01公庫の創業融資とは
公庫って、どんなところ?
政府系の金融機関です。創業者向けの代表的な制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」で、事業を始める方や開業後おおむね7年以内の方が対象とされています。
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。小規模事業者や個人事業主向けの融資は「国民生活事業」が担当しています。創業者向けの代表的な制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」です。
公式案内では、対象は「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」とされています。ただし「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」に限られます。創業計画書の提出などにより、事業計画の内容を確認するとしています。
まだ決算の実績がない段階でも、事業計画をもとに検討してもらえる点が大きな特徴です。民間の金融機関では実績が求められやすい創業期に、まず検討したい選択肢の一つです。融資の出し手全体の中での位置づけは融資先の図鑑や融資・デットのまとめをご覧ください。
公庫は、融資だけでなく創業の相談窓口も設けています。創業計画の書き方の案内や、来店・オンラインでの相談、各地の支援機関の紹介などです。融資を申し込む前の段階でも相談できるので、計画づくりに迷ったら早めに活用するとよいでしょう。
なお、公庫の創業向けQ&Aでは、資本金の払い込みにあてる資金は融資の対象外とされています。法人を設立して創業する場合は、設立登記後の法人が融資の対象になります。
02制度の主な条件
いくらまで、何年で返せるの?
公式案内では融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金20年以内、運転資金10年以内です。使いみちは事業を始める・続けるための設備と運転資金です。
新規開業・スタートアップ支援資金の主な条件を、公式案内から整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金使途 | 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内(いずれも据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。要件に当てはまる場合は特別利率 |
| 担保・保証人 | 希望を聞きながら相談 |
| 併用できる特例制度 | 経営者保証免除特例制度、創業支援貸付利率特例制度、賃上げ貸付利率特例制度 |
※2026年10月時点の公式案内に基づきます。最新の内容は公庫の公式サイトで確認してください。
廃業歴などがあり、創業に再チャレンジする方は、前の事業の債務を返すための資金にも使え、運転資金の返済期間は15年以内(据置5年以内)まで利用できると案内されています。
据置期間とは、元金の返済を待ってもらい、利息だけを払う期間です。開業直後で売上が立ち上がるまでの資金繰りを楽にできます。ただし、据置を長くすると利息を払う期間も延びるため、総返済額は増えます。
03金利の目安と特別利率
金利はどのくらい?
公庫は金利を公表していて、税務申告の期数や担保の有無などで区分されます。条件に合えば基準利率より低い特別利率が使える場合があります。
公庫は金利を公表しています。国民生活事業の金利情報(令和8年10月1日現在)から、主なものを抜き出します。
| 区分 | 基準利率 | 特別利率A | 特別利率B |
|---|---|---|---|
| 無担保・税務申告を2期終えていない方 | 年3.85〜5.45% | 年3.45〜5.05% | 年3.20〜4.80% |
| 無担保・税務申告を2期終えている方 | 年4.05〜5.65% | 年3.65〜5.25% | 年3.40〜5.00% |
| 有担保 | 年3.05〜5.25% | 年2.65〜4.85% | 年2.40〜4.60% |
※利率は使いみち、返済期間、担保の有無などで異なります。金融情勢によって変動するため、実際の借入金利(固定)は記載の利率と異なる場合があります。
公庫の創業向けQ&Aでは、契約時の金利が最後まで適用される固定金利であることが特徴として挙げられています。借りた後に市場金利が上がっても、返済額は変わりません。
表のとおり、同じ基準利率でも1.6%ほどの幅があります。この幅の中で、どの利率が適用されるかは公表されていません。使いみちや返済期間などによって異なるとされているため、申込時に提示された利率で返済計画を作り直すことが大切です。
特別利率の主な対象
- 女性の方、35歳未満または55歳以上の方(特別利率A)
- 創業塾や創業セミナーなど、認定特定創業支援等事業を受け、市区町村の証明書を取得した方(特別利率A)
- 会計の基本要領などを適用し、自ら事業計画書を作り、認定経営革新等支援機関(税理士、中小企業診断士など)の指導・助言を受けている方(特別利率A)
- 一定の投資事業有限責任組合などから出資を受けている方(見込みを含む。特別利率B)
このほかにも、地域おこし協力隊、Uターン等による地方での創業、技術・ノウハウ等に新規性がみられる方などの要件があります。原則として土地にかかる資金は特別利率の対象外です。
特例制度による引き下げ
創業支援貸付利率特例制度は、新たに事業を始める方や、税務申告を2期終えていない方が対象です。各融資制度の利率から0.65%、雇用の拡大を図る場合は0.9%を差し引いた利率が示されています。また、経営者保証免除特例制度を使う場合は、各制度の利率に上乗せはないとされています。どれが適用されるかは審査によるため、窓口で確認しましょう。
04いくら借りられる?自己資金の考え方
限度額いっぱい借りられる?
誰でも限度額まで借りられるわけではありません。事業計画に無理がないか、自己資金をどれだけ用意できたか、経験などを合わせて審査で決まります。
限度額は7,200万円ですが、誰でもその額まで借りられるわけではありません。実際の融資額は、事業計画と審査で決まります。一般に、次の要素の組み合わせで判断されます。
- 事業計画の妥当性:売上・利益・返済の見通しに無理がないか
- 自己資金:どれだけ準備できているか、その出どころは説明できるか
- 経験:同じ業界での経験や、準備の進み具合
- 資金使途:設備・運転など、何にいくら必要か
自己資金はどのくらい必要か
公庫の創業向けQ&Aでは、自己資金は重要な要素の一つとしつつ、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要だとしています。目安として、公庫の「新規開業実態調査」では、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で2割程度と紹介されています。
これは平均値であり、必要条件ではありません。たとえば創業資金の総額が1,500万円の場合、2割は300万円です。残りの1,200万円をすべて借入でまかなえるとは限らず、計画と返済の見通ししだいで判断されます。
自己資金で気をつけたいこと
- 通帳で、少しずつ貯めてきた経緯が分かると説明しやすくなります。
- 一時的に他人から借りて残高を見せることは、自己資金とは言えません。
- 親族からの援助がある場合は、贈与か借入かをはっきりさせておきます。
借りる額を決める手順
まず、開業に必要な資金をすべて書き出します。設備、内装、仕入、広告、当面の家賃や人件費などです。次に、そこから自己資金を差し引き、足りない分を借入でまかなう額とします。最後に、その額を返済期間で返せるかを収支計画で確かめます。返せない場合は、設備を絞る、開業の規模を小さくするなど、必要資金の側を見直します。
必要な運転資金の目安は必要運転資金の計算ツールで試算できます。「希望額」ではなく「返済できる根拠のある額」を示すことが大切です。
05返済額の計算例
借りる前に何を確かめればいい?
毎月の返済額と総返済額です。例として1,000万円を7年、仮に年4.0%で借りると、据置なしで毎月約136,700円、利息の総額は約148万円です。
借りる前に、毎月の返済額と総返済額を確認しておきましょう。ここでは、1,000万円を返済期間7年で借りる場合を考えます。金利は公表されている基準利率の範囲内から仮に年4.0%とします。実際の金利は審査で決まります。
| 返済の組み方 | 毎月の返済額 | 利息の総額 |
|---|---|---|
| 据置なし・元利均等84回 | 約136,700円 | 約148万円 |
| 据置1年(利息のみ)+元利均等72回 | 据置中 約33,300円、その後 約156,500円 | 約166万円 |
※年4.0%・元利均等返済の概算です。据置中の利息は1,000万円×4.0%÷12で計算しています。実際は端数処理や返済日により異なります。
据置を1年入れると、開業直後の返済負担は月約3.3万円に抑えられます。その代わり、据置後の毎月の返済額は約2万円増え、利息の総額も約18万円増えます。据置は「お金を借りる期間を延ばす」のと同じ効果があると考えると分かりやすいでしょう。
据置を使うかどうかは、売上が立ち上がるまでの期間で判断します。開業から数か月で売上が安定する事業なら、据置は短くてもよいかもしれません。設備を入れてから売上が立つまで時間がかかる事業では、据置があると資金繰りに余裕が生まれます。
公庫の返済方法は原則として月賦払いで、元金均等返済、元利均等返済、ステップ(段階)返済などがあると案内されています。公庫のサイトには返済シミュレーションもあります。金利と期間の考え方は融資の金利・返済期間の考え方で詳しく解説しています。
06審査で見られるポイント
実績ゼロでも審査は通るの?
創業融資では過去の実績より、これからの計画と返済の見通しが中心に見られます。創業の動機や経験、何を誰にいくらで売るかなどが問われます。
創業融資の審査では、過去の実績よりも、これからの計画と返済の見通しが中心に見られます。
| 観点 | 見られること |
|---|---|
| 創業の動機と経験 | なぜこの事業をするのか。経験や資格が計画を裏づけているか |
| 商品・サービス | 何を、誰に、いくらで売るのか。強みは何か |
| 取引先 | 販売先・仕入先が具体的か。入金・支払いの条件 |
| 資金計画 | 必要な資金の内訳と、その調達方法(自己資金・借入) |
| 収支計画 | 売上・経費・利益の見通しと、その根拠 |
| 信用情報 | 個人の借入やクレジットの支払い状況 |
表の上の5つは、公庫の創業計画書の主な記入項目に対応しています。公庫は書式と、書き方を解説する動画を公開しています。
面談と事業所の確認
公庫の案内では、申込後に面談があり、資金の使いみちや事業計画などについて話を聞くとされています。面談の際は、事業計画に関連する資料や資産・負債がわかる書類を準備します。店舗や事業所の予定地を訪ねることもあります。オンラインでの面談にも対応しています。
面談では、計画書と同じ内容を自分の言葉で説明できるかが大切です。数字の根拠を聞かれたときに答えられるよう、見積書や市場調査のメモを手元に置いておきましょう。審査全般の準備は融資審査で見られるポイント、計画書の作り方は事業計画書・資金繰り表の作り方を参考にしてください。
07創業計画書を書くときのコツ
創業計画書、何を書けばいい?
創業の動機、略歴、商品、取引先、資金計画、収支計画などです。「なぜ自分がこの事業をするのか」をこれまでの経験とつなげて書くと説得力が増します。
創業計画書は、審査の中心になる書類です。公庫の書式では、創業の動機、経営者の略歴、取扱商品・サービス、取引先・取引関係、資金計画、収支計画などを書きます。それぞれ、次の点を意識すると説得力が増します。
創業の動機と略歴
「なぜ自分がこの事業をするのか」を、これまでの経験とつなげて書きます。勤務先での担当業務、扱ってきた商品、身につけた技術など、事業に関係する経験は具体的に書きましょう。経験が浅い分野で創業する場合は、どのように準備してきたかを示します。
商品・サービスと取引先
誰に、何を、いくらで売るのかを明確にします。近くの競合と比べた強みも一言で書けるとよいでしょう。販売先や仕入先が決まっている場合は、名前と取引条件(掛けか現金か、入金や支払いのタイミング)を書きます。入金が遅く支払いが早い事業は、その分の運転資金が必要になります。
資金計画
必要な資金を、設備資金と運転資金に分けて書きます。設備資金は見積書の金額と一致させます。運転資金は、仕入、人件費、家賃などの何か月分かを根拠とともに示します。調達の欄では、自己資金、親族などからの借入、公庫からの借入などの合計が、必要資金と一致するようにします。
収支計画
売上は「客単価×客数×営業日数」のように分解し、それぞれの数字の根拠を書きます。開業直後と、軌道に乗った後に分けて書くと、立ち上がりの見通しが伝わりやすくなります。利益と減価償却費の合計で、借入の返済ができるかを確かめておきましょう。
計画書は、税理士や商工会議所、自治体の創業支援窓口などで見てもらうこともできます。第三者の目を通すと、数字の矛盾や説明の不足に気づきやすくなります。
08面談で確認されること(創業計画書の欄ごとの準備)
面談では何を聞かれるの?
面談は計画書の内容にそって進むと考えて準備するのが近道です。書式の枠に書ききれない時は別紙を作ってかまいません。
公庫の創業計画書の書式には、「この書類は、ご面談にかかる時間を短縮するために利用させていただきます」と書かれています。つまり、面談は計画書の内容にそって進むと考えて準備するのが近道です。書式に代えて、自分で作った計画書を出してもよいとされています。書式の枠に書ききれないときは、別紙を作ってかまいません。
計画書の書き方のコツは前の章で紹介しました。ここでは、その章で触れていない欄を中心に、面談の前に手元で説明できるようにしておきたいことを整理します。
| 計画書の欄 | 書式で求められていること | 面談前に用意しておきたいもの |
|---|---|---|
| 過去の事業経験 | 事業を経営したことがあるか。続けているか、やめた時期はいつか | 以前の事業の内容と、やめた時期・理由を説明できるメモ |
| 取得資格・許認可・知的財産権 | 有無と、申請中か登録済みか | 資格の番号、許認可の申請状況がわかるもの |
| 関連企業 | 本人・法人代表者・配偶者が経営する企業があれば、その企業名・所在地・業種 | 関連企業との取引の有無と内容 |
| お借入の状況 | 借入先・使いみち(事業・住宅・車・教育・カードなど)・残高・年間返済額。法人は代表者の借入 | ローンやカードの返済予定表など、残高と返済額がわかるもの |
| 必要な資金と調達方法 | 設備資金の見積先、自己資金、親族・知人などからの借入の内訳と返済方法、ほかの金融機関からの借入 | 見積書、親族などからの借入の約束の内容(いつ、いくら、どう返すか) |
| 従業員 | 常勤役員の人数(法人のみ)、3か月以上続けて雇う予定の従業員数 | 採用の予定時期と人件費の見込み |
出典:日本政策金融公庫「創業計画書」(書式)、日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」(2026年10月確認)
自己資金はどう確認されるのか
公庫は、面談のときに「事業計画に関連する資料や資産・負債がわかる書類など」を準備するよう案内しています。ただし、自己資金を具体的にどの書類で、どう確認するかは、公式サイトには細かく書かれていません。支店から案内された書類をそろえ、自己資金の出どころを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
公庫の「創業の手引」では、自己資金は着実に蓄積することが重要とされています。自己資金の割合が高いほど借入の割合が低くなり、余裕のある資金繰りができるとも説明しています。参考として、調達総額に占める自己資金の割合は平均22.9%(日本公庫 2025年度新規開業実態調査)と紹介されています。これは平均であり、必要な条件ではありません。
許認可がまだない場合
公庫の「はじめての融資Q&A」では、許認可が必要な業種は、原則として許認可が必要とされています。ただし、創業前などの理由で、今後許認可を受けることが確実な場合は、利用できることがあると案内されています。どの許認可が必要かわからないときは、保健所・警察署・都道府県庁などの窓口か、公庫の支店に確認します。
面談前の見直し(公庫のセルフチェックリスト)
公庫は「創業計画書セルフチェックリスト」を公開しています。面談の前に、次の点を自分で確かめておきましょう。
- 創業への熱意や、創業を志すまでの経緯を書いているか
- 担当した業務や役職、実績、身につけた資格・スキルを書いているか
- 誰に、何を、いくらで売るか。セールスポイントと、ターゲットに合った販売戦略を書いているか
- 競合や市場(店舗なら近くの状況)を調べて書いているか
- 入金や支払いのタイミングなど、取引の形を書いているか
- 見積金額は、相場を調べたり相見積もりを取ったりして確かめたか
- 事業開始後の運転資金(半年程度の赤字を埋める資金など)を考えているか
- 自己資金が少なく、借入に頼りすぎた計画になっていないか
- 売上高や売上原価を、根拠をもって予測しているか。経費に漏れはないか
- 利益から借入を返せる収支計画になっているか
出典:日本政策金融公庫「創業予定の方(お手続きの流れ)」、日本政策金融公庫「創業の手引」(令和8年5月)、日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」、日本政策金融公庫「創業支援 Q&A」、日本政策金融公庫「創業計画書セルフチェックリスト」(2026年10月確認)
09必要書類と申込の流れ
公庫は、インターネット申込の際に準備する書類として、次のものを挙げています(電子データで準備)。
- 創業計画書
- 設備資金の申込の場合は見積書
- 法人の場合は履歴事項全部証明書または登記簿謄本
- 担保を希望する場合は不動産の登記簿謄本または登記事項証明書
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードの表面、パスポートなど)
- 許認可が必要な事業の場合は許認可証
- 生活衛生関係の事業の場合は、都道府県知事の推せん書など
電子契約サービスを使う場合は、送金先口座の通帳の写しなども必要です。郵送で申し込む場合は借入申込書も提出します。
申込から融資までの流れ
- 相談・申込:インターネット申込は24時間受付。事前の予約相談もできます。
- 面談:資金の使いみちや事業計画を説明します。
- 審査:事業所の予定地の訪問などを経て、融資の判断をします。
- 契約:融資の決定後、電子契約などで手続きをします。
- 融資:指定の口座に送金されます。
申込窓口は、通常、法人で創業する場合は本店所在地、個人で創業する場合は創業予定地の近くの支店です。申込から融資が決まるまでは、創業向けQ&Aで「平均的には、3週間程度」とされています。条件によってはさらに時間がかかるため、店舗の契約や設備の発注の時期から逆算して動きましょう。
10必要書類のチェックリスト(個人・法人/創業前・開業後)
公庫の公式サイトでは、提出する書類の案内が「創業予定の方」と「すでに事業を始めている方(小規模事業者・個人事業主の方)」に分かれています。新規開業・スタートアップ支援資金は事業開始後おおむね7年以内の方も対象なので、自分がどちらに当たるかで準備する書類が変わります。
公庫の創業向けQ&Aでは、個人と法人で申込に大きな違いは特になく、法人で申し込むときに履歴事項全部証明書または登記簿謄本が必要になるくらいとされています。どちらが有利ということもないと案内されています。
| 書類 | 創業前(これから始める) | 開業後・個人事業主 | 開業後・法人 |
|---|---|---|---|
| 創業計画書 | 必要 | 事業を始めて間もない場合は創業計画書。それ以外は企業概要書 | 個人事業主と同じ |
| 確定申告書 | 不要 | 直近2期分の一式(青色申告決算書または収支内訳書を含む)。申告が1期だけなら1期分、まだ申告していなければ不要 | 直近2期分の確定申告書・決算書の一式(勘定科目明細書を含む)。1期だけなら1期分、申告前なら不要 |
| 試算表 | ― | ― | 決算後6か月以上たっている場合、または決算をまだ終えていない場合 |
| 履歴事項全部証明書(登記簿謄本) | 法人の場合のみ | ― | 必要(最近6か月以内のもの) |
| 見積書 | 設備資金を申し込む場合のみ | ||
| 本人確認書類 | 運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)、パスポート(顔写真と現住所等のページ)のいずれか。法人は代表者のもの | ||
| 送金先口座の通帳の写し | 表紙と見開き1ページ目。通帳がないネット口座などは、口座情報がわかるマイページ画面の写しなど | ||
| 許認可証 | 飲食店など、許可・届出が必要な事業の場合。開業後の方の案内では、まだ取得しておらずこれから取得する予定の場合、申込時の準備は不要とされています | ||
| 生活衛生関係の事業の書類 | 都道府県知事の「推せん書」または生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」。創業予定の方の案内では、設備資金の申込金額が500万円以下なら推せん書は不要とされています | ||
| 電子契約サービス利用申込書 | 法人で代表者が2名以上いる場合のみ | ||
| 不動産の登記簿謄本など | 担保を希望する場合のみ | ||
| 借入申込書 | 郵送で申し込む場合のみ(インターネット申込では不要) | ||
※公庫の案内をもとに整理しました。業歴や資金の使いみちによって書類は変わり、ほかの書類を求められることもあります。申込画面にも必要書類が表示されるので、あわせて確認してください。
アップロード前の最終チェック
公庫は、提出された電子データに不備が多いとして、次の点に注意するよう呼びかけています。
- 確定申告書は直近期だけでなく、2期分そろっているか(申込のたびに2期分が必要)
- 確定申告書は表紙だけでなく、一式そろっているか
- 法人は、確定申告書と決算書の両方があり、勘定科目明細書も入っているか
- 書面で申告した確定申告書は税務署の収受印があるか(令和6年12月以前に申告したものに限る)。電子申告は受信通知が付いているか
- 個人の確定申告書にマイナンバーが書かれている場合、黒く塗って読めないようにしたか
- 確定申告書・決算書はPDFにしたか(Excel・Word・PDFが推奨)
- ファイル名で中身がわかるか(例:「令和●年確定申告書一式」)
- 本人確認書類と見積書など、種類のちがう書類を1つのZIPにまとめていないか(ZIPは決算期ごと、同じ種類の書類ごと)
なお、創業向けQ&Aでは、創業予定地が決まっていないと資金計画や売上・経費の予測が立てられないため、出店地を決めてから申し込むよう案内されています。
出典:日本政策金融公庫「創業予定の方(お手続きの流れ)」、日本政策金融公庫「小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」、日本政策金融公庫「インターネット申込(事業資金)の手続きに関するQ&A(令和8年9月28日現在)」、日本政策金融公庫「創業支援 Q&A」(2026年10月確認)
11申込から融資までの流れ(インターネット申込の手順と目安)
前の章で全体の流れを紹介しました。ここでは、公庫が案内しているインターネット申込の手順を、つまずきやすい点とあわせてくわしく見ていきます。
| 手順 | すること | 公式に案内されている目安・注意点 |
|---|---|---|
| 1. 予約相談(任意) | 申込の前に、支店やオンラインで相談する | 予約の期限は、来店が希望日の前営業日14時、オンラインが希望日の2営業日前16時 |
| 2. 書類の準備 | 必要書類を電子データにする | 確定申告書・決算書はPDFでの提出が求められています |
| 3. 日本公庫ダイレクトに登録 | 会員登録(無料)またはログイン | 1つのメールアドレスで登録できるのは1アカウントまで。法人と代表者個人は別のメールアドレスが必要。別の法人の申込に、ほかの法人のアカウントは使えません |
| 4. 申込情報の入力・書類のアップロード | 申込フォームに入力し、書類をアップロードする | 24時間365日受付。一時保存は72時間まで。再開は最新の「一時保存完了メール」のリンクから |
| 5. 申込完了 | 受付完了メールを確認する | 件名は「事業資金のお申込データを受付しました」。届かないときは申し込んだ支店へ連絡 |
| 6. 支店からの連絡 | 面談の日程などの案内を待つ | 申込の受付順に連絡。申込の状況により、連絡まで1週間程度かかる場合がある |
| 7. 面談・審査 | 資金の使いみちや事業計画を説明する | 申込から融資が決まるまで、平均的には3週間程度(創業向けQ&A) |
| 8. 契約 | 電子契約サービスで手続きする | 契約書への記入・押印や収入印紙の貼付は不要。本人だけが使うメールアドレスと、SMSを受け取れる携帯電話が必要。法人は法人と代表者それぞれの手続きが必要 |
| 9. 送金・返済開始 | 指定の口座に融資金が送金される | 返済は原則として月賦払い |
申込のときに気をつけたいこと
- 申込を完了する前に、内容確認画面の「印刷する」ボタンで申込内容を印刷または保存したか(完了後は自分で内容を確認・変更できません)
- アップロードし忘れた書類はないか(完了後に追加でアップロードする方法はなく、支店への連絡が必要です)
- 入力内容に不備はないか、書類は足りているか(不備や不足があると受付できないことがあります)
- 「@jfc.go.jp」からのメールを受け取れる設定になっているか
公庫のQ&Aでは、面談などの案内は申込の受付順のため、インターネット申込は郵送の時間がかからない分、案内が早くなるとされています。資金を急ぐ場合は、申し込んだ支店に連絡するよう案内されています。
電話での問い合わせは、事業資金相談ダイヤル(0120-154-505、平日9時〜19時)です。これから創業する方や創業して間もない方は、音声ガイダンスの後に「0」を選びます。申込を終えた後の問い合わせは、申し込んだ支店(平日9時〜17時)が窓口です。
出典:日本政策金融公庫「インターネット申込(事業資金)の手続きに関するQ&A(令和8年9月28日現在)」、日本政策金融公庫「インターネット申込のご案内」、日本政策金融公庫「日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)」、日本政策金融公庫「予約相談」、日本政策金融公庫「創業予定の方(お手続きの流れ)」、日本政策金融公庫「創業支援 Q&A」(2026年10月確認)
12担保・保証人と経営者保証
公庫の創業向けQ&Aでは、創業期の方(新たに事業を始める方や、事業開始後税務申告を2期終えていない方)は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できるとされています。
経営者保証免除特例制度
法人の場合、経営者保証免除特例制度を使うと、経営者の保証が免除されます。新たに事業を始める方や、税務申告を2期終えていない方は、法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていることを公庫が確認できることが要件の一つです。ここでいう一体性の解消とは、事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないことをいいます。
この特例を使う場合、利率の上乗せはないとされています。一部利用できない融資制度もあるため、支店で確認しましょう。経営者保証の基本は用語解説でも確認できます。
経営者保証がなくても、借りたお金を返す義務は法人に残ります。保証の有無にかかわらず、無理のない借入額にとどめることが大切です。
13注意点・向いていないケース
- 急ぎの資金には向きにくい:決定まで平均3週間程度かかります。数日で必要な場面は、ほかの手段との比較・診断も確認しましょう。
- 希望額どおりになるとは限らない:減額されることもあります。減額された場合に計画が回るかも考えておきます。
- 許認可の取得が前提の事業:飲食店の営業許可など、必要な許認可を確認しておく必要があります。
- 個人の信用情報:創業者個人のローンやクレジットの延滞は、評価に影響しやすい点です。
- 借りすぎない:据置期間が終わると返済が本格化します。売上の立ち上がりが計画より遅れても返せる額にとどめましょう。
借りた後にやっておきたいこと
融資を受けた後も、資金繰り表を毎月更新し、計画と実績のずれを確認しましょう。売上が計画を下回り返済が苦しくなりそうなときは、延滞する前に支店に相談することが大切です。返済実績を積むと、次に追加の融資を相談するときの判断材料になります。
ほかの手段との組み合わせ
創業期には、自治体・信用保証協会・金融機関が連携する制度融資も候補になります。地域の金融機関との取引が始まる利点があり、公庫と組み合わせて検討するケースもあります。返済が不要な補助金・助成金は、一般に後払いのため、支払いまでのつなぎの資金が必要になる点に注意が必要です。株式で資金を集める方法との比較は出資と融資を組み合わせる考え方で整理しています。
どの手段でも、高すぎる手数料や、貸付なのに登録のない業者には注意してください。融資をうたうヤミ金にも注意が必要です。
14審査に通らなかったときの考え方と次の手
公庫は、「審査の結果、お客さまのご希望に沿えないことがございます」と案内しています。また、希望どおりの返済期間にならない場合があるとも書いています。結果は「借りられる・借りられない」だけでなく、条件が希望と違う形で示されることもあると考えておきましょう。
審査に通らなかったあとの再申込について、公庫の公式サイトで明確な案内は確認できませんでした(2026年10月確認)。そのため、ここでは一般的な考え方を紹介します。実際の進め方は、申し込んだ支店に相談してください。
まずは見直す点を洗い出す
一般に、同じ計画のままでは結果は変わりにくいと考えられます。確認できる範囲で理由を確かめ、計画や資金の準備を見直すのが基本です。公庫の資料にある観点から、見直しの例を挙げます。
- 必要資金:見積もりは妥当か。公庫の「創業の手引」では、中古品の購入、リースやレンタルの検討など、初期投資を抑えられないかを確かめるよう挙げています。
- 運転資金:黒字になるまでの資金を見込んでいるか。同じ手引では、黒字化にかかった期間は平均6.4か月(日本公庫 2025年版新規開業白書)と紹介されています。
- 自己資金:借入に頼りすぎていないか。準備の経緯を説明できるか。
- 収支計画:売上の根拠は具体的か。利益から返済できる計画か。
- 許認可:必要な許認可の見通しは立っているか。
- 個人の借入:住宅・車・カードなどの借入と返済の状況を整理できているか。
相談できる窓口
公庫は全国152支店に「創業サポートデスク」を置き、創業計画書の立て方や融資制度の相談に応じています。来店とオンライン(Microsoft Teams)の予約相談があり、予約の期限は来店が希望日の前営業日14時、オンラインが希望日の2営業日前16時です。東京・大阪の「ビジネスサポートプラザ」では、計画のブラッシュアップなどをじっくり相談できます(ここでは融資の申込はできません)。商工会議所や自治体の創業支援窓口、税理士などに計画を見てもらう方法もあります。
ほかの資金調達の手段も比べる
公庫だけでなく、ほかの手段を並べて考えることも大切です。当サイトでは次のページで整理しています。
- 制度融資とは(自治体・信用保証協会・金融機関の役割)
- プロパー融資と保証協会付き融資の違い
- 信用金庫・信用組合の一覧/地方銀行・第二地方銀行の一覧
- 融資を断られた・借りられない時の対処法
- 融資審査で見られるポイント/事業計画書・資金繰り表の作り方
- 補助金・助成金/出資と融資を組み合わせる考え方
なお、公庫は「創業の手引」で、公庫と関係のない業者が「公庫と提携している」などと装い、ダイレクトメールや電話で融資の勧誘やあっせんを持ちかける事例があるとして注意を呼びかけています。審査に通らず焦っているときほど、こうした勧誘には気をつけましょう。
出典:日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」、日本政策金融公庫「創業予定の方(お手続きの流れ)」、日本政策金融公庫「創業の手引」(令和8年5月)、日本政策金融公庫「創業をお考えの方」、日本政策金融公庫「予約相談」(2026年10月確認)
15資金調達に使える融資・ビジネスローン(PR)
最短即日・大口・おまとめなど、事業者向けの融資サービス。条件・審査は各社公式でご確認ください。※広告(アフィリエイト)を含みます。
16よくある質問
創業前でも借りられますか?
自己資金はどのくらい必要ですか?
無担保・無保証人で借りられますか?
金利は固定ですか?
融資が決まるまでどのくらいかかりますか?
資本金にするお金を借りられますか?
事業開始から何年まで使えますか?
否決されたら再申込できますか?
出典・参考(17件)
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/01_sinkikaigyou_m.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「金利情報 小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」(令和8年10月1日現在) https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業支援貸付利率特例制度」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyo_tokurei_m.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/keitoku.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業支援 Q&A」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/faq/(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業計画の書き方」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/business-plan/(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「お申込からご融資の流れ(国民生活事業・創業)」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/tetsudukij_c.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/flow/goriyou.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「インターネット申込(事業資金)の手続きに関するQ&A(令和8年9月28日現在)」 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/internet_faq.pdf(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業計画書」(書式) https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/kaigyou00_190507b.pdf(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」 https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業の手引」(令和8年5月) https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_tebiki202605.pdf(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「国民生活事業をはじめてご利用の方へ」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/first/kokumin.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「創業計画書セルフチェックリスト」 https://www.jfc.go.jp/n/finance/sougyou/pdf/sougyou_selfchecklist_2023.pdf(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「予約相談」 https://www.jfc.go.jp/n/service/heijitsu_soudan.html(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「インターネット申込のご案内」 https://www.jfc.go.jp/n/service/pdf/internet_kariire.pdf(2026年10月確認)
- 日本政策金融公庫「日本公庫電子契約サービス(国民生活事業)」 https://www.jfc.go.jp/n/service/econtract/kn/index.html(2026年10月確認)
本記事は一般的な情報提供で、特定の金融商品の勧誘を目的とするものではありません。条件は事業者や状況により異なります。契約の内容は、専門家にご確認ください。
