注意点を弁護士が徹底解説します。トラブルを避け、確実な回収を目指しましょう。

自社で債権回収する際の5つの注意点!失敗しないための全知識

「未回収の売掛金があるけど、弁護士に頼むのは費用がかかるし、まずは自社でどうにかしたい…」 「督促しているけれど、なかなか支払ってもらえない。何かまずいことしてる?」

企業経営者や個人事業主の皆さん、未回収債権の問題に直面し、自社での回収を検討していませんか?

経費を抑えたい、取引先との関係を壊したくない、といった思いから、まずは自力で解決しようと考えるのは当然のことです。

しかし、安易な自力回収は、思わぬトラブルや、かえって債権回収を困難にするリスクをはらんでいます。

法的な知識がないまま進めると、最悪の場合、貴社自身が違法行為に問われる可能性さえあります。

本記事では、自社で債権回収を行う際に絶対に押さえておくべき5つの注意点を、弁護士の視点から徹底解説します。法的リスクを回避し、効率的かつ確実に債権を回収するための準備から、具体的な進め方、そして弁護士への相談タイミングまで、失敗しないための全知識を提供します。


1. なぜ自社での債権回収は難しいのか?

自社での債権回収は、一見するとコストを抑えられるように思えますが、多くの企業が途中で挫折したり、かえって問題を悪化させたりすることが少なくありません。

1-1. 自社回収の現実と直面する壁

  • 資金繰りへの影響と焦り: 未回収債権は、貴社の資金繰りを直接圧迫します。資金が滞ると、仕入れや給与の支払いに影響が出始め、焦りから不適切な対応をしてしまうリスクが高まります。
  • 担当者の負担増大: 債権回収は、精神的にも時間的にも大きな負担がかかる業務です。本業の傍らで督促や交渉を行うのは容易ではなく、担当者の疲弊や離職に繋がりかねません。
  • 法的知識の不足: 債権回収には、民法、商法、民事執行法など、専門的な法律知識が不可欠です。適切な手続きを踏まないと、証拠が不十分になったり、時効を成立させてしまったりするリスクがあります。
  • 債務者の悪質な対応: 悪質な債務者は、貴社の法的知識の不足や交渉力の限界を見透かし、支払いをずるずる引き延ばそうとします。連絡を無視したり、居留守を使ったり、さらには反論や虚偽の主張をしてくることもあります。

1-2. 弁護士法と債権回収

自社で債権回収を行う際に最も注意すべきは、弁護士法です。

弁護士法第72条は、弁護士ではない者が報酬を得る目的で、法律事務を取り扱うことを禁止しています(非弁活動の禁止)。

  • 何が「法律事務」にあたるのか?
    • 債権回収における交渉、裁判手続きの代理、和解契約の締結などは「法律事務」に該当します。
    • 単なる事実の通知(例:「〇月〇日付けの請求書、まだお支払いいただけておりません」)であれば問題ありません。
    • 「支払わなければ法的手続きを取る」といった法的な意味合いを含む通告や、債権額の減額交渉、分割払いの提案などは、法律事務に該当する可能性があります。

  • 債権回収会社との違い:
    • 債権回収会社(サービサー)は、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」に基づき、法務大臣の許可を得て、特定の種類の債権(金融機関の債権など)についてのみ債権回収業務を行うことができます。一般企業は、この許可を持たないため、サービサーと同じような活動はできません。

この弁護士法の規定を理解せずに行動すると、意図せず違法行為に及んでしまうリスクがあるのです。


2. 【核心】自社で債権回収する際の5つの注意点

それでは、自社で債権回収を進める際に、特に注意すべき5つのポイントを詳しく解説します。

注意点1:法的リスクを理解する(非弁行為、違法な取り立て)

前述の通り、弁護士法違反には特に注意が必要です。

非弁行為の禁止
貴社自身や従業員が、債務者との間で法的な権利義務について交渉したり、法的な内容を含む書面を一方的に送りつけたりする行為は、非弁行為とみなされる可能性があります。特に、「弁護士に依頼しないと裁判になる」といった示唆は、行き過ぎると脅迫と取られるリスクもあります。あくまで「事実の通知」と「支払いの督促」に留め、法的な解釈や権利の主張、交渉は避けるべきです。

  • 違法な取り立ての禁止:
    • 暴力団対策法や貸金業法で規定されているような、強引な取り立て行為は絶対に避けてください。

【違法な取り立ての具体例】
・夜間・早朝の電話や訪問(一般的に午後9時〜午前8時)
・大声を出したり、威圧的な態度を取ったりすること
・債務者の自宅や勤務先への押しかけ、長時間居座ること
・第三者(家族、近隣住民、勤務先など)への債務に関する情報の漏洩
・債務者以外の者に対する支払いの要求

これらの行為は、恐喝罪、強要罪、不退去罪などの刑事罰や、行政指導の対象となる可能性があります。

注意点2:証拠の保全と整理を徹底する

債権の存在と内容を証明するための証拠は、自社回収においても、将来的に弁護士に依頼したり、裁判になったりした場合にも不可欠です。

  • 必須の証拠:
    • 契約書: 売買契約書、業務委託契約書、金銭消費貸借契約書など。口約束は避け、書面で交わすことが重要です。
    • 請求書・納品書・領収書: 債権の発生原因と金額、サービスや商品の提供事実を証明します。
    • 銀行振込履歴: 支払いの有無や一部入金の証拠となります。

  • 補完的な証拠:
    • メール・チャット履歴: 債務者とのやり取り、支払いの約束、督促の記録など。
    • 議事録・覚書: 交渉内容や合意事項を記録したもの。
    • 通話記録・録音: (一部の例外を除き)相手に断りなく録音することは可能ですが、プライバシー侵害のリスクもあるため慎重に。
    • 配達証明付き内容証明郵便の控え: 催告の事実と内容を証明します。

【注意点】
・証拠は時系列で整理し、いつでも提示できるようにしておきましょう。
・証拠が不十分な場合、相手が債権の存在を否定したり、金額を争ってきたりする可能性があります。

注意点3:時効の管理と中断手続きの知識を持つ

債権には消滅時効があり、一定期間が経過すると債権が消滅してしまい、法的に請求できなくなります。

  • 主な債権の時効期間(民法改正後):
    • 一般的な債権(売掛金、貸付金など):
      • 債権者が権利を行使できることを知った時から5年間
      • または、権利を行使できる時から10年間
      • 上記のいずれか早い方が経過すると時効が成立します。
    • 商事債権(事業者間の取引)も、改正後は上記一般債権と同じです。

  • 時効の中断(完成猶予・更新):
    • 時効の進行を止めるためには、適切な手続きが必要です。
      • 催告: 内容証明郵便を送付することで、送付から6ヶ月間時効の完成を猶予できます。ただし、猶予期間内に裁判上の請求(訴訟など)を行わないと、再度時効の進行が始まります。
      • 債務の承認: 債務者が一部を支払ったり、支払いを約束したりすること。
      • 裁判上の請求(訴訟提起、支払督促など): 裁判所に法的手続きを行うことで、時効は完全にリセット(更新)されます。

【注意点】
・自社で督促をしているだけでは、基本的に時効は中断しません。
・時効期間を正確に把握し、期限が迫っている場合は、迷わず弁護士に相談するか、少なくとも内容証明郵便を送付しましょう。

注意点4:債務者の状況を冷静に見極める

債権回収の可能性は、債務者の状況に大きく左右されます。感情的にならず、冷静に相手を見極めることが重要です。

  • 支払い意思の有無:
    • 本当に払う気がないのか、それとも資金繰りが一時的に厳しいだけなのか。
    • 相手の連絡態度や言動から、その意思を推測します。

  • 支払い能力の有無:
    • 債務者に本当に支払い能力があるのかが最も重要です。いくら債権があっても、相手に財産がなければ、法的な手続きを取っても回収は困難です。
    • 可能な範囲で、相手の事業状況(法人)、勤務先(個人)、保有財産(不動産など)を把握しておくと良いでしょう。

【注意点】
・相手の状況を把握せずに感情的に迫っても、解決には繋がりません。
・支払能力がないと分かれば、貸倒損失として処理することも含め、早期の損切りも検討する冷静さが必要です。

注意点5:和解案の提示と柔軟な対応

交渉の際には、貴社の一方的な要求だけでなく、相手の状況に合わせた柔軟な和解案を提示することも、早期解決の鍵となります。

  • 和解案の検討:
    • 一括払いが難しい場合、分割払いを提案することも有効です。
    • 債務者が支払いに応じる意思があるものの、金額で折り合いがつかない場合は、多少の減額も視野に入れることも検討しましょう。

  • 書面での合意:
    • 口頭での約束は、後々「言った、言わない」のトラブルになる可能性があります。
    • 分割払いなどを合意した場合は、必ず書面(合意書、和解契約書など)で作成し、相手の署名・捺印をもらうようにしましょう。できれば、公正証書にすることも検討すべきです。

【注意点】
・貴社にとって不利になりすぎない範囲で、譲歩できる点をあらかじめ検討しておくことが重要です。
・合意書は、万が一相手が約束を破った場合に、次の法的手段へ移行する際の重要な証拠となります。


3. 自社での債権回収ステップ(目安)

上記の注意点を踏まえ、自社で債権回収を進める際の一般的なステップを以下に示します。

  1. 事実確認と証拠の整理:
    • 債権の発生経緯、金額、支払い期日、これまでの督促履歴などを正確に整理し、関連証拠(契約書、請求書、メールなど)を全て手元に揃える。
  2. 初期の督促(電話・メール):
    • 支払い期日を過ぎたら、まずは電話やメールで穏やかに、期日を過ぎている旨と支払いを依頼する。感情的にならないように注意する。
  3. 書面での督促(請求書再送・督促状):
    • 電話やメールで反応がない場合、内容証明郵便ではない一般的な督促状や請求書を再送する。期限を設けて支払いを促す。
  4. 内容証明郵便の送付(重要!):
    • 一般的な督促に応じない場合、法的手段への移行も視野に入れ、内容証明郵便を送付する。これにより、催告の事実を公的に証明し、時効の完成を6ヶ月間猶予させる。この段階で支払いに応じる債務者も多い。
  5. 最終交渉(必要であれば):
    • 内容証明郵便後も反応がない場合、最後の任意交渉として、書面または電話で接触を試みる。具体的な支払い計画や、分割払いの提案などを打診する。
  6. 弁護士への相談・依頼の検討:
    • ここまでの対応で進展がない場合、自力での回収は困難と判断し、弁護士への相談を強く検討する。


4. よくある質問(FAQ)

自社での債権回収に関して、多くの方が抱く疑問点にお答えします。

Q1:債務者への電話連絡で、絶対に言ってはいけないことはありますか?

A1:はい、あります。特に以下の点は絶対に避けましょう。

・脅迫的な言動: 「家族に言うぞ」「会社を潰すぞ」など、相手を脅すような発言は恐喝罪に当たる可能性があります。
・プライバシーの侵害: 債務者の家族や勤務先に、無関係な債務内容を暴露すること。
・勤務先への度重なる連絡: 勤務先へのしつこい電話や訪問は、業務妨害とみなされる可能性があります。
・「今すぐ払え」などの強要: 相手に時間を与えず、一方的に支払いを強要する行為は強要罪とみなされる可能性があります。
・貸金業法で禁止されている行為: 一般企業は貸金業者ではないため直接関係しませんが、深夜・早朝の連絡、執拗な連絡、自宅以外での面談要求などは、たとえ貸付金でなくても避けるべきです。 自社で連絡する際は、あくまで「事実の確認と支払いの督促」に徹し、冷静かつ丁寧な言葉遣いを心がけましょう。

Q2:時効が成立しそうな債権でも、自社で回収できますか?

A2:時効が迫っている場合、自社での回収は非常にリスクが高く、困難です。 自社で電話や書面で督促するだけでは、時効は中断しません。 時効を中断(正確には「完成猶予」や「更新」)させるには、法的な手続きが必要です。

  • 内容証明郵便の送付(6ヶ月間の完成猶予)
  • 裁判上の請求(訴訟提起、支払督促など)(時効の更新) これらの手続きは法律の専門知識が必要であり、自社で行うには限界があります。時効が迫っている債権は、一刻も早く弁護士に相談することをお勧めします。

Q3:債務者が分割払いを希望してきました。自社で対応して問題ないですか?

A3:分割払いの交渉自体は問題ありませんが、その後の対応には注意が必要です。

  • 必ず書面で合意する: 口頭での約束はトラブルの元です。分割払い合意書を作成し、債務者に署名・捺印をもらいましょう。この合意書には、分割金の金額、支払期日、回数、そして「〇回滞納したら残金全額を請求できる」などの条項を明確に記載してください。

  • 公正証書の検討: 可能であれば、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成することをお勧めします。これは公証役場で作成する公文書で、債務者が支払いを怠った場合、改めて訴訟を起こすことなく、すぐに強制執行(財産の差し押さえなど)を行うことができる強力な債務名義となります。

弁護士への相談

分割払いの合意書作成や公正証書作成は、法的な知識が必要です。内容に不備があると、後々不利になる可能性がありますので、不安な場合は弁護士に相談し、サポートを受けることを強くお勧めします。


5. まとめ:自社回収の限界を知り、賢く専門家を頼る

自社での債権回収は、コストを抑えたいという思いから挑戦する企業が多いでしょう。

しかし、本記事で解説したように、そこには「弁護士法に抵触するリスク」や「違法な取り立てとみなされるリスク」、そして「時効の成立」や「証拠不備による回収不能」といった、重大な落とし穴が潜んでいます。

自力での債権回収は、あくまで初期の督促や、法的な問題が生じない範囲での穏やかな交渉に限定すべきです。

もし、以下のような状況に陥っている場合は、迷わず専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。

▪️債務者が連絡を無視し始めた、あるいは交渉に応じない。
▪️債務者が法的な知識をちらつかせたり、言い訳を繰り返したりする。
▪️時効が迫っている債権がある。
▪️債務者の所在や財産状況が不明である。
▪️自社での回収作業に、時間的・精神的な限界を感じている。

弁護士は、貴社の債権の状況を正確に判断し、適切な法的手続き(内容証明郵便、支払督促、訴訟、強制執行など)を駆使して、確実に回収できるようサポートしてくれます。

そして、何よりも、貴社を違法行為のリスクから守り、本業に集中できる環境を取り戻してくれます。

【補足:成功報酬で債権回収するならXP法律事務所とは】

XP法律事務所は、債権回収を成功報酬で行います。

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    FAQ

    ①売掛保証・債権保証とは?

    売掛保証とは、企業が商品やサービスを販売した際に発生する売掛金(未回収の代金)が、取引先の倒産や支払い遅延などで回収できなくなった場合に、保証会社や保険会社がその損失を補償してくれるサービスです。

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    ②債権回収・未払い回収とは?

    債権回収とは、企業や個人が、商品やサービスの提供、または貸付などによって発生した「債権」(お金を受け取る権利)について、約束の期日になっても相手方(債務者)から支払いがない場合に、そのお金を取り戻すための一連の活動を指します。

    具体的には、支払いの催促(督促)、交渉、そして最終的には法的手段(内容証明郵便の送付、少額訴訟、通常訴訟、強制執行など)を通じて、未回収の資金を回収するプロセスです。会社の資金繰りを健全に保つ上で非常に重要な業務です。

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