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未払金の仕訳・税務処理完全ガイド|貸倒損失・引当金・消費税の取り扱い【2026年版】

未払金(買掛金との違い)の発生時/支払時/貸倒時の仕訳、貸倒損失計上3要件、貸倒引当金、消費税の税額控除、勘定科目選び、決算期の処理を編集部が解説します。

記事の要約
未払金(買掛金との違い)の発生時/支払時/貸倒時の仕訳、貸倒損失計上3要件、貸倒引当金、消費税の税額控除、勘定科目選び、決算期の処理を編集部が解説します。
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📌 この記事のサマリー
未払金(みばらいきん)は、商品・サービスの提供を受けたが対価を未払いの状態を表す負債科目です。本記事では、発生時・支払時・貸倒時の典型仕訳、買掛金・未払費用との科目選定基準、法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3に基づく貸倒損失計上3要件、中小法人の貸倒引当金特例、消費税法39条の貸倒れに係る税額控除、決算期の処理ポイントを、資金繰り総研 編集部が2026年6月時点の解釈で整理しました。なお、個別の税務判断は必ず顧問税理士に確認してください。

本記事は、ハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?回収方法について解説」の派生として、「回収できないとなったとき・回収後にどう仕訳・税務処理するか」を深掘りする位置づけです。回収手段そのもの(内容証明・支払督促・少額訴訟など)はハブ記事を参照してください。


目次
  1. 🧾 未払金とは|定義・性質・他の負債科目との違い
  2. 📒 未払金の発生時・支払時の基本仕訳
  3. 📥 債権者側の視点|売掛金が回収できないときの仕訳
  4. ⚖️ 貸倒損失の計上3要件|法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3
  5. 🏦 貸倒引当金の中小法人特例|法定繰入率と個別評価
  6. 💴 消費税の取り扱い|貸倒れに係る税額控除
  7. 🧮 勘定科目選びの実務|未払金 vs 買掛金 vs 未払費用
  8. 📅 決算期の処理|未払金の残高確認と税効果
  9. ⚠️ 実務上の落とし穴|計上漏れ・二重計上・科目誤り
  10. ⏰ 計上タイミングの判断|発生主義と債務確定基準
  11. 🏭 業種別の典型仕訳パターン|製造・小売・IT・建設
  12. 🌐 特殊論点|外貨建て未払金・電子記録債務・関係会社取引
  13. ❓ FAQ|未払金の仕訳・税務に関する頻出8問

🧾 未払金とは|定義・性質・他の負債科目との違い

未払金は、企業会計原則・中小企業の会計に関する指針上、「商品・サービスの提供を受けたものの、対価を未払いの状態にある債務」のうち、営業取引以外から生じたものを処理する勘定科目です。営業取引(仕入や役務の提供)から生じる債務は「買掛金」、毎期継続的に発生する役務債務は「未払費用」で処理し、これらと区別して理解する必要があります。

未払金・買掛金・未払費用は、いずれも「将来お金を支払う義務」という意味では同じですが、性質と決算書での扱いが異なるため、科目選定を間違えると経営分析(売上債権回転日数・買入債務回転日数など)に影響します。

A-1. 未払金の典型例

  • 固定資産(機械・車両・PC等)の購入代金で未払いのもの
  • 消耗品・事務用品の購入で月締めとなっているもの
  • 広告宣伝費の請求で、支払期日が翌月末となっているもの
  • 外注費・業務委託費のうち、本業の仕入に該当しないもの
  • 修繕費・保守料の請求で未払いのもの

A-2. 買掛金との違い

買掛金は「営業取引(仕入)から生じた未払債務」に限定されます。たとえば食品卸が食品メーカーから商品を仕入れた際の未払代金は買掛金、その卸が事務所のコピー機を購入した際の未払代金は未払金です。同じ「請求書に基づく支払い」でも、本業に直結する取引かどうかで科目が変わります。

A-3. 未払費用との違い

未払費用は「継続的役務提供を受けているが、まだ支払期日が来ていない部分」で発生します。代表例は給与・賃借料・支払利息・水道光熱費の月次按分額です。一方、未払金は「役務・物品の提供は完了したが、対価の支払期日を経過していない(または経過した)」状態を表します。

A-4. 三科目の整理表

科目性質典型例決算書上の位置
買掛金営業取引(仕入)からの未払い商品仕入代金流動負債(仕入債務)
未払金営業外取引からの未払い固定資産購入・広告費流動負債(その他流動負債)
未払費用継続的役務の経過分家賃・給与・利息流動負債(経過勘定)
※科目選定は会社の会計方針・継続性の原則に従う必要があります(2026年6月時点)。

科目の使い分けが整理できたところで、次は仕訳の基本パターンに進みます。


📒 未払金の発生時・支払時の基本仕訳

未払金の仕訳は、発生時(請求書受領または検収時)と支払時(実際の振込・引落時)の2点で計上するのが原則です。3伝票制を採用している会社では「振替伝票」「出金伝票」が該当します。

B-1. 発生時の仕訳

たとえばPC1台(税抜10万円・消費税1万円)を購入し、翌月末払いの請求書を受領した場合の仕訳は次のとおりです。

借方貸方摘要
消耗品費 100,000円
仮払消費税 10,000円
未払金 110,000円○○社よりPC購入

消費税の経理処理が税抜方式の例です。税込方式を採用している場合は、消耗品費110,000円/未払金110,000円となります。

B-2. 支払時の仕訳

借方貸方摘要
未払金 110,000円
支払手数料 550円
普通預金 110,550円○○社へPC代金振込
振込手数料が自社負担の契約であれば、上記のように「支払手数料」を計上します。相手負担の場合は支払手数料は計上せず、未払金110,000円/普通預金109,450円(手数料550円を差し引いた額)となります。

B-3. 固定資産取得時の仕訳

たとえば営業車両(税抜200万円・消費税20万円)を購入し、翌月末払いとした場合の仕訳例です。

借方貸方
車両運搬具 2,000,000円
仮払消費税 200,000円
未払金 2,200,000円

固定資産取得の付随費用(自動車取得税・登録費用等)の取り扱いは個別判断となるため、税理士確認を推奨します。

B-4. 一部支払時の仕訳

110,000円のうち、まず半額の55,000円を支払った場合の仕訳例です。

借方貸方
未払金 55,000円普通預金 55,000円

残額55,000円は未払金として残ります。補助簿(取引先別未払金台帳)を運用し、相手先ごとの残高管理を徹底することで、誤入金・二重払いを防げます。

B-5. 手形による支払時

支払手段が約束手形の場合、手形振出時に未払金から「支払手形」へ振り替えます。

借方貸方
未払金 1,000,000円支払手形 1,000,000円

基本仕訳が整理できたところで、自社が債権者側(売掛金が未払金として滞留している側)での仕訳に視点を移します。


📥 債権者側の視点|売掛金が回収できないときの仕訳

未払金は「自社が支払う側」の科目ですが、取引相手から見れば売掛金に対応します。ハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?」は債権者側からの回収を整理した記事ですが、本節ではその「会計・税務面での連動」を整理します。

C-1. 売掛金発生時の仕訳(自社が販売者)

借方貸方
売掛金 1,100,000円売上 1,000,000円
仮受消費税 100,000円

C-2. 支払期日を過ぎた段階の処理

支払期日を過ぎても、すぐに会計上の処理が変わるわけではありません。原則として売掛金のままで滞留し、「売掛金エイジング表」で滞留期間ごとに区分管理します。一般的なエイジング区分は「30日以内」「31〜60日」「61〜90日」「91〜180日」「181日超」などです。

滞留期間が長期化したからといって、即座に貸倒損失を計上できるわけではありません。後述する法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3の要件を満たさない段階での損金算入は、税務調査で否認されるリスクがあります。

C-3. 一部回収時の仕訳

督促や和解の結果、一部のみ回収できた場合は、回収額のみ売掛金を消し込みます。

借方貸方
普通預金 500,000円売掛金 500,000円

C-4. 和解による減額確定時

たとえば110万円の売掛金につき、80万円で和解(30万円減額)した場合、減額部分の処理が論点になります。減額が「債権の一部免除」に該当する場合、免除部分は売上値引・売上戻りや貸倒損失等の科目で処理します。

借方貸方
普通預金 800,000円
貸倒損失 300,000円
売掛金 1,100,000円
和解による免除は「相手の支払能力欠如」が前提となるため、税務上の貸倒損失要件(9-6-1〜9-6-3)との整合性確認が必要です。減額の経済的合理性を客観資料(和解書・支払督促取下書・財産調査結果)で残しておくことが重要です。

C-5. 償却済債権の事後回収

過去に貸倒損失として処理した売掛金が、後日(部分的にでも)回収できた場合は、「償却債権取立益」として益金算入します。

借方貸方
普通預金 200,000円償却債権取立益 200,000円

債権者側の処理が整理できたところで、最重要論点である貸倒損失の計上要件に進みます。


⚖️ 貸倒損失の計上3要件|法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3

貸倒損失は「経営者が回収できないと思った」だけでは損金算入できません。法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3で示された3つの類型のいずれかに該当する必要があります(2026年6月時点)。

D-1. 法的整理による貸倒れ(通達9-6-1)

会社更生法・民事再生法・破産法等の法的整理手続で、債権の切り捨てが法的に確定した部分について、その確定日の属する事業年度に損金算入します。

  • 更生計画認可決定・再生計画認可決定により切り捨てられた部分
  • 特別清算に係る協定の認可決定により切り捨てられた部分
  • 債権者集会の協議決定・行政機関や金融機関等のあっせん協議で合理的基準により切り捨てられた部分

D-2. 事実上の貸倒れ(通達9-6-2)

債務者の資産状況・支払能力等から見て、その全額が回収できないことが明らかになった場合に、その明らかになった事業年度で全額を損金算入できます。担保物がある場合は、まず担保物の処分による回収を行ったうえで、残額について判断します。

「明らか」と判断するための客観資料(破産配当通知書・財産調査報告書・代表者の所在不明を示す書類等)の保管が必須です。資料がないまま損金算入すると、税務調査で否認される典型パターンになります。

D-3. 形式上の貸倒れ(通達9-6-3)

取引停止後1年以上経過した売掛債権について、「備忘価額1円」を残して残額を損金算入できる類型です。継続的取引のあった売掛金で、次のいずれかに該当する場合に適用されます。

  • 取引停止時、最後の弁済期、最後の弁済時のうち最も遅い日から1年以上経過したもの
  • 同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が、取立費用に満たない場合で、督促しても弁済がないもの

D-4. 3類型の比較

類型通達計上時期備忘価額
法的整理9-6-1切り捨て確定日不要
事実上の貸倒れ9-6-2明らかになった日不要(全額)
形式上の貸倒れ9-6-3取引停止後1年経過後1円残す
※実際の適用は個別事情で異なります。税理士確認を推奨します(2026年6月時点)。

D-5. 貸倒損失の仕訳

場面借方貸方
事実上の貸倒れ(全額)貸倒損失 1,100,000円売掛金 1,100,000円
形式上の貸倒れ(1円備忘)貸倒損失 1,099,999円売掛金 1,099,999円
引当金で先行計上済の場合貸倒引当金 1,100,000円売掛金 1,100,000円

形式上の貸倒れ(9-6-3)の場合、売掛金1,099,999円を消し込み、1円を備忘として残します。これにより「将来、何らかの形で回収できる可能性」を会計帳簿上で示し続けることができます。

貸倒損失の3要件を理解したところで、次は貸倒引当金の仕組みに進みます。


🏦 貸倒引当金の中小法人特例|法定繰入率と個別評価

貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えて見積計上する負債科目です。会計上は金融商品会計基準・中小企業の会計に関する指針に基づき、税務上は法人税法52条に基づいて計算します。

E-1. 損金算入が認められる法人の範囲

2026年6月時点では、貸倒引当金繰入の損金算入は次の法人に限定されています。

  • 中小法人(資本金1億円以下、ただし大法人の100%子会社等を除く)
  • 銀行・保険会社・その他これに準ずる法人
  • 公益法人・協同組合等
大法人(資本金1億円超)は原則として貸倒引当金繰入の損金算入が認められません。中堅企業が増資で大法人化する際は、引当金の取扱いに大きな影響が出るため、税理士・公認会計士に確認してください。

E-2. 一括評価金銭債権と法定繰入率

売掛金・受取手形・貸付金等を「一括評価金銭債権」としてまとめ、業種別の法定繰入率を乗じて貸倒引当金の繰入限度額を計算する方法です。中小法人で広く採用されています。

業種法定繰入率の目安
卸売業・小売業1000分の10
製造業1000分の8
金融業・保険業1000分の3
割賦販売小売業等1000分の7
その他1000分の6
※実際の率は法令・通達の最新版に従って適用してください。2026年6月時点の一般的整理です。

E-3. 個別評価金銭債権

個別評価金銭債権は、特定の債務者について回収不能リスクが顕在化した債権を個別に評価し、繰入限度額を計算する方法です。

  • 更生計画認可の決定・再生計画認可の決定等があった債権
  • 債務超過の状態が相当期間継続し、事業好転の見通しがない債権
  • 形式基準(破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始の申立等)に該当する債権

E-4. 繰入時・取崩時の仕訳

場面借方貸方
当期繰入貸倒引当金繰入 500,000円貸倒引当金 500,000円
翌期洗替(戻入)貸倒引当金 500,000円貸倒引当金戻入益 500,000円
取崩(貸倒れ確定時)貸倒引当金 300,000円売掛金 300,000円

会計方針として「洗替法」または「差額補充法」のいずれかを採用し、継続性の原則に従って適用します。

E-5. 申告書での記載

貸倒引当金の繰入限度額計算は、法人税申告書別表11(1)・別表11(1の2)で行います。記入を誤ると損金算入限度超過額が発生し、結果として法人税の追徴対象になります。実務では会計事務所・税理士法人に依頼するのが一般的です。

引当金の整理ができたところで、次は消費税の取り扱いに進みます。


💴 消費税の取り扱い|貸倒れに係る税額控除

売掛金が貸倒れとなった場合、その売掛金には消費税相当額が含まれているため、消費税法上も控除の仕組みが用意されています。

F-1. 消費税法39条の概要

消費税法39条は、課税資産の譲渡等に係る売掛金等が貸倒れとなった場合、その売掛金に含まれていた消費税額を、貸倒れが発生した課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除できると定めています。

F-2. 控除の計算方法

たとえば1,100,000円(税抜1,000,000円・消費税100,000円)の売掛金が貸倒れとなった場合、貸倒れに係る消費税額は次のように計算します(標準税率10%の場合)。

貸倒れに係る消費税額 = 1,100,000円 × 10/110 = 100,000円

F-3. 法人税の貸倒損失計上要件との連動

消費税の貸倒れ控除を適用するには、法人税法上の貸倒損失計上要件(9-6-1〜9-6-3)を満たしていることが前提です。法人税で貸倒損失を計上しないまま、消費税のみ控除することは認められません。

逆に「形式上の貸倒れ(9-6-3)で備忘1円を残した場合」も、消費税の貸倒れ控除は適用可能です。法人税と消費税の連動を意識して、社内手続を整理しましょう。

F-4. 控除後に回収できた場合

貸倒れに係る消費税額の控除を受けた後、回収できた場合は、その回収日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します。法人税上は「償却債権取立益」、消費税上は「税額加算」と、両方の処理が必要です。

F-5. インボイス制度との関連

2023年10月開始のインボイス制度(適格請求書等保存方式)導入後も、貸倒れに係る消費税控除の制度自体は維持されています。ただし、免税事業者からの仕入に関する経過措置や、貸倒れ時の証憑要件は個別判断となるため、税理士確認が重要です。

消費税を整理したところで、次は実務でよく迷う勘定科目の選び方に進みます。


🧮 勘定科目選びの実務|未払金 vs 買掛金 vs 未払費用

仕訳の正確性は、科目選びから始まります。実務では「迷うパターン」が定型化しているため、判断軸を整理しておきます。

G-1. 判断フローチャート

  • Q1: 本業の仕入か? → YESなら買掛金
  • Q2: 継続的役務の経過分か? → YESなら未払費用(家賃・利息・給与等)
  • Q3: 上記以外で、請求書を受領した一回限り(または都度発生)の取引か? → 未払金

G-2. 迷いやすい典型ケース

ケース科目理由
広告代理店への媒体費請求買掛金 または 未払金広告業なら買掛金、IT業なら未払金が一般的
システム保守の年額契約未払費用継続的役務の経過分
サーバー利用料の月次請求未払費用継続的役務
固定資産購入未払金営業外取引
外注ライターへの記事執筆料未払金 または 買掛金メディア運営業なら買掛金
社員の給与で未払のもの未払費用継続的役務(労働)の経過分
顧問税理士への月次顧問料未払費用継続的役務

G-3. 業種別の科目慣行

業種によって「本業に直結する取引」の範囲が異なるため、買掛金・未払金の区分も自社の事業内容に応じて社内ルール化することが重要です。

  • 製造業:原材料・部品の仕入が買掛金、設備購入・修繕費が未払金
  • 小売業:商品仕入が買掛金、店舗備品・販促費が未払金
  • IT業:外注開発費が買掛金または外注費(未払金)、サーバー利用料は未払費用
  • 建設業:下請工事費・材料費が買掛金(または工事未払金)、設計外注費が未払金

G-4. 継続性の原則

同じ取引について、ある年は買掛金、別の年は未払金と処理すると、決算書の比較可能性を損ないます。継続性の原則に従い、社内ルールで明文化し、毎期同じ判断で処理してください。

G-5. 補助科目(取引先別・部門別)の活用

未払金科目は、性質上「相手先がバラバラ・取引内容がバラバラ」になりがちです。補助科目(取引先別・部門別)を設定することで、月末残高の内訳確認・支払予定管理が容易になります。クラウド会計ソフト(freee・マネーフォワード等)では補助科目機能が標準装備されています。

科目選びの軸が整理できたところで、次は決算期の処理に進みます。


📅 決算期の処理|未払金の残高確認と税効果

決算期は、年間の取引を整理し、税務申告のベースとなる決算書を確定させる重要なタイミングです。未払金関連で確認すべきポイントを整理します。

H-1. 期末未払金の残高確認

  • 取引先別の未払金残高一覧を作成(補助科目から自動出力可)
  • 残高確認書(残高証明書)を取引先に発送し、相互チェック
  • 長期滞留している未払金は、原因調査(請求書未受領・既支払の二重計上等)
  • 支払期日が決算日の翌期になるものでも、債務が確定していれば未払金計上が必要

H-2. 決算整理仕訳の典型例

場面借方貸方
未計上分の漏れ補正各費用科目未払金
期末の貸倒引当金繰入貸倒引当金繰入貸倒引当金
貸倒損失の確定貸倒損失売掛金
消費税の貸倒れ控除仮受消費税未払消費税等(控除分)

H-3. 税効果会計との関係

会計上の貸倒引当金と税務上の繰入限度額に差異がある場合、税効果会計の対象となります。具体的には繰入超過額に係る「将来減算一時差異」として、繰延税金資産を計上します(中小企業の会計に関する指針を採用している場合は適用任意)。

中小企業では税効果会計を採用しない選択もできますが、銀行借入・M&A・上場準備等の場面では税効果会計の適用が求められることが多いため、会計方針として明文化しておくと安心です。

H-4. 監査・税務調査での論点

  • 貸倒損失計上の客観資料(破産通知・財産調査結果・取引停止証憑)の有無
  • 貸倒引当金の業種別法定繰入率の正確性
  • 消費税の貸倒れ控除と法人税の貸倒損失の連動性
  • 未払金の長期滞留分が「実在性のある債務」か(架空計上の否定)

H-5. 決算前にチェックすべきリスト

  • 取引先別の残高確認書送付・回収
  • 9-6-3「取引停止後1年経過」の対象債権の洗い出し
  • 破産・民事再生・特別清算等の通知書類の整理
  • 消費税申告書「課税標準額に対する消費税額の計算」での貸倒れ調整欄の確認
  • 顧問税理士との「貸倒れ処理可否」事前協議

決算期の処理ポイントを押さえたところで、未払金まわりの実務的な注意点・落とし穴に進みます。


⚠️ 実務上の落とし穴|計上漏れ・二重計上・科目誤り

未払金は科目の性質上、「請求書ベースの処理」となるため、書類管理が甘いと計上漏れ・二重計上が発生しやすい科目です。

I-1. 計上漏れの典型パターン

  • 請求書が経理部門に届かないまま月末を迎える
  • 営業担当者の手元で請求書が止まっている
  • サブスクリプション・継続契約の自動更新分の計上忘れ
  • 決算日後に届いた「決算日以前の取引分」の請求書を翌期処理してしまう

I-2. 二重計上の典型パターン

  • 請求書ベースで計上後、明細書ベースで再計上
  • カード決済の利用明細と、カード会社からの請求書を両方計上
  • 支払時に未払金を消し込まず、別科目で支払処理

I-3. 科目誤りの典型パターン

  • 本業外なのに買掛金で処理(または逆)
  • 未払費用(経過勘定)と未払金(債務確定)の混同
  • 固定資産購入の付随費用を「未払金」ではなく「未払費用」で処理

I-4. 防止策|社内手続のチェックリスト化

  • 請求書受領フロー(メール受信→経理転送→計上→承認)の明文化
  • 支払予定表(毎月の請求書受領一覧)と帳簿の月次照合
  • 取引先別残高確認書の年1回送付
  • クラウド会計ソフト+電子帳簿保存法対応で証憑の一元管理

I-5. 電子帳簿保存法への対応

2024年1月以降、電子取引のデータ保存が原則義務化されました。請求書をメール・PDFで受領した場合、電子データのまま検索可能な形で保存する必要があります。未払金計上の根拠資料として、電子帳簿保存法に準拠した保存体制を整えてください。

実務上の落とし穴を整理したところで、ハブ記事との関係性を改めて確認します。回収手段については未払金を回収する10個の方法とは?回収方法について解説を参照してください。次は具体的な計上タイミングに進みます。


⏰ 計上タイミングの判断|発生主義と債務確定基準

会計上は発生主義、税務上は債務確定基準が原則ルールです。両者は概ね一致しますが、判断が分かれるケースがあるため整理しておきます。

J-1. 発生主義の原則

発生主義は、現金収支ではなく取引の事実が発生した時点で収益・費用を認識します。請求書受領前でも、検収・引渡が完了していれば、未払金として計上するのが原則です。

J-2. 債務確定基準の3要件

税務上、未払費用・未払金が損金算入できるのは、次の3要件をすべて満たした時点です(法人税基本通達2-2-12)。

  • ① 期末までに当該費用に係る債務が成立していること
  • ② 期末までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
  • ③ 期末までにその金額を合理的に算定できること

J-3. 判断が分かれる典型例

ケース計上判断
期末納品・請求書翌期受領当期計上(発生主義・債務確定済)
期末発注・翌期納品翌期計上(債務未確定)
期末役務完了・金額未確定合理的見積で当期計上、または翌期計上
翌期検収予定の納品原則翌期(検収条件次第)
瑕疵担保期間中の修補費用原則翌期、または見積引当

J-4. 賞与引当金との区別

従業員賞与のうち、支給日が決算日後で支給対象期間が当期に係るものは、賞与引当金(または未払賞与)として計上します。未払金とは別科目で処理するため、給与関連の経過勘定と混同しないよう注意してください。

J-5. 月次決算の精度向上

月次決算でも未払金の計上タイミングを正確に押さえることで、月次PLの信頼性が高まります。月次PLが正確になると、銀行融資審査・経営判断のスピードと精度が向上します。

計上タイミングを整理したところで、業種別の典型仕訳パターンも見ておきます。


🏭 業種別の典型仕訳パターン|製造・小売・IT・建設

業種ごとに「未払金として処理する典型取引」は異なります。自社の業種に合わせた仕訳イメージを持つことで、日常の経理処理を迷わず進められます。

K-1. 製造業の典型仕訳

  • 原材料・部品の仕入:買掛金
  • 製造設備の購入:未払金(または長期未払金)
  • 設備保守費用:未払費用または未払金
  • 外注加工費:買掛金または外注費(未払金)

K-2. 小売業の典型仕訳

  • 商品仕入:買掛金
  • 店舗備品・什器:未払金
  • POS・販売管理システム購入:未払金
  • 販促費(チラシ・看板):未払金

K-3. IT業の典型仕訳

  • 外注開発費(請負):買掛金または外注費(未払金)
  • クラウドサーバー利用料:未払費用
  • ソフトウェアライセンス(一括購入):未払金
  • 業務委託(フリーランス):未払金

K-4. 建設業の典型仕訳

  • 材料費・下請工事費:買掛金または工事未払金
  • 建設機械の購入:未払金
  • 設計外注費:未払金
  • 現場経費(仮設費等):未払金

K-5. 業種共通の仕訳ルール

業種が異なっても「本業の仕入は買掛金、それ以外は未払金、継続役務は未払費用」という基本ルールは変わりません。自社の事業内容を整理して、勘定科目選定マニュアルを社内文書化することを推奨します。

業種別パターンを整理したところで、続いて外貨建て未払金等のやや特殊な論点も触れておきます。


🌐 特殊論点|外貨建て未払金・電子記録債務・関係会社取引

通常の未払金仕訳に加え、近年の取引形態の多様化により、特殊な論点を扱う場面が増えています。代表的な3つの論点を整理します。

L-1. 外貨建て未払金の換算

海外取引で外貨建ての請求書を受領した場合、取引発生時の為替レート(直物または社内レート)で円換算し、未払金を計上します。決算日には決算日レートで換算替えを行い、差額を為替差損益として処理します。

場面借方貸方
外貨建未払金 計上(10,000ドル×150円)消耗品費 1,500,000円未払金 1,500,000円
決算日換算替え(155円)為替差損 50,000円未払金 50,000円
支払時(148円)未払金 1,550,000円普通預金 1,480,000円
為替差益 70,000円

L-2. 電子記録債務(でんさい)

でんさいネット等の電子記録債権を支払手段として使う場合、未払金から「電子記録債務」へ振り替えます。手形と類似の処理ですが、紙の手形振出が不要で、印紙税も発生しない点が特徴です。

場面借方貸方
でんさい発生時未払金 1,100,000円電子記録債務 1,100,000円
でんさい決済時電子記録債務 1,100,000円普通預金 1,100,000円

L-3. 関係会社取引の独立科目

親会社・子会社・関連会社との取引で発生した未払金は、「関係会社未払金」「親会社未払金」等の独立科目で表示することが一般的です。連結決算では相殺消去の対象となるため、補助科目で取引相手を明確化しておく必要があります。

L-4. リース取引における未払金

ファイナンス・リース取引でリース物件を「資産計上+リース債務計上」する場合、リース債務の科目選定が論点になります。中小企業の会計に関する指針では、賃貸借処理(オペレーティング・リース類似)が選択可能ですが、税務上は要件があるため、税理士確認が重要です。

L-5. 長期未払金の表示

未払金のうち、決算日から1年を超えて支払期日が到来するものは、「長期未払金」として固定負債に区分表示します。1年基準(ワン・イヤー・ルール)の適用例で、固定資産購入の長期分割払いや、退職一時金の長期支払約定等が該当します。

特殊論点を整理したところで、最後に頻出のFAQを整理します。


❓ FAQ|未払金の仕訳・税務に関する頻出8問

Q1: 未払金と買掛金、どちらで処理すべきか迷うとき判断基準は?

A1: 「本業の仕入か否か」が判断軸です。製造業の原材料・小売業の商品仕入は買掛金、それ以外(固定資産・広告費・修繕費等)は未払金です。

同じ取引について毎期同じ判断ができるよう、社内ルールを文書化することが重要です。判断ルールは事業内容の変更(新規事業立ち上げ等)のたびに見直してください。

Q2: 取引先が音信不通になりました。即座に貸倒損失を計上できますか?

A2: 原則として「音信不通」だけでは貸倒損失計上は認められません。客観的に「全額回収不能」と判断できる資料が必要です。

形式上の貸倒れ(9-6-3)で「取引停止後1年経過」を待つか、財産調査・破産通知の客観資料を揃えて事実上の貸倒れ(9-6-2)を主張するのが現実的です。回収可否の判断は、まずハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?」で整理した手段を講じた記録を残しておくと、後の税務調査でも説明しやすくなります。

Q3: 貸倒引当金は毎期計上すべきですか?

A3: 中小法人で売掛金等の一括評価対象債権がある場合、毎期計上するのが一般的です。

業種別法定繰入率を使えば、申告書別表11(1)で機械的に計算できます。会計上は中小企業の会計に関する指針に基づいて、期末売掛金等の一定割合を見積計上します。

Q4: 消費税の貸倒れ控除を忘れると、どうなりますか?

A4: 貸倒れに係る消費税額を控除し損ねた場合、控除の機会を逃すことになり、結果として消費税の納税額が増えます。

更正の請求(法定申告期限から原則5年以内)で取り戻すことができますが、必ず期限内に対応してください。法人税の貸倒損失計上と消費税の貸倒れ控除は同じタイミングで連動させるのが基本です。

Q5: 個人事業主でも貸倒損失や貸倒引当金は計上できますか?

A5: はい、個人事業主でも所得税法上の貸倒損失計上・貸倒引当金繰入が可能です。

所得税法基本通達51-11・51-12等で、法人税基本通達と類似した類型が示されています。青色申告の事業所得者であれば、貸倒引当金(一括評価・個別評価)の繰入も可能です。

Q6: 訴訟費用・弁護士費用の仕訳科目は?

A6: 「支払手数料」または「諸会費(弁護士報酬)」「訴訟費用」等で処理するのが一般的です。

債権回収目的の弁護士費用は、原則として支出時の事業年度に損金算入できます。ただし、固定資産取得や繰延資産に該当するケースなど例外もあるため、税理士確認を推奨します。

Q7: 関係会社からの未払金は、通常の取引先と同じ処理でよいですか?

A7: 関係会社(親会社・子会社・関連会社)との取引は、別途「関係会社未払金」等の独立科目で表示することが一般的です。

関連当事者取引の開示要件、移転価格税制、グループ法人税制等が絡むため、通常の未払金とは区分管理が必要です。特にM&A・上場準備のフェーズでは早期に整理しておきましょう。

Q8: 未払金の長期滞留分は、何年で「消える」のですか?

A8: 法律上は「債権の消滅時効」が成立すれば消えますが、会計上は自動的には消えません。

改正民法(2020年4月施行)により、原則として「権利を行使できることを知ったときから5年」で消滅時効が成立します。ただし、債務者が「時効を援用する」と意思表示するまでは消えません。会計帳簿上は「債務免除」「期限経過による消滅」を別途処理する必要があります。詳細は派生記事「未払金の時効完全ガイド」も参照してください。


免責事項:本記事は2026年6月時点の一般的な解釈に基づくものであり、特定の事案に関する税務・法務助言を構成するものではありません。実際の仕訳・税務処理は、必ず顧問税理士・公認会計士へ確認のうえ行ってください。法令・通達・指針は改正されることがあり、本記事の内容が将来も同様に適用される保証はありません。
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最終更新日 2026年6月1日
編集 資金繰り総研 編集部(株式会社 PROTOCOL)

本記事は 資金繰り総研 編集部が制作したものです。資金繰り総研は中小企業・個人事業主のファクタリング業者選びを支援するメディアで、103 社の業者を公開情報・提携データをもとに比較・評価しています。

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