比べる前に:何と何を比べるか
「リースと購入、どちらが得か」を考えるときは、まず比べる対象をはっきりさせます。購入には大きく2つの形があります。
- 一括購入:手元資金で代金をまとめて払う。
- 融資で購入:金融機関から借りて代金を払い、借入を分割で返す。
分割で買う割賦もありますが、性質は購入です。割賦とリースの違いはリースと割賦(分割購入)の違いで詳しく扱っています。
そのうえで、次の4つの物差しをそろえて比べます。
- 総額:使い終わるまでに払う合計。税金・保険・保守も含める。
- 資金繰り:いつ、いくら現金が出ていくか。
- 使用期間:何年使い、その後どうするか。
- 所有と管理:自社の資産として持つ必要があるか。管理の手間をどう考えるか。
比べるための材料として、リース会社からはリース期間と月額の見積もり、金融機関からは借入期間と金利の目安をもらいます。販売会社の見積書(物件価格・設置費・保守料を分けたもの)を共通の土台にすると、条件のずれを防げます。保守料がリースに含まれているかどうかも、必ずそろえましょう。
どれを重視するかは会社によって違います。総額が最も少ない方法が、資金繰りの面でも最善とは限りません。リースの基本はリースとは?、融資の基本は融資・デットのまとめをご覧ください。
リース・融資で購入・一括購入の比較
主な違いを表で整理します。リースは、中小企業で一般的な所有権移転外ファイナンス・リースを想定しています。
| 項目 | リース | 融資で購入 | 一括購入 |
|---|---|---|---|
| 初期の支出 | 小さい | 小さい(自己資金を求められる場合あり) | 大きい |
| 毎月の支出 | リース料(定額) | 元本と利息の返済 | なし |
| 総額の傾向 | 物件価格+金利・税金・保険・管理費など | 物件価格+利息 | 物件価格のみ |
| 所有権 | リース会社 | 自社(担保が付くこともある) | 自社 |
| 固定資産税・保険 | リース会社が手配(リース料に含む) | 自社が負担 | 自社が負担 |
| 途中でやめる | 原則不可(残リース料相当を払う) | 売却は自由。借入の返済は続く | 売却は自由 |
| 期間終了後 | 再リースか返却 | そのまま使い続けられる | そのまま使い続けられる |
| 審査 | リース会社の審査 | 金融機関の審査 | 不要 |
※一般的な傾向です。条件は契約や金融機関によって異なります。
このほか、短期間だけ使うならレンタル、価格を抑えたいなら中古品の購入という選択肢もあります。レンタルは一般に解約しやすく、修繕も貸す側の負担ですが、長く使うと割高になりやすい傾向です。
リースと融資は、どちらも「支出を分ける」方法です。違いは、リースが税金・保険・事務まで含めた「使うための費用」を払うのに対し、融資は「物の代金と利息」を払う点です。この違いを意識すると、見積もりの数字を正しく比べやすくなります。
計算例:600万円の設備を5年で比べる
説明用の仮定の数字で比べます。実際のリース料率や金利を示すものではありません。
前提(仮定):価格600万円の設備を導入し、5年間使う。
| 方法 | 条件(仮定) | 毎月の支出 | 5年間の支払合計 |
|---|---|---|---|
| リース | 60か月、月額11万円 | 11万円 | 660万円 |
| 融資で購入 | 600万円を年2.0%、60回の元利均等返済 | 約10万5,167円 | 約631万円(利息は約31万円) |
| 一括購入 | 手元資金で支払い | 0円 | 600万円 |
表の支払合計だけを見ると、一括購入<融資<リースの順です。ただし、購入する2つの方法では、次の費用を別に自社で負担します。
- 固定資産税(償却資産):地方税法の標準税率は1.4%。課税標準は年々下がっていく評価額で、市町村内の償却資産の課税標準額の合計が150万円未満なら原則課税されない(免税点)。
- 保険料:火災や故障に備えて保険をかける場合。
- 事務の手間:償却資産の申告、固定資産台帳の管理など。
リース料にはこれらが含まれています。そのため、表の差額(リースと融資で約29万円)がそのまま損得の差になるわけではありません。比べるときは、購入側にこれらの費用を足して比べるのが正確です。
使う期間を7年に延ばすと、差はさらに広がります。融資で買った場合、6年目と7年目は返済がなく、支払合計は約631万円のままです。リースの場合は、660万円に2年分の再リース料が加わります。
金利がもっと高い場合、あるいは融資が受けられない場合は、結論が変わります。たとえば同じ条件で年2.5%なら、月の返済は約10万6,484円、支払合計は約638万9,000円です。融資の金利と総返済額の考え方は融資の金利・返済期間の考え方で整理しています。
使う期間で答えが変わる
リースと購入の損得を大きく左右するのが、使う期間です。
長く使うなら購入が有利になりやすい
先ほどの例で、6年目以降も同じ設備を使うとします。融資で買った場合は5年で返済が終わり、6年目からは返済がありません。一括購入なら最初から支払いはありません。リースの場合は、使い続けるために再リースをし、再リース料を払います。再リース料はもとのリース料より低いのが一般的とされますが、払い続けることに変わりはありません。
また、購入した設備は不要になったときに売って、資金の一部を回収できる可能性があります。リースでは、返却するだけです。
短期で入れ替えるならリースが向きやすい
パソコンや複合機のように、数年で入れ替える前提の設備では、リースのほうが合理的なこともあります。購入すると、入れ替えのたびに売却や廃棄の手間がかかります。リースなら、満了時に返却すれば、リース会社が法令に沿って処分します。
ただし、リース期間は税務上、法定耐用年数の70%(10年以上は60%)を下回らないように設定する必要があります。入れ替えたい時期より長い期間しか組めない場合もあるため、事前に確認しましょう。
先が読めないときは途中解約の負担を考える
事業の先行きが不透明な場合、リースの「原則途中解約できない」点は大きなリスクです。購入なら、不要になれば売って借入の返済に充てる選択肢があります。途中解約の仕組みはリースの途中解約と違約金で解説しています。
資金繰りへの影響
資金繰りの面では、「総額」より「支出のタイミング」が重要になります。
一括購入は総額が最も少なくなりやすい一方、手元の現金が一度に減ります。600万円の例なら、導入した月に600万円が出ていきます。その後に売上の入金が遅れたり、急な支出が重なったりすると、資金がショートするおそれがあります。
リースや融資なら、支出を毎月に分けられます。600万円の例では、毎月の支出は11万円前後です。一括で払うはずだった600万円を手元に残せるため、仕入れや人件費などの運転資金に回せます。必要な運転資金の目安は必要運転資金の計算ツールで確認できます。
月ごとに見ると違いがよくわかります。仮に毎月の売上の入金が500万円、経費の支払いが470万円で、30万円の余裕がある会社だとします。一括購入では導入月に600万円が出ていき、その月だけで570万円の不足になります。リースなら毎月の余裕が30万円から19万円に減るだけで、不足は生じません。もちろん、毎月の余裕が11万円未満の会社では、リースでも資金繰りが苦しくなります。
融資ならではの調整
融資では、返済期間の長さや、元本の返済を一定期間止める据置期間を相談できることがあります。設備が売上を生むまでに時間がかかる場合、返済の開始を遅らせられると資金繰りが楽になります。ただし、期間を延ばすほど利息の総額は増えます。据置期間は用語集:据置期間で解説しています。
リースならではの性質
リースは、審査に通れば頭金なしで始められることが多く、月額も定額です。毎月の支出がはっきりしているため、資金繰り表に織り込みやすい点は利点です。一方、売上が落ちても支払いは変わりません。毎月の固定費が増えることに注意しましょう。
税務上の違い
税務の扱いは、購入とリースで次のように違います。ここでは一般的な枠組みだけを示します。
| 項目 | 購入(一括・融資) | 所有権移転外リース |
|---|---|---|
| 費用化の方法 | 法定耐用年数で減価償却(定額法・定率法など) | リース期間定額法(リース料として損金経理した金額は償却費に含まれる) |
| 費用化の期間 | 法定耐用年数 | リース期間(耐用年数の70%以上など) |
| 融資の利息 | 支払利息として費用 | ― |
| 中小企業者等の少額減価償却資産の特例(40万円未満) | 対象になりうる | 対象になりうる |
| 10万円未満の少額資産・20万円未満の一括償却 | 対象になりうる | 適用なし |
| 特別償却・圧縮記帳 | 要件を満たせば対象になりうる | 適用なし |
国税庁によると、所有権移転外リース取引のリース資産には、特別償却、圧縮記帳、少額の減価償却資産の損金算入(10万円未満など)、一括償却資産の損金算入は適用されません。設備投資の税制優遇を使いたい場合は、購入のほうが選択肢は広がります。
中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満が対象で、合計年300万円までです。適用は令和11年3月31日までに取得などをしたものです。
消費税の扱い
国税庁の質疑応答事例によると、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、消費税では資産の譲渡(売買)があったものとされ、原則としてリース資産の引渡しを受けた課税期間に仕入税額控除の対象になります。ただし、借手が賃貸借処理をしている場合は、リース料を支払うべき日の属する課税期間ごとに分けて控除する方法(分割控除)も認められています。購入の場合は、引渡しを受けた時の課税仕入れとして扱うのが基本です。
「リースは全額経費になるから得」という説明を聞くことがあります。しかし購入でも、減価償却や利息として、最終的にはほぼ同じ額が費用になります。違うのは主に費用になる時期です。税負担の有利・不利は、利益の状況や税制の適用の有無で変わるため、税理士に試算を依頼しましょう。会計・税務の詳細はリースの会計・税務上の扱いで解説しています。
決算書への影響
決算書の見え方も、判断材料の一つです。
- 一括購入:現金が減り、固定資産が増える。借入は増えない。
- 融資で購入:固定資産と借入金が増える。
- リース(中小企業で賃貸借処理する場合):資産も負債も計上しない。リース料が費用になる。金額に重要性があれば未経過リース料を注記する。
中小企業の会計に関する指針では、所有権移転外ファイナンス・リースについて、売買処理を原則としつつ、賃貸借処理も認めています。一方、上場会社などに適用される新しいリース会計基準(企業会計基準第34号)は、2027年4月1日以後に始まる事業年度から適用され、借手は原則としてすべてのリースを資産と負債に計上します。
指標への影響も確認しておきましょう。たとえば総資産1億円、純資産3,000万円の会社の自己資本比率は30%です。600万円を借りて設備を買うと、総資産は1億600万円に増え、自己資本比率は約28.3%に下がります。一括購入なら、現金が設備に置き換わるだけなので、総資産と自己資本比率は変わりません(その後の減価償却の影響は除きます)。
なお、リースを貸借対照表に載せなくても、金融機関は融資の審査で、リース料を含めた毎月の支払い負担を確認することが多いです。「リースなら借入に見えないから有利」と考えるのは避けたほうがよいでしょう。融資審査の考え方は融資審査で見られるポイントで整理しています。
事務・管理の負担
見落としがちなのが、所有に伴う事務の手間です。リース事業協会は、リースの利点として次のような点を挙げています。
- 固定資産税の事務:固定資産税などは、所有者であるリース会社が計算・申告・納付する。購入すると、償却資産の申告を自社で行う必要がある。
- 管理の簡素化:中小企業は支払リース料の管理だけで済む。
- 処分:満了後に返却すれば、廃棄物処理法などの法令に沿った処分はリース会社が行う。
購入した場合は、固定資産台帳への登録、減価償却の計算、償却資産の申告、保険の手配、廃棄時の適正な処理などを自社で行います。設備の数が多い会社ほど、この手間は大きくなります。
償却資産の申告は、地方税法で、毎年1月1日現在の償却資産について1月31日までに所在地の市町村長に申告すると定められています。設備を購入した会社は、この申告を毎年行う必要があります。免税点未満の場合の扱いなど、具体的な手続きは市町村の案内を確認しましょう。
一方、リースでも保守・修繕は利用者の負担です。リース事業協会の標準的な契約書では、保守・点検・整備は利用者が行うとされています。「リースなら維持管理を全部任せられる」わけではない点に注意しましょう。保守まで任せたい場合は、メインテナンス・リースや保守契約の内容を確認します。
ケース別の考え方
3つの典型的なケースで考え方を示します。いずれも一般論で、実際の判断は個別の条件によります。
ケース1:創業2年目の会社が複合機を入れる
手元資金を運転資金に残したく、数年後には機種を替える可能性が高い場合です。保守とセットのリースが候補になりやすいでしょう。ただし、事業の継続が見通せない段階では、途中解約できない点がリスクになります。リース期間を必要以上に長くしないことが大切です。
ケース2:製造業が10年以上使う機械を入れる
耐用年数を超えて長く使う予定で、税制優遇の対象になりうる設備です。融資や自己資金での購入が有利になりやすいケースです。設備投資向けの融資や制度融資を確認し、金利と返済期間を比べましょう。制度融資は制度融資の解説で整理しています。
ケース3:資金に余裕のある会社が車両を入れる
一括購入で総額を抑えられますが、車両は保険や点検、税金の手続きが多い資産です。事務を減らしたいなら、整備まで含むメインテナンス・リースを比べる価値があります。総額の差と、事務の手間を金額に置き換えて比べましょう。
判断のチェックリストと向いているケース
判断のチェックリスト
- その設備を何年使う予定か。耐用年数より長く使うか
- 一括で払っても、手元資金は十分に残るか
- 融資を受けられるか。その金利はどの程度か
- 税制優遇(特別償却・少額資産の特例など)を使いたいか
- 償却資産の申告や保険、廃棄の事務を自社でできるか
- 途中で不要になる可能性はどの程度あるか
リースが向きやすいケース
- 数年で入れ替える前提の設備
- 手元資金を運転資金に残したい
- 所有に伴う事務を減らしたい
購入(融資・一括)が向きやすいケース
- 耐用年数を超えて長く使い続けたい
- 手元資金に余裕がある、または低い金利で融資を受けられる
- 税制優遇を活用したい
- 事業の先行きが不透明で、途中で売る可能性を残したい
チェックリストで答えが割れる場合は、「資金繰りが回るか」を最優先にするのが安全です。総額で多少有利でも、手元資金が足りなくなれば事業そのものが止まりかねません。そのうえで、総額と税務の差を比べて最終的に判断しましょう。
リースが割高に感じる理由はリース料は結局高い?、実質的な負担の考え方はリースの実質金利で整理しています。条件を入れて比べたい場合は資金調達 診断、個別に相談したい場合は無料相談をご利用ください。
よくある質問
結局、リースと購入はどちらが安いですか?
資金繰りを重視するならどちらですか?
リースは全額経費になるので税金面で得ですか?
長く使う設備はどちらが向いていますか?
リースにすると融資の審査で有利になりますか?
上場していない会社にも新しいリース会計基準は関係ありますか?
融資が受けられない場合はどうすればよいですか?
- 国税庁 質疑応答事例(消費税)「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が分割控除している場合の残存リース料の取扱い」 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/24.htm(2026年10月確認)
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約の特徴」 https://www.leasing.or.jp/information/finance.html(2026年10月確認)
- 公益社団法人リース事業協会「リースのメリット」 https://www.leasing.or.jp/information/merit.html(2026年10月確認)
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約書の主な条項」 https://www.leasing.or.jp/information/joukou.html(2026年10月確認)
- 公益社団法人リース事業協会「中小企業のリース会計税制」 https://www.leasing.or.jp/information/chusyo.html(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5702「リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5704「所有権移転外リース取引」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5704.htm(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm(2026年10月確認)
- 国税庁 タックスアンサーNo.5403「少額の減価償却資産になるかどうかの判定」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm(2026年10月確認)
- e-Gov法令検索「地方税法」(第350条・第351条・第383条) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226(2026年10月確認)
- 企業会計基準委員会「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の公表」(2024年9月13日) https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards/y2024/2024-0913.html(2026年10月確認)
- 企業会計基準委員会「『リースに関する会計基準』等の公表にあたって(概要)」 https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/lease_20240913_01.pdf(2026年10月確認)
- 日本公認会計士協会ほか「修正『中小企業の会計に関する指針』の公表について」(2025年9月) https://jicpa.or.jp/specialized_field/20250929fjq.html(2026年10月確認)
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