株式・エクイティ

資金調達ラウンドの流れ

最終更新 2026.06.17 ・ 編集:資金繰り総研 編集部 ・ 約10分で読めます

スタートアップは、成長の段階に合わせて何回かに分けて株式で資金を集めます。1回ごとのまとまりをラウンドと呼びます。本記事では、各ラウンドの目的、必要額とタイミングの決め方、準備から入金・登記までの進め方、契約や手続きで注意したい点を整理します。

この記事の結論
  • ラウンドは、次の目標までの資金を段階ごとに集める単位
  • 必要額は「目標までの月数×月の支出+予備」で逆算する
  • 準備から入金まで時間がかかる。資金に余裕があるうちに動く
  • 株主総会の特別決議や登記など会社法の手続きも必要

資金調達ラウンドとは

資金調達ラウンドは、株式などで出資を受ける1回ごとのまとまりです。1回のラウンドに、複数の投資家が同じ条件で参加することが一般的です。

一度に大きく集めず、段階を分けるのには理由があります。

  • 必要な資金が段階で変わる:試作品を作る時期と、営業や採用を広げる時期では、必要な金額が大きく違います。
  • 評価額が変わる:事業が進むほど、会社の評価額は上がることが期待されます。実績が少ないうちに多く集めると、多くの持分を渡すことになります。
  • リスクを分ける:投資家にとっても、目標の達成を確かめながら段階的に出資するほうが判断しやすくなります。

つまりラウンドは、「次の目標を達成するまでに必要な資金を、そのときの評価額で集める」単位です。評価額と希薄化の関係はバリュエーションと希薄化の基礎、何回かのラウンドを通した持分の推移は資本政策の基礎で詳しく解説しています。

各ラウンドの目的と特徴

ラウンドの呼び方に法律上の定義はありません。一般的な使われ方を整理します。金額や時期は業種や市場環境で大きく異なります。

段階主な目的示したいこと使われやすい手段
プレシード・シード製品の試作、最初の顧客づくり解く価値のある課題と、解決策の手応え新株予約権型、普通株式など
シリーズA事業として成り立つ形をつくり、伸ばし始める売上や利用者が継続して伸びる仕組み優先株式など
シリーズB以降組織の拡大、新しい市場への展開規模を広げても成長が続くこと優先株式など。融資を組み合わせることも

出し手の種類と特徴はVC・エンジェル・CVCの違いと使い分けで整理しています。シード期によく使われる新株予約権型の手段はJ-KISS・新株予約権とはをご覧ください。

そのほかの呼び方

  • エクステンション:直前のラウンドとほぼ同じ条件で、追加の出資を受けること。
  • ブリッジ:次のラウンドまでの資金をつなぐための、比較的小さな調達。既存の投資家が出すことが多いです。
  • ダウンラウンド:前回より低い株価での調達。既存株主の希薄化が大きくなります。

段階ごとに増える「考えること」

経済産業省の「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」は、ファイナンスの課題が生じ始める段階の目安を次のように整理しています。

段階の目安ガイダンスが挙げる検討のポイント
立ち上げ〜シードエクイティストーリーの構築、バリュエーション、VCや経営者の持分比率の考慮、投資契約の締結、ストックオプションの設計
ミドルCFOチームの形成、ガバナンスの強化、デット・メザニンの活用
レイター望ましい投資家の確保(レイター期・上場時)

初期のラウンドで決めた評価額、持分、契約の条件は、後のラウンドにも引き継がれます。最初のラウンドから、先の段階を見据えておくことが大切です。

段階は決まった順番というより目安です。シリーズAを経ずに大きく調達する会社も、同じ段階で何度か調達する会社もあります。

いくら集めるか:ランウェイから逆算する

調達額は「欲しい額」ではなく、「次の目標を達成するまでに必要な額」で考えます。そのときに使うのがランウェイ(手元資金で何か月事業を続けられるか)です。

今のランウェイを計算する

ランウェイ=手元資金÷毎月の資金の減少額(バーンレート)で求めます。たとえば手元資金が6,000万円、毎月の支出から収入を引いた資金の減少が500万円なら、6,000万円÷500万円=12か月です。

必要額を逆算する(仮の数字)

項目数字考え方
次の目標までの期間18か月次のラウンドで示したい実績が出るまで
採用後の月の資金減少700万円人員計画と広告計画から試算
必要な資金1億2,600万円18か月×700万円
予備(20%)2,520万円遅れや想定外の支出への備え
調達の目安1億5,120万円1億2,600万円+2,520万円

月の資金減少は、売上が伸びれば小さくなり、採用を進めれば大きくなります。人員計画と売上計画を月ごとに並べて、どの月にいくら減るかを積み上げると、より実態に近い数字になります。手元に残る資金があれば、その分を差し引いて考えることもできます。逆に、売上が計画どおりに伸びない場合も試算しておくと安心です。

少なすぎると、すぐに次の調達に追われます。多すぎると、必要以上に持分を手放します。調達額と評価額を決めると、渡す割合も決まります。たとえばプレマネー6億円で1億5,000万円を集めると、投資家の持分は1億5,000万円÷7億5,000万円=20%です。月々の資金の動きを把握するには、用語集の資金繰り表やキャッシュフローもあわせてご覧ください。

いつ動き出すか

株式での調達は、準備から入金まで時間がかかることが多いです。投資家との面談、条件の交渉、デューデリジェンス(会社の調査)、契約、株主総会、払込みと、多くの段階があるからです。

手元資金が尽きかけてから動くと、不利な条件をのみやすくなります。「何か月前に始めるか」を、ランウェイから逆算しておきましょう。

逆算の例(仮の数字)

  • 今のランウェイ:12か月
  • 準備から入金までにかかると見込む期間:6か月
  • 予定どおり進まない場合の余裕:3か月
  • 動き出す時期:12か月−6か月−3か月=今から3か月後まで

実際にかかる期間は、会社の状況、市場環境、投資家の数によって大きく違います。余裕は多めに見ておくのが安全です。

市場環境にも左右される

投資家の資金が集まりやすい時期と、投資に慎重になる時期があります。慎重な時期には、面談から判断までに時間がかかったり、評価額の目線が下がったりすることがあります。経済産業省のガイダンスには、前のラウンドで株価を上げすぎ、次のラウンドで投資家を見つけるのが大変だったという上場企業のCFOの声も紹介されています。環境が厳しくなっても対応できるよう、ランウェイには余裕を持たせ、評価額にも背伸びをしすぎないことが大切です。

調達中も事業を止めない

調達の活動は、経営者の時間を大きく使います。その間に事業の数字が落ちると、交渉にも響きます。担当を決めて事業の運営を任せる、面談の時期をまとめるなど、事業と調達を並行させる工夫が必要です。

株式での調達が間に合わない場合に備えて、融資などほかの手段も早めに検討しておきましょう。考え方は出資と融資の違いと組み合わせ方で整理しています。

ラウンドの進め方(準備から登記まで)

  1. 計画を固める:調達額、資金の使い道、達成したい目標、渡してよい持分の上限を決めます。資本政策表を更新します。
  2. 資料を作る:事業計画、ピッチ資料、財務の資料をそろえます。作り方は投資家へのピッチ・事業計画の考え方を参照してください。
  3. 投資家を選ぶ:投資する段階、金額の目安、得意分野が合う投資家に絞ります。探し方はVC・エンジェル・CVCの違いでも紹介しています。
  4. 面談する:初回の面談から、複数回の面談、投資家の社内での検討へと進みます。
  5. 主な条件に合意する:評価額、調達額、株式の種類、主な権利などをまとめた条件書(タームシート)で合意することが多いです。
  6. デューデリジェンスを受ける:投資家が、会社の法務・財務・事業の状況を調べます。
  7. 契約を結ぶ:投資契約や株主間契約を結びます。
  8. 会社法の手続き:株主総会で募集事項を決議し、払込みを受け、変更の登記をします。

ラウンドの中で最初に条件をまとめる中心の投資家(リード投資家)が決まると、ほかの投資家も参加を判断しやすくなるといわれます。複数の投資家が入る場合は、条件を一本にまとめる段取りも必要です。

面談で聞かれやすいこと

  • 今回いくら集め、何に使い、何を達成するのか
  • 今のランウェイと、調達後のランウェイ
  • 既存の株主構成と、新株予約権やストックオプションの状況
  • ほかに話している投資家や、リード投資家の有無
  • 前回のラウンドから、計画に対して何が進み、何が遅れているか

答えを事前に1枚にまとめておくと、どの投資家にも同じ説明ができ、話がぶれにくくなります。数字は資本政策表や資金繰り表と一致させておきましょう。

デューデリジェンスで求められやすい資料

デューデリジェンスでは、会社の状態を確認するための資料を求められます。内容は投資家や段階によって違いますが、一般に次のようなものです。早めにそろえておくと、ラウンドが進めやすくなります。

分野資料の例
会社の基本登記事項証明書、定款、株主名簿、資本政策表、過去の株主総会・取締役会の議事録
株式・権利新株予約権やストックオプションの発行状況、過去の投資契約・株主間契約
財務決算書、月次の試算表、資金繰り表、借入の契約と残高
事業事業計画、主要な指標の推移、主要な顧客や取引先との契約
法務・人事重要な契約書、知的財産の状況、雇用契約や就業規則、紛争の有無

資料の中で数字が食い違っていたり、議事録や契約が見当たらなかったりすると、確認に時間がかかります。とくに、過去の株式の発行や譲渡の記録が不十分だと、株主構成そのものの確認が必要になります。日ごろから記録を残しておくことが、一番の準備です。資金繰り表の作り方は事業計画書・資金繰り表の作り方でも解説しています。

投資家に秘密情報を見せる前には、秘密保持契約を結ぶかどうかも確認しましょう。公正取引委員会と経済産業省の指針は、出資者がNDAを結ばないまま営業秘密の開示を求める問題事例を挙げ、秘密情報を整理しておくことや、使用目的・対象・範囲を明確にしたNDAを結ぶことを解決の方向性として示しています。

会社法の手続き

株式を発行して出資を受けることは、会社法の「募集株式の発行」にあたります。スタートアップの多くは、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社(公開会社でない会社)です。その場合の主な流れは次のとおりです。

  • 募集事項の決定:募集株式の数、払込金額、払込みの期日などの募集事項を定めます(会社法第199条第1項)。公開会社でない会社では、原則として株主総会の決議によります(同条第2項)。
  • 特別決議:この株主総会の決議は特別決議で、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(同法第309条第2項第5号)。
  • 取締役会への委任:株主総会の決議で、株式数の上限と払込金額の下限を定めて、募集事項の決定を取締役会などに委任することもできます(同法第200条第1項)。この決議は、払込みの期日が決議の日から1年以内の募集にだけ効力があります(同条第3項)。
  • 有利発行:払込金額が引き受ける人に特に有利な金額である場合、取締役は株主総会で理由を説明する必要があります(同法第199条第3項)。
  • 変更の登記:登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地で変更の登記をします(同法第915条第1項)。払込みの期間を定めた場合は、その期間の末日から2週間以内で足ります(同条第2項)。

種類株式を新しく発行する場合は、定款の変更も必要になります。手続きの順番と日程は、司法書士や弁護士と早めに確認しましょう。複数の投資家から払込みを受ける場合は、払込みの期日をそろえるか期間で定めるかによって、登記の時期も変わります。

条件と契約で注意したいこと

ラウンドの条件は、評価額だけではありません。株式の種類、優先的な分配、重要事項の事前承諾、取締役の指名、情報の開示など、多くの項目が投資契約や株主間契約で決まります。主な条項の意味はVC・エンジェル・CVCの違いと使い分けで紹介しています。

株式の買取請求権

契約違反などがあった場合に、投資家が会社や経営者に株式の買い取りを求められる条項が入ることがあります。公正取引委員会と経済産業省の「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」は、次のような考え方を示しています。

  • 行使条件については、重大な表明保証違反や重大な契約違反に明確に限定することが解決の方向性として挙げられています。
  • 出資額よりも著しく高額な価額での買取請求が可能な条件を、優越的な地位にある出資者が一方的に設定する場合などは、優越的地位の濫用として問題となるおそれがあるとしています。
  • 買取請求の対象から経営株主等の個人を除いていくことが、競争政策上望ましいとしています。

今回の条件は次回にも残る

今回の投資家に認めた権利は、次のラウンドの投資家も同等以上を求めることが多いといわれます。ラウンドを重ねるほど、権利の重なりが経営の自由度に影響します。今回だけでなく、次のラウンドの交渉の出発点になることを意識して条件を決めましょう。署名の前に、スタートアップの資金調達に詳しい弁護士に確認してもらうことをおすすめします。

ラウンドが終わった後にやること

入金と登記が終われば、ラウンドは一区切りです。ただし、そこから次のラウンドの準備が始まります。終わった直後にやっておきたいことを挙げます。

  1. 記録の整理:株主名簿の書き換え、資本政策表の更新、契約書・議事録・払込みの記録の保管をします。次のデューデリジェンスでそのまま使える形にしておきます。
  2. 税制の手続き:個人投資家がエンジェル税制を使う場合、会社が都道府県等へ確認申請を行い、交付された確認書を投資家に渡す必要があります。手続きの詳細は経済産業省の制度ページで確認してください。
  3. 投資家への報告の仕組みづくり:契約で決めた報告の頻度と内容に沿って、月次の数字や重要な出来事を報告する流れを作ります。報告の手間を見込んで、管理部門の体制を考えます。
  4. 資金の使い方の管理:計画した使い道と実際の支出を毎月比べ、ランウェイを更新します。
  5. 次の目標の確認:次のラウンドで示したい実績を、数字で決めておきます。

投資家は、ラウンドの後も長く付き合う株主です。良い知らせだけでなく、計画からずれたときも早めに共有すると、信頼関係を保ちやすくなります。困ったときに相談できる関係は、次のラウンドで既存の投資家が追加で出資するかどうかにも影響します。

よくある失敗と向いていないケース

よくある失敗

  • 動き出しが遅い:ランウェイが数か月しかない状態で始め、条件を選べなくなる。
  • 調達額の根拠が弱い:「多めに」と考えて必要以上の持分を渡す。または少なすぎて、すぐに次の調達に追われる。
  • 記録が整っていない:過去の株式の発行や議事録が見当たらず、デューデリジェンスで時間がかかる。
  • 条件を評価額だけで比べる:評価額は高いが、優先分配や事前承諾の範囲が広い条件を選んでしまう。
  • 一つの投資家に頼りきる:その投資家が見送ると、ラウンド全体が止まってしまう。

ラウンド型の調達が向いていないケース

株式のラウンドは、上場や会社の売却で投資家が株式を売れることを前提にした仕組みです。大きな成長より安定した経営を目指す会社、持分を外部に渡したくない会社、返済の見通しが立つ使い道で資金が必要な会社では、融資、補助金・助成金、多くの個人から少額を集める株式投資型クラウドファンディングなどのほうが合うこともあります。

自社に合う手段は比較・診断でも確認できます。株式の調達全体の位置づけは株式・エクイティのまとめをご覧ください。迷う場合は無料相談もご利用ください。

よくある質問

シード、シリーズAなどの呼び方に決まりはありますか?
法律上の定義はありません。事業の段階や調達の目的を表す一般的な呼び方で、金額や時期の目安は業種や市場環境で大きく異なります。
1回のラウンドでいくら集めればよいですか?
次の目標を達成するまでの期間と毎月の資金の減少額から逆算し、予備を加えて考えるのが基本です。評価額との関係で渡す持分も決まります。
調達はいつ始めればよいですか?
準備から入金まで時間がかかることが多いため、手元資金に余裕があるうちに始めます。ランウェイから、かかる期間と余裕を引いて動き出す時期を決めましょう。
株式を発行するにはどんな手続きが必要ですか?
公開会社でない会社では、原則として株主総会の特別決議で募集事項を決め、払込みを受け、変更の登記をします。登記は原則2週間以内です。
タームシートとは何ですか?
評価額、調達額、株式の種類、主な権利など、ラウンドの主な条件をまとめた条件書です。これをもとにデューデリジェンスや契約に進むことが多いです。
株式の買取請求権の条項は受け入れるべきですか?
内容によります。公正取引委員会と経済産業省の指針は、行使条件を重大な違反に限定することや、対象から経営株主等の個人を除いていくことを示しています。専門家に確認しましょう。
ラウンドを飛ばすことはできますか?
段階は目安なので、事業の進み方によって順番どおりにならないこともあります。大切なのは、次の目標までに必要な資金を適切な条件で集めることです。
出典・参考
  • e-Gov法令検索「会社法」第199条・第200条・第309条・第915条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086(2026年10月確認)
  • 公正取引委員会「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(概要) https://www.jftc.go.jp/dk/startup/220331_su_guideline.pdf(2026年10月確認)
  • 経済産業省「スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス」(2022年4月) https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/houkokusyo/financeguidance.pdf(2026年10月確認)
  • 経済産業省「エンジェル税制」 https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angeltax/index.html(2026年10月確認)

本記事は一般的な情報提供で、特定の投資・出資を勧誘するものではありません。投資の方針・条件は投資家や状況により異なります。投資契約の内容は、弁護士など専門家にご確認ください。

無料相談

どの方法が合うか、
迷ったら相談する。

状況を伺い、融資・ファクタリング・リース・補助金などから、合う方法を中立の立場でご案内します。