9 分で読める資金繰り総研 編集部
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SUMMARY
債権譲渡は、ファクタリング・売掛債権を使った資金調達・債権回収など、資金繰りの実務で頻繁に登場する仕組みです。一方で「対抗要件」「債権譲渡登記」「譲渡制限特約」など、わかりにくい法律用語も多く出てきます。本記事では、債権譲渡とは何かという基礎から、メリット・デメリット、民法のルール(466条・467条)、2020年の改正点、将来債権の譲渡、債権譲渡担保との違い、通知の実務までを、条文にもとづいてわかりやすく解説します。
債権譲渡ってどういうこと?
持っている売掛金などの権利を、内容を変えずに別の人へ移すことです。民法466条で、債権は譲り渡せると定められています。
債権譲渡とは、ある人(譲渡人)が持っている債権を、その内容を変えずに別の人(譲受人)へ移転することをいいます。たとえば、A社がB社に対して持つ売掛金(代金を請求できる権利)を、C社に譲り渡すケースです。
債権は、譲り渡すことができる。
このように、民法は債権を自由に譲渡できること(譲渡性の原則)を定めています。お金を請求できる権利は財産であり、売買や担保の対象として活用できる、という考え方です。債権譲渡によって、企業は支払期日前の売掛金を現金化したり、債権を担保に融資を受けたりできます。
ポイントは、債権の「内容(金額・期日など)」は変わらず、債権者だけが入れ替わるという点です。債務者は、譲渡によって不利な立場に置かれないよう民法で保護されています(後述)。
どんな場面で使われるの?
売掛金を期日前に現金にするファクタリング、借入の担保にする場合、回収会社への譲渡、事業譲渡やM&Aなどです。
▶ 関連記事:債権譲渡登記費用の相場と抑え方|手数料以外のコストPROTOCOL Re Finance
譲渡するメリットと注意点は?
期日前に現金にでき、ファクタリングなら負債も増えません。ただ手数料がかかり、取引先に知られる場合や二重譲渡のトラブルもあります。
譲ったことを相手に主張するには?
取引先には譲渡人からの通知か取引先の承諾が必要です。ほかの第三者には、内容証明など確定日付のある書面で行う必要があります。
債権譲渡そのものは当事者間の合意で成立しますが、それを当事者以外(債務者や第三者)に主張するには「対抗要件」を備える必要があります。民法467条は、これを2段階で定めています。
譲受人が債務者に「自分が新しい債権者だ」と主張するには、譲渡人から債務者への通知、または債務者の承諾が必要です。これがないと、債務者は元の譲渡人に支払ってしまっても保護されます(譲受人は二重払いを請求できない)。
さらに、債務者以外の第三者にも対抗するには、その通知・承諾を確定日付のある証書(内容証明郵便など)で行う必要があります。これにより、同じ債権が二重に譲渡された場合などの優劣が決まります。
同一の債権が複数の人に譲渡された場合(二重譲渡)、確定日付のある通知が債務者に到達した順序(または承諾の先後)で優劣が決まるのが原則です。つまり、契約の早さではなく「確定日付+到達」で勝敗が決まる点に注意が必要です。
債務者対抗要件としての通知は、通常内容証明郵便(配達証明付き)で行います。これにより「誰が・いつ・どんな内容を通知したか」と「到達日(確定日付)」を客観的に証明でき、第三者対抗要件も同時に満たせるためです。通知は原則として譲渡人(元の債権者)が行う必要がある点も実務上の重要なポイントです。
債権譲渡登記って何?
法人が売掛金を譲る時に登記すると、第三者に主張できる条件を備えられます。取引先に知らせずに備えたい場合などに使われます。
法人が金銭債権を譲渡する場合、「動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律」(動産・債権譲渡特例法)にもとづき、債権譲渡登記を行うことで第三者対抗要件を備えられます。多数の債権をまとめて譲渡するケースや、債務者に知らせずに対抗要件を備えたいケースで用いられます。
ファクタリングで登記を求められた場合は、費用と、誰がどこまで見られるかを先に聞いておくと判断しやすくなります。債権譲渡登記の費用(登録免許税・証明書)と、3種類の証明書で見える範囲をまとめた解説があります。
| 観点 | 通知方式(民法467条) 個人・法人 | 債権譲渡登記(特例法) 法人のみ |
|---|---|---|
| 対象 | すべての譲渡人 | 法人の金銭債権譲渡 |
| 方法 | 確定日付ある証書で債務者へ通知/承諾 | 登記所の債権譲渡登記ファイルに登記 |
| 債務者への通知 | 必須 | 登記後に登記事項証明書を交付して通知(または承諾) |
| 多数債権の一括 | 手間が大きい | まとめて備えやすい |
| 向くケース | 単発・少数の譲渡 | 多数債権・債務者非通知で備えたい |
ファクタリングで法人が債権譲渡登記を求められることがあるのは、この第三者対抗要件を備えるためです。登記には費用がかかるため、契約前に必要性と費用を確認しましょう。なお、債務者に支払いを請求する段階では、登記事項証明書を交付して通知するか、債務者の承諾を得る必要があります。
譲渡禁止の特約があったら譲れない?
2020年4月施行の改正民法で、特約があっても譲渡そのものは有効とされました。これで売掛金を使った資金調達がしやすくなりました。
契約に「債権を譲渡してはならない」とする譲渡制限特約が付いていることがあります。この扱いは、2020年4月1日に施行された改正民法で大きく変わりました。
改正前は、譲渡制限特約に反する譲渡は原則として無効と扱われ得ました。改正後は、譲渡制限特約があっても、債権譲渡そのものは有効とされています(民法466条2項)。これにより、売掛債権を使った資金調達がしやすくなりました。
| 観点 | 2020年改正前 | 2020年改正後 |
|---|---|---|
| 特約違反の譲渡 | 原則として効力が認められにくい | 譲渡自体は有効(466条2項) |
| 資金調達への影響 | 特約があると譲渡が難しい | 特約があっても売掛債権を資金化しやすい |
| 債務者の保護 | ― | 悪意・重過失の譲受人へは履行拒絶等が可能(466条3項) |
譲渡が有効になっても、債務者の利益は守られます。民法466条3項により、債務者は、譲渡制限を知っていた(または重大な過失で知らなかった)譲受人に対しては、支払いを拒み、もとの譲渡人への弁済などを対抗できます。したがって、譲渡制限特約の有無は引き続き実務上のチェックポイントです。
まだ発生していない売掛金も譲れる?
譲れます。改正民法で明文化され、例えば今後1年間の継続取引の売掛金をまとめて譲渡する形があります。
まだ発生していない「将来の債権」も譲渡できます。改正民法466条の6は、将来債権の譲渡性を明文で認めました。たとえば「今後1年間に発生する継続的取引の売掛金」をまとめて譲渡する、といった形です。継続的な取引から生じる売掛債権を活用した資金調達(流動化)で用いられます。将来債権の譲渡については、将来債権ファクタリングとはもあわせて参考にしてください。
ファクタリングと担保は何が違う?
ファクタリングは売掛金を売って現金にし、原則戻りません。担保型は売掛金を担保に融資を受け、返済すれば戻ります。
いずれも債権譲渡を使いますが、目的と仕組みが異なります。
借入ではなく債権の売買という点が特徴です。
ただし債務者は、特約を知っていた(重過失で知らなかった)譲受人への支払いを拒める場合があります(同条3項)。
債務者への通知・承諾でも対抗要件を備えられます。法人が多数の債権をまとめて譲渡したい場合や、債務者に通知せずに第三者対抗要件を備えたい場合に登記が使われます。
改正民法466条の6で将来債権の譲渡が明文で認められており、継続的取引から生じる売掛金をまとめて譲渡する資金調達などに使われます。
契約の早さではない点に注意してください。
関連記事:ファクタリングとは/ノンリコース・償還請求権の違い/将来債権ファクタリングとは/債権回収とは/資金繰りとは
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