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未払金の時効完全ガイド|消滅時効5年・更新・援用・実務上の注意点【2026年版】

改正民法(2020年4月施行)の消滅時効、5年/10年の使い分け、時効の「更新」と「完成猶予」、時効援用の手続き、内容証明での更新事由、商事消滅時効廃止の影響を編集部が解説します。

記事の要約
改正民法(2020年4月施行)の消滅時効、5年/10年の使い分け、時効の「更新」と「完成猶予」、時効援用の手続き、内容証明での更新事由、商事消滅時効廃止の影響を編集部が解説します。
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📌 この記事のサマリー
未払金(売掛債権)には「消滅時効」があり、改正民法(2020年4月1日施行)により原則「権利を行使できることを知ったときから5年」に統一されました。本記事では、5年・10年の使い分け、改正後の「更新」「完成猶予」(旧:中断・停止)、時効援用の手続き、内容証明での更新事由、商事消滅時効廃止の影響、経過措置を、資金繰り総研 編集部が実務観点で整理しました。個別事案では必ず弁護士確認を推奨します(2026年6月時点)。

本記事は、ハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?回収方法について解説」の派生として、時効に関する法務論点に絞り込んで深掘りする位置づけです。回収手段の全体像と督促文面はハブ記事および「督促メール・電話テンプレ集」を参照してください。


目次
  1. ⏳ 消滅時効の基本|時効が成立するとどうなるか
  2. 🔢 5年と10年の使い分け|主観・客観の起算点
  3. 🔄 時効の「更新」と「完成猶予」|改正民法の新用語
  4. ✍️ 債務承認による時効更新|実務で活用するテクニック
  5. 📜 時効援用|手続きと効果
  6. 📮 内容証明と時効|「催告」の効果と限界
  7. 🗂 商事消滅時効廃止の影響|旧法と新法の経過措置
  8. ⚖️ 訴訟・支払督促による時効更新|手続き別の効果
  9. 📊 時効管理の実務|売掛金エイジングと時効リミット
  10. 🛡 債務者側の視点|時効をめぐる注意点と対応
  11. 🧭 関連する時効論点|不法行為・賃金・公租公課
  12. ❓ FAQ|未払金の時効に関する頻出8問

⏳ 消滅時効の基本|時効が成立するとどうなるか

消滅時効とは、権利を一定期間行使しないことにより、その権利が消滅する制度です。未払金(売掛債権)にも消滅時効があり、債権者が長期間放置すると、後から「もう時効です」と支払いを拒否される可能性があります。

時効は「自動的に成立する」ものではなく、債務者が「時効を援用する」と意思表示した時点で初めて効果が確定します。この援用のタイミングまで、債権は法的に有効である点が重要です。

A-1. 時効制度の趣旨

  • 法律関係の安定:長期間続いた事実状態を尊重し、紛争の蒸し返しを防ぐ
  • 立証困難の救済:時間経過で証拠が散逸することへの配慮
  • 権利の上に眠る者の不保護:権利行使を促す

A-2. 改正民法(2020年4月1日施行)の概要

2020年4月1日施行の改正民法により、債権の消滅時効は次のように整理されました(民法166条1項)。

  • 主観的起算点:債権者が権利を行使できることを知ったときから5年(1号)
  • 客観的起算点:権利を行使できるときから10年(2号)
  • 両方の期間のうち、いずれか早い方で時効が完成

A-3. 改正前との違い

項目改正前(2020年3月以前)改正後(2020年4月以降)
債権の原則時効10年(民事)/5年(商事)知ってから5年/できてから10年
商事消滅時効商法522条で5年廃止(民法に統一)
職業別短期時効1〜3年の特例多数原則廃止(民法に統一)
用語中断・停止更新・完成猶予
※2026年6月時点の整理です。施行日前後の経過措置にも注意してください。

A-4. 時効が成立するとどうなるか

時効期間が経過し、債務者が「時効を援用する」と意思表示すると、その債権は法的に消滅します。債権者は、裁判で請求しても認められなくなります。会計上は「貸倒れ」または「債務免除」として処理することになります。

A-5. 時効後の任意弁済

時効が成立した後でも、債務者が「自分の意思で支払う」ことは可能です。これは時効援用権の放棄とみなされ、有効な弁済として扱われます。ただし、債権者が「時効が完成していることを知らせず」に取り立てると、不当な行為として問題となる可能性があるため、注意が必要です。

基本を押さえたところで、5年・10年の使い分けを深掘りします。


🔢 5年と10年の使い分け|主観・客観の起算点

改正民法166条1項では、5年と10年の両方の期間が並走し、いずれか早く完成した時点で時効が成立します。実務では「主観的起算点」(5年)が早く来るケースが大半ですが、両方を意識する必要があります。

B-1. 主観的起算点(5年)の判断

「権利を行使できることを知ったとき」とは、債権者が次の2点を知った時点を意味します。

  • ① 権利の発生原因(契約・取引)を知っていること
  • ② 権利を行使できる状態(支払期日の到来等)を知っていること

事業者間の取引における売掛金・請負代金は、ほぼ「契約締結時から知っている」「支払期日も契約で定めている」状態のため、支払期日の翌日から5年が原則です。

B-2. 客観的起算点(10年)の判断

「権利を行使できるとき」は、債権者の認識を問わず、客観的に権利行使が可能となった時点を指します。具体的には支払期日の到来日です。

B-3. 起算点の典型例

取引類型主観的起算点客観的起算点
支払期日の合意あり支払期日翌日(=客観と同じ)支払期日翌日
支払期日なし・継続取引請求書送付日(または受領日)請求書送付日
分割払い各回の支払期日翌日各回の支払期日翌日
不法行為損害賠償損害発生・加害者を知ったとき不法行為時

B-4. 分割払い債権の起算点

分割払い債権は、各回の支払期日ごとに独立して時効が進行します。たとえば月次分割払いの債権は、月ごとに「5年カウント」が始まる構造です。期限の利益喪失特約が定められている場合は、特約の発動条件と起算点が連動します。

B-5. 期限の定めのない債権

請求書を送らない限り支払期日が確定しない継続取引等では、請求書送付日または履行期到来日が起算点になります。期限の定めのない債権は、債権者が請求した時から債務者が遅滞責任を負うため、請求が起算点の判断に大きく影響します。

起算点を整理したところで、時効の「更新」と「完成猶予」に進みます。


🔄 時効の「更新」と「完成猶予」|改正民法の新用語

改正民法では、従来の「中断」「停止」が「更新」「完成猶予」に名称変更されました。実質的な意味も明確化されており、実務上の整理が容易になっています。

C-1. 「更新」とは(旧:中断)

更新とは、それまで進行していた時効期間がリセットされ、新たに時効期間がゼロからスタートする効果です。中断より概念がクリアになりました。

C-2. 「完成猶予」とは(旧:停止)

完成猶予は、時効期間の進行は止まらないが、所定の事由が継続する間は時効完成しない効果です。期間の起算は変わらず、一時的に「完成のタイミングが先送り」される構造です。

C-3. 更新の主な事由(民法147・152条等)

  • 裁判上の請求:訴訟提起→確定判決により更新
  • 支払督促:仮執行宣言確定により更新
  • 強制執行・仮差押え・仮処分:手続終了により更新
  • 承認(債務者による):債務承認・一部弁済・分割払いの申出

C-4. 完成猶予の主な事由

  • 催告:内容証明等で催告した時点から6ヶ月間完成猶予
  • 協議を行う旨の合意:書面合意により1年以内の協議期間中は完成猶予
  • 裁判上の請求中:訴訟係属中は完成猶予
  • 天災等:不可抗力で権利行使ができない場合の一定期間

C-5. 「更新」と「完成猶予」の組み合わせ

裁判上の請求は、「請求開始時点で完成猶予」→「判決確定で更新」という二段階構造です。訴訟が長引いても、訴訟係属中は時効完成せず、判決確定で時効期間がリセットされる仕組みです。

C-6. 内容証明(催告)の効果

催告(内容証明等)は「6ヶ月の完成猶予」に留まり、時効更新ではありません。催告から6ヶ月以内に訴訟提起・支払督促等の本格的な手続きを起こさないと、再び時効が進行します。「内容証明を送れば時効が止まる」と誤解している方が多いため、注意が必要です。

時効完成が間近の債権を扱う場合、催告だけで安心せず、催告と並行して訴訟提起の準備を進めることが定石です。6ヶ月という猶予は、書面・証拠の整理・弁護士との打ち合わせ等を行うと意外と短い期間です。

更新・完成猶予の整理ができたところで、最重要論点である「債務承認」を深掘りします。


✍️ 債務承認による時効更新|実務で活用するテクニック

債務承認は、裁判手続きを使わずに時効を更新できる唯一の手段です。日常の督促業務で意識的に活用することで、時効リスクを大きく抑制できます。

D-1. 承認とは何か

承認とは、債務者が「自分には支払う債務がある」と認める意思表示です。口頭でも書面でも有効で、形式に制限はありません。承認があった時点で、時効期間が更新(リセット)されます。

D-2. 承認に該当する典型行為

  • 一部弁済(債務の一部を支払う)
  • 分割払いの申出
  • 支払猶予の懇願
  • 債務確認書・残高確認書への押印
  • 「○月までに支払います」とのメール返信
  • 担保提供・連帯保証人の追加

D-3. 承認の記録化が重要

口頭の承認も法律上有効ですが、後日「言った言わない」の争いを避けるため、必ず書面化します。督促電話での承認発言があったら、その日のうちにメールで「本日のお電話のお礼。下記内容にて確認いたしました」と書面送付するのが定石です。

D-4. 債務承認書のテンプレ

      債務承認書
 
私(当社)は、貴社に対し、【ここを差し替え:取引内容】に基づく金【ここを差し替え】円のお支払義務があることを確認いたします。
 
本債務について、下記の通り分割払いにてお支払いすることをお約束します。
 
 ・残債総額:【ここを差し替え】円
 ・分割回数:【ここを差し替え】回
 ・各回金額:【ここを差し替え】円
 ・初回お振込予定日:【ここを差し替え】
 
なお、1回でも支払を遅延した場合は、残債全額を直ちに一括弁済する義務があることを承諾します(期限の利益喪失条項)。
 
 令和【ここを差し替え】年【ここを差し替え】月【ここを差し替え】日
 債務者署名・押印:【ここを差し替え】

D-5. 一部弁済の効果

債務者が債務の一部でも支払うと、債務全体について承認があったとみなされ、時効が更新されます。100万円のうち1万円でも入金があれば、時効期間が1万円入金日からリセットされます。督促実務では、まず一部弁済を引き出すアプローチが時効対策としても有効です。

D-6. 「時効中の承認」

時効が完成していない期間中の承認は、新たな時効期間の起算点になります。時効が完成した後の承認は「時効援用権の放棄」として、時効を主張できなくする効果があります(最高裁判例の解釈による)。

D-7. 「うっかり承認」させない注意

逆に、自社が債務者側の場合、不用意な発言が「承認」と解釈されないよう注意が必要です。「いったん持ち帰って検討します」「経理に確認します」といった中立的表現に留めることで、時効主張の余地を残せます。

債務承認の活用法を整理したところで、時効援用の手続きに進みます。


📜 時効援用|手続きと効果

時効援用とは、「時効の利益を受ける」と意思表示することです。時効期間が経過しても援用しない限り、債権は法的に消滅しません。

E-1. 援用の意思表示

援用は、債務者から債権者に対する明示的な意思表示で行います。口頭でも有効ですが、後の証拠化のため内容証明郵便で行うのが定石です。文面例は次のとおりです。

     時効援用通知書
 
貴社が当方に対し有しているとされる【ここを差し替え:取引内容】に基づく債権につきましては、すでに消滅時効期間(5年)が経過していると認識しております。
 
つきましては、本書面をもって、上記債権に係る消滅時効を援用いたします。
 
 令和【ここを差し替え】年【ここを差し替え】月【ここを差し替え】日

E-2. 援用権を持つ人の範囲

時効援用権を持つのは、債務者本人のほか、保証人・物上保証人・連帯保証人・後順位抵当権者など、時効によって直接利益を受ける者です(民法145条)。法人の場合は代表者が会社を代理して援用します。

E-3. 援用後の効果

  • 債権が遡及的に消滅(時効期間の起算点まで遡る)
  • 債権者は裁判で請求しても認められない
  • すでに弁済済の部分は、原則として返還請求できない(不当利得返還の例外あり)
  • 担保(抵当権・連帯保証)も消滅

E-4. 援用権の放棄

時効完成前に援用権を放棄することは認められません(民法146条)。しかし、時効完成後に「援用しない」と意思表示することは可能で、これを「援用権の放棄」と呼びます。完成後の債務承認・一部弁済も、判例上「援用権の放棄」または「援用権の喪失」とみなされます。

E-5. 援用に関する裁判例の傾向

判例(最判昭和41年4月20日等)では、時効完成後の債務承認について「援用権の喪失」を認めています。つまり、時効期間が完成していても、その後に「払います」と認めると、もはや時効を主張できなくなる可能性があります。債務者側に立つ場合、時効完成後の応答は慎重に行う必要があります。

E-6. 時効援用の実務的影響

債権者側から見ると、時効援用は「貸倒れの確定」と概ね同じ意味を持ちます。会計上は貸倒損失として処理し、消費税法39条による貸倒れに係る消費税控除も検討します(仕訳・税務の詳細は派生記事「未払金の仕訳・税務処理完全ガイド」を参照)。

援用の手続きを整理したところで、内容証明と時効の関係を深掘りします。


📮 内容証明と時効|「催告」の効果と限界

内容証明郵便は、時効対策の代表的な手段ですが、誤解されやすい論点でもあります。「内容証明を送れば時効が止まる」というのは正確ではなく、効果は限定的です。

F-1. 催告の効果(6ヶ月の完成猶予)

内容証明等による催告は、その時点から6ヶ月間の完成猶予を生じさせます(民法150条1項)。この6ヶ月以内に訴訟提起・支払督促・調停申立て等の本格的な手続きを取らないと、再び時効が進行します。

F-2. 催告の更なる催告

「催告したら6ヶ月の完成猶予、6ヶ月以内に再度催告」を繰り返しても、2回目の催告には完成猶予の効果がありません(民法150条2項)。「内容証明を毎月送り続ければ時効が来ない」という運用は通用しないため、必ず6ヶ月以内に裁判手続き等に進む必要があります。

F-3. 内容証明の典型文面(時効対策)

      催告書
 
当社は貴社に対し、【ここを差し替え:契約日】付業務委託契約に基づき、【ここを差し替え:サービス内容】を提供いたしました。
 
当社は貴社に対し【ここを差し替え:請求日】付請求書をもって、金【ここを差し替え】円のお支払いを請求し、お支払期日は【ここを差し替え】と定めましたが、本書面到達日現在、お支払いを確認できません。
 
つきましては、本書面到達後7日以内に、上記金額及びこれに対する支払期日の翌日から支払済みまでの遅延損害金(年【ここを差し替え】%)を、下記口座にお振込みいただきますよう、本書面をもって催告いたします。
 
期間内にお支払いがない場合は、法的手段に移行することをここに申し添えます。

F-4. 配達証明の重要性

内容証明だけでは「到達日」が証明されません。必ず「配達証明」をセットで付けます。配達証明により、相手に到達した日付(=催告の日付)が公的に証明され、6ヶ月の完成猶予期間の起算点が明確になります。

F-5. e-内容証明の活用

e-内容証明(インターネット内容証明)は、郵便局窓口に行かずに24時間オンラインで差し出しできるサービスです。時効完成が迫る案件で、土日深夜でも差し出せる点が大きなメリットです。料金は通常の内容証明と同等程度です。

F-6. 催告と並行して進めるべきこと

  • 訴訟提起または支払督促の準備(書類整備)
  • 証拠資料の整理(請求書・契約書・納品物等)
  • 弁護士との打ち合わせ
  • 相手の財産調査(仮差押えの準備)

内容証明の効果と限界を整理したところで、改正で廃止された商事消滅時効の影響を見ていきます。


🗂 商事消滅時効廃止の影響|旧法と新法の経過措置

改正前は商法522条で「商行為によって生じた債権の消滅時効は5年」と定められていました。改正民法施行に伴い、商法522条は削除され、すべての債権が民法の時効ルールに統一されました。

G-1. 旧商法522条の意義

商行為(商人間取引・商人による行為)から生じた債権は、民事債権(10年)より短い5年で時効消滅する仕組みでした。事業者間取引の迅速性を確保する趣旨でしたが、改正民法で民事債権の原則時効が5年(主観的)に短縮されたため、商事の特例を維持する必要がなくなりました。

G-2. 廃止後の取扱い

商行為由来の債権も、民事債権も、同じ民法166条1項のルール(主観5年・客観10年)が適用されます。事業者間取引でも個人間取引でも、原則として「権利を行使できることを知ったときから5年」です。

G-3. 経過措置(施行日前後の債権)

改正民法附則により、2020年4月1日前に発生した債権には旧法(10年または5年の商事時効)が、同日以降に発生した債権には新法が適用されます。施行日付近の債権は新旧どちらの法が適用されるか個別判断が必要なため、弁護士確認を推奨します。

G-4. 廃止された職業別短期時効

旧法には次のような職業別短期時効が定められていましたが、改正により全廃され、民法に統一されました。

債権類型改正前改正後
飲食代金・宿泊代金1年原則5年
製造業・卸売業の売掛金2年原則5年
医師・弁護士等の報酬2〜3年原則5年
建築工事代金3年原則5年
商行為由来の債権5年原則5年(実質維持)

G-5. 実務での影響

  • 飲食店・宿泊業:時効が大幅に延長(1年→5年)
  • 製造業・卸売業:2年→5年で延長
  • 建設業:3年→5年で延長
  • 商人間取引:5年で変動なし(実質維持)

時効が延長された業種では、過去に「もう時効だから」と諦めていた債権を再検討する価値があります。ハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?」で整理した回収手段を、時効起算点を再確認したうえで適用してみてください。


⚖️ 訴訟・支払督促による時効更新|手続き別の効果

裁判手続きは時効更新の最も確実な手段です。各手続きの時効への効果を整理します。

H-1. 通常訴訟

  • 訴訟提起時点から完成猶予(訴訟係属中)
  • 判決確定により時効更新(10年の新時効期間がスタート)
  • 訴え却下・取下げの場合は完成猶予のみ

H-2. 少額訴訟(60万円以下)

  • 通常訴訟と同様の更新効果
  • 判決確定で時効10年が新たにスタート
  • 相手が通常訴訟移行を申立てた場合、通常訴訟へ移行

H-3. 支払督促

  • 支払督促申立時点から完成猶予
  • 仮執行宣言確定により時効更新
  • 相手が異議申立てした場合、通常訴訟に移行

H-4. 民事調停

  • 調停申立時点から完成猶予
  • 調停成立で時効更新
  • 調停不成立の場合は完成猶予のみ(6ヶ月以内に訴訟提起等)

H-5. 強制執行・仮差押え

  • 申立時点から完成猶予
  • 手続終了により時効更新
  • 取下げや却下の場合は完成猶予のみ

H-6. 判決確定後の時効

判決により確定した債権の時効は、10年に統一されます(民法169条1項)。元の債権が短期時効(5年)であっても、確定判決により10年に延長される効果があります。

H-7. 「時効ぎりぎり」の場合の優先手段

時効完成まで残り数ヶ月の場合、最も迅速な手段は支払督促です。書類のみで申立てが完了し、本人の出頭が原則不要、印紙代も訴訟の半額です。時効完成直前は、まず内容証明で6ヶ月の完成猶予を確保し、その間に支払督促または訴訟提起の準備を進めるのが現実的です。

裁判手続きの効果を整理したところで、時効管理の実務に進みます。


📊 時効管理の実務|売掛金エイジングと時効リミット

時効を意識した売掛金管理は、経理・財務部門の重要業務です。日常的なエイジング管理と、時効リミットの可視化により、貸倒リスクを大きく抑制できます。

I-1. 売掛金エイジング表の活用

エイジング表は、売掛金を滞留期間ごとに区分管理する一覧です。一般的な区分は次のとおりです。

滞留期間対応レベル典型アクション
0〜30日正常通常請求のみ
31〜60日軽度滞留1回目督促メール
61〜90日中度滞留2回目督促・電話
91〜180日重度滞留最終通告・内容証明
181日〜3年長期滞留法的手段・弁護士介入
3〜5年時効間近催告+訴訟準備
5年超時効リスク高援用時の対応準備

I-2. 時効リミット管理表

取引先別・請求書別に、時効完成予定日を一覧管理する表です。完成予定日の半年前・3ヶ月前にアラートを設定し、催告または訴訟提起の判断を行います。

  • 取引先名
  • 請求書番号
  • 請求金額
  • 支払期日
  • 時効完成予定日(支払期日翌日+5年)
  • 督促履歴(日付・経路・結果)
  • 債務承認の有無・日付
  • 催告履歴(内容証明送付日)

I-3. クラウド会計ソフト・ERPでの管理

freee・マネーフォワード・SAP等のクラウド会計・ERPシステムでは、売掛金エイジング機能が標準装備されています。請求書発行から自動的に滞留期間を計算し、アラート通知する機能を設定することで、人手の管理ミスを最小化できます。

I-4. 経理・営業の月次連携

時効管理は経理部門だけでは完結しません。営業部門が「相手の状況」「取引継続意向」を共有することで、時効リスクと取引関係性のバランスを取った判断ができます。月次の「売掛金レビュー会議」を経理・営業合同で開催するのが理想形です。

I-5. 期末監査・税務調査での論点

  • 長期滞留売掛金の実在性
  • 時効完成済債権の貸倒処理の妥当性
  • 形式上の貸倒れ(9-6-3)の起算日の正確性
  • 債権者からの督促履歴(時効更新事由の有無)

時効管理の実務を整理したところで、続いて債務者側の立場から時効を考える視点も整理しておきます。


🛡 債務者側の視点|時効をめぐる注意点と対応

本記事は債権者の回収視点を主軸としていますが、自社が「請求された側」になるケースも実務では一般的です。債務者側の視点から時効をめぐる注意点を整理します。

J-1. 時効完成を主張するには「援用」が必要

時効期間が経過しただけでは、債権は自動消滅しません。債務者側から明示的に「援用」の意思表示を行う必要があります。請求書を放置するだけでは時効は完成しないため、能動的な対応が必要です。

J-2. 「うっかり承認」のリスク

時効間近の請求に対し、不用意に「払います」「分割でお願いします」と返答すると、債務承認として時効が更新されてしまいます。回答前に、時効完成状況を社内で確認することが重要です。

J-3. 時効完成後の対応文面例

件名:貴社請求につきまして
 
貴社よりご請求いただきました件につきましては、すでに消滅時効期間が経過していると認識しております。
 
つきましては、当方は本債権につき消滅時効を援用いたします。
なお、本書面は時効援用の意思表示であり、債務を承認するものではない旨を申し添えます。

J-4. 弁護士相談のタイミング

時効援用は法的効果が大きいため、援用の前に弁護士に確認することを推奨します。特に、起算点・更新事由の有無・援用権の喪失リスク等は、個別事案で判断が分かれます。

J-5. 旧法適用の可能性確認

2020年4月1日前に発生した債権には、旧法(民事10年・商事5年・職業別短期)が適用される可能性があります。施行日付近の債権は、契約締結日・発生日を確認したうえで、新旧どちらの法が適用されるかを判断します。

債務者側の視点を整理したところで、続いて関連する時効論点(不法行為・賃金・税金)も簡単に触れておきます。


🧭 関連する時効論点|不法行為・賃金・公租公課

未払金(売掛債権)の時効と並行して、実務でよく相談される他の時効ルールも把握しておきましょう。混同を避けることで、適切な対応判断ができます。

K-1. 不法行為に基づく損害賠償請求権

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、民法724条により「損害および加害者を知ったときから3年」または「不法行為時から20年」です。生命・身体を害する不法行為の場合は5年(民法724条の2)です。契約に基づく債権とは別の時効ルールである点に注意してください。

K-2. 賃金・退職金の時効

労働基準法上の賃金請求権は、改正により5年(当面の間は経過措置で3年)に統一されました。退職金請求権は5年、退職手当を除く賃金・年次有給休暇手当の請求権は当面3年です。未払い残業代の請求等は、こちらのルールが適用されます。

K-3. 公租公課(税金)の時効

国税・地方税の徴収権は、国税通則法・地方税法の規定により、原則として法定納期限から5年で時効消滅します。脱税等の悪質な場合は7年に延長されます。民法上の債権とは別系統のルールである点に注意してください。

K-4. 確定判決による債権の時効

確定判決により確定した債権は、元の債権が短期時効であっても、10年に統一されます(民法169条1項)。判決取得後は10年間隔で強制執行を申立てる等により、さらに時効更新を継続できます。

K-5. 担保物権の付従性

抵当権・質権等の担保物権は、被担保債権が時効消滅すると付従性により消滅します。担保物権を有していても、被担保債権の時効管理は怠れません。

K-6. 時効ルール一覧(参考)

債権類型時効期間根拠
一般の債権知って5年/できて10年民法166条
確定判決による債権10年民法169条
不法行為損害賠償知って3年/不法行為時20年民法724条
賃金・退職金5年(経過措置で3年)労働基準法115条
国税徴収権5年(悪質7年)国税通則法72条
※2026年6月時点の整理。個別事案では弁護士・税理士確認を推奨します。

関連する時効論点を整理したところで、最後に頻出のFAQに進みます。


❓ FAQ|未払金の時効に関する頻出8問

Q1: 売掛金の時効は何年ですか?

A1: 2020年4月1日以降に発生した売掛金は、原則として「支払期日の翌日から5年」で時効完成します。

事業者間取引では、契約締結時点で「権利の存在」「支払期日」を知っているため、主観的起算点(5年)が客観的起算点(10年)より先に到来します。2020年3月以前に発生した債権は、旧法(民事10年・商事5年・職業別短期)が適用されるため、個別確認が必要です。

Q2: 内容証明を毎月送り続ければ、時効は来ませんか?

A2: いいえ、内容証明(催告)の完成猶予効果は最初の1回のみです。

民法150条2項により、催告中の再催告には完成猶予の効果がありません。催告から6ヶ月以内に訴訟提起・支払督促等の本格的な手続きを取る必要があります。「催告で先送り→6ヶ月以内に裁判」の流れを徹底してください。

Q3: 相手が一部だけ振り込んできました。時効はどうなりますか?

A3: 一部弁済は「債務の承認」として、時効が更新(リセット)されます。

1万円の入金でも、残額全体について時効が更新されます。1万円入金日翌日から、新たな5年カウントが始まります。督促実務では、一部弁済を引き出すアプローチが時効対策としても極めて有効です。

Q4: 時効完成後に「払います」と言われたら、回収できますか?

A4: 判例上、時効完成後の承認は「援用権の喪失」とされる傾向があり、回収できる可能性があります。

時効完成後の債務承認・一部弁済は、最判昭和41年4月20日等の判例により「援用権の喪失」とみなされます。ただし、相手が「時効完成を知っていた」場合と「知らなかった」場合で扱いが分かれる議論があるため、個別事案では弁護士確認を推奨します。

Q5: 「時効の援用」をしないとどうなりますか?

A5: 時効期間が経過しても、援用しない限り債権は法的に有効です。

債権者側から見れば、時効が「自動的に成立する」わけではないため、時効完成後も交渉や和解の余地があります。ただし、債務者がいつでも時効援用できる状態のため、回収可能性は実務上極めて低くなります。

Q6: 法人と個人事業主で、時効ルールは異なりますか?

A6: 改正後は、法人・個人事業主・一般消費者を問わず、同じ民法ルールが適用されます。

商事消滅時効(商法522条)の廃止により、商人・非商人の区別がなくなりました。すべての債権が民法166条1項のルール(主観5年・客観10年)の対象です。

Q7: 連帯保証人がいる場合、時効はどうカウントされますか?

A7: 主債務者と連帯保証人で、時効カウントが連動する論点があります。

主債務の時効が完成すれば、連帯保証債務も付従性により消滅します。一方、主債務者への時効更新事由(債務承認等)が、連帯保証人にも効果を及ぼすかどうかは、契約内容と改正民法のルール(民法441条等)の解釈で判断が分かれます。実務では、主債務者と連帯保証人の両方に内容証明を送付し、両方の時効管理を並行して行うのが安全です。

Q8: 時効完成済の債権を、会計上どう処理しますか?

A8: 時効完成・援用により法的に消滅した債権は、貸倒損失として処理します。

法人税法基本通達9-6-1〜9-6-3のいずれの類型に該当するかは個別判断ですが、援用通知書を客観資料として、事実上の貸倒れ(9-6-2)または法的整理に準じる扱いを検討します。消費税法39条による貸倒れに係る消費税控除も忘れずに適用してください。仕訳・税務処理の詳細は派生記事「未払金の仕訳・税務処理完全ガイド」を参照してください。回収手段全体については、ハブ記事「未払金を回収する10個の方法とは?回収方法について解説」をご覧ください。


免責事項:本記事は2026年6月時点の改正民法(2020年4月1日施行)に関する一般的解釈に基づくものであり、特定の事案に関する法務助言を構成するものではありません。個別の時効計算・援用手続き・訴訟戦略は、必ず弁護士へご相談ください。法令・通達・判例は今後の改正・新たな判断により変動する可能性があり、本記事の内容が将来も同様に適用される保証はありません。
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最終更新日 2026年6月1日
編集 資金繰り総研 編集部(株式会社 PROTOCOL)

本記事は 資金繰り総研 編集部が制作したものです。資金繰り総研は中小企業・個人事業主のファクタリング業者選びを支援するメディアで、103 社の業者を公開情報・提携データをもとに比較・評価しています。

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