毎日売上がある店舗なのに、なぜお金が足りなくなるの?
店舗のビジネスは、お客さまからその場でお金をいただけるため、会社向けに仕事をする業種より入金は早いのが一般的です。それでも、次のような理由で手元のお金が足りなくなることがあります。
- 開業時の支出が大きい:内装工事、厨房機器や美容機器、物件を借りるときの保証金や仲介手数料など、開業前にまとまったお金が出ていきます。開業後に使える運転資金が少ないまま始まることも多いです。
- 固定費が重い:家賃と人件費は、売上が少ない月でも同じように出ていきます。売上が少し落ちるだけで、赤字になりやすい構造です。
- キャッシュレス決済の入金待ち:クレジットカードやスマホ決済の売上は、決済会社からまとめて入金されます。入金の周期は会社や契約によって違い、現金の売上より入金が遅くなります。
- 季節や天気の影響:飲食店は季節や天気、イベントの有無で売上が大きく変わります。美容室やサロンも、繁忙期と閑散期があります。
さらに、キャッシュレス決済には手数料がかかるため、売上の金額より実際の入金は少なくなります。「売上は毎日あるのに、口座の残高が増えない」と感じるときは、固定費と入金のタイミングを見直してみましょう。
開業のとき、資金はどう準備すればいい?
店舗の開業では、開業までにかかるお金と開業後に売上が安定するまでのお金の2つを分けて考えることが大切です。
開業までにかかるお金
- 物件の保証金・仲介手数料・前家賃
- 内装工事の費用
- 厨房機器・美容機器・家具・レジなどの設備
- 最初の食材や材料、備品
- 求人や開業の告知の費用
開業後に売上が安定するまでのお金
開業してすぐに、お客さまが計画どおりに来てくださるとは限りません。売上が少ない最初の数か月も、家賃や人件費、借入れの返済は始まります。この期間の運転資金を用意しておかないと、開業後すぐに資金が足りなくなることがあります。運転資金の目安は、一般的に月商の1〜3か月分です。
開業資金は、日本政策金融公庫の創業向けの融資や、自治体の制度融資で用意することが多いです。審査では、自己資金の額、その業種での経験、売上の見込みの根拠がよく見られます。物件の契約を急ぐ前に、融資の見通しを立てておくと安心です。
店舗ビジネスに向いている調達方法はどれ?
開業資金・運転資金は、公的な融資を中心に
日本政策金融公庫と制度融資が基本です。金利が比較的低く、返済期間も長めに組めます。自治体によっては、創業する人向けに利息の一部を補助する制度を設けていることもあるので、店舗を開く地域の窓口に確認してみましょう。
設備は、リースで分ける
厨房機器や美容機器、レジなどは、リース・割賦を使うと一括の支払いを避けられます。開業時の手元のお金を、運転資金に残しておけるのが利点です。
改装や新しい取り組みには、補助金も
店舗の改装、省力化の設備、新しいサービスの開始などには、国や自治体の補助金が使えることがあります。原則として後払いなので、いったん全額を立て替える資金が必要です。公募の時期が決まっていることが多いため、早めに情報を集めましょう。
売掛金を使う方法は、合いにくい
店舗の売上の多くは個人のお客さまからのもので、ファクタリングの対象外になるのが一般的です。急ぎの資金が必要になる前に、融資の枠を確保しておくことが大切です。
家賃や人件費などの固定費は、どう見ればいい?
店舗ビジネスの資金繰りは、固定費の重さで大きく変わります。固定費とは、売上に関係なく毎月出ていくお金のことです。
- 家賃:店舗の場所選びでもっとも大きな判断です。売上の見込みに対して家賃が重すぎないかを、開業前によく確認します。
- 人件費:スタッフのお給料や社会保険料です。忙しい時間と暇な時間でシフトを調整できるかがポイントです。
- 借入れの返済:開業資金の返済も毎月の固定の支出になります。
- リース料・各種の契約料:設備のリース料、システムの月額料金なども積み重なります。
毎月の固定費の合計が分かると、最低いくら売上があれば赤字にならないかが計算できます。この金額を下回る月が続くと、資金はどんどん減っていきます。
また、食材や材料の費用(原価)は売上に応じて増えますが、値上がりの影響を受けやすい部分です。メニューや施術ごとの原価を把握し、値上がりが続く場合は価格の見直しも検討しましょう。
融資の相談では、店舗のどこを見られるの?
店舗ビジネスで融資を相談すると、決算書や確定申告書の数字に加えて、お店がこの先も続けていけるかを見られることが多いです。一般的には、次のような点が確認されます。
- 売上の推移:月ごとの売上が安定しているか、落ちている場合はその理由と対策。
- 固定費とのつり合い:家賃や人件費が売上に比べて重すぎないか。
- お客さまの状況:常連のお客さまや予約の状況、席の埋まり具合など。
- 資金の使い道:改装、設備の入れ替え、運転資金など、何にいくら使うのかが具体的か。
- 税金や社会保険料の納付:遅れなく納めているか。
「客席を増やす改装で、売上がこれくらい増える見込みなので、その分から返済する」(例)のように、使い道と返済の元手をセットで説明できると、審査する側も判断しやすくなります。日々の売上の記録や、前の年との比較を用意しておきましょう。計画の立て方は資金調達計画のページも参考になります。
日ごろからできる、資金繰りを楽にする工夫は?
- 日々の売上と入金を記録する:現金・カード・スマホ決済ごとに、売上の額と入金日を分けて記録します。融資の相談でも役立ちます。
- 決済会社の入金周期を確認する:入金の周期を早められる契約がないか、利用している決済会社の案内を確認してみましょう。手数料が変わる場合もあります。
- 閑散期の月を資金繰り表に入れておく:前の年の売上から、売上が落ちる月を予想し、その月に向けて資金を残しておきます。
- 回数券やコースの前払いは慎重に扱う:前払いでいただいたお金は、まだサービスを提供していない分です。返金の可能性もあるため、全額を使い切らないようにします。エステなど一部のサービスでは、法律で契約のルールが決められていることもあるので、専門家に確認してください。
- 2店舗目は、1店舗目が安定してから:1店舗目の売上と資金に余裕があるかを確かめてから計画しましょう。出店資金と、新しい店の売上が安定するまでの運転資金の両方が必要です。
店舗ビジネスは、毎日の小さな数字の積み重ねが資金繰りを左右します。月に一度は、売上・固定費・手元の残高を見比べる時間をつくると、早めに手を打てます。
準備しておきたい書類・数字
- 開業または出店の事業計画書(売上の見込みと根拠)
- 物件の条件(家賃・保証金)と内装・設備の見積書
- 自己資金の額が分かる通帳
- 日々の売上の記録(現金・カード・スマホ決済別)
- 毎月の固定費の一覧(家賃・人件費・返済・リース料)
- 直近の決算書または確定申告書(開業済みの場合)
1店舗目の売上が安定してきたら、開業時の借入れの返済状況を確認し、改装や2店舗目の計画を立て始めましょう。出店を考えるときは、新しい店の運転資金も含めて計画し直すことが大切です。
よくある質問
飲食店の開業資金は、自己資金がどれくらいあれば借りられますか?
カード決済の売上を早く現金にする方法はありますか?
売上が落ちて家賃が払えそうにありません。どうすればいいですか?
美容室の機器は、買うのとリースのどちらがよいですか?
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 中小企業庁 中小企業向け資金繰り支援・補助金の案内
- 消費者庁 特定商取引法に関する案内
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。