医療・介護の報酬は、なぜ入金まで時間がかかるの?
医療機関や介護事業所の収入の多くは、患者さま・利用者さまから直接いただく自己負担の分ではなく、公的な保険から支払われる報酬です。この報酬は、一般的に次のような流れで入金されます。
- サービスを提供する:診療や介護サービスを1か月分行います。
- 翌月の決められた期日までに請求する:1か月分をまとめて、審査と支払いを行う機関へ請求します。
- 審査を経て入金される:請求した内容が審査された後に支払われます。
この流れのため、診療報酬・介護報酬の入金は、請求からおおむね2か月後(サービスを提供した月から数えると、さらに後)になるのが一般的なパターンです。正確な締め日や支払日は、請求先の機関や保険の種類によって違うため、各機関の案内で確認してください。
また、請求の内容に不備があると、差し戻し(返戻)になり、その分の入金がさらに遅れることがあります。
保育施設の場合も、国や自治体から支払われるお金が収入の中心になることが多く、支払いの時期は自治体の取り決めによって違います。いずれの事業でも、サービスを提供してから入金までの間、人件費などを立て替える期間があると考えておきましょう。
開業のとき、なぜ一番お金が足りなくなるの?
医療・介護・保育の事業で、資金繰りが一番苦しくなるのは開業の直後です。理由は3つあります。
- 開業前に大きな支出がある:建物の改修や内装、医療機器や介護設備、車両の購入などに、まとまったお金がかかります。
- 開業前から人件費がかかる:スタッフの採用や研修は、開業より前に始める必要があります。
- 開業しても、報酬の入金は数か月後:上で説明したとおり、最初の報酬が入金されるまでには時間がかかります。しかも開業直後は、患者さまや利用者さまの数が少ないのが一般的です。
つまり、開業時には「設備のお金」と「収入が安定するまでの運転資金」の両方を用意する必要があります。設備のお金だけで計画を立てると、開業後に運転資金が足りなくなることがあります。
開業の資金計画では、利用者さまの数が少しずつ増えていく前提で、収入が支出を上回るまでの月数を見込み、その間の不足分を運転資金として用意しておくと安心です。どれくらいの期間で利用者さまが増えるかは地域や事業によって大きく違うため、慎重めに見積もりましょう。
医療・介護・保育に向いている調達方法はどれ?
開業・運転資金は、公的な融資を中心に
日本政策金融公庫は、開業間もない事業者でも相談しやすく、設備資金と運転資金の両方に使えます。制度融資は信用保証協会の保証付きで運転資金を借りやすい手段ですが、保証の対象になる業種かどうかは制度ごとに確認が必要です。このほか、医療・福祉の分野には、独立行政法人福祉医療機構による融資の制度もあります。対象や条件は公式の案内で確認してください。
設備は、リースや補助金を組み合わせる
医療機器や介護設備、送迎の車両は、リース・割賦を使うと一括の支払いを避けられます。介護・保育の施設の整備や設備の導入には、国や自治体の補助金が用意されていることもあります。補助金は原則として後払いなので、いったん全額を立て替える資金が必要です。
報酬の入金を待てないときは、報酬債権の資金化
請求済みの診療報酬や介護報酬を、入金日より前に資金化するファクタリングもあります。開業直後や急な支出のつなぎとして使われますが、手数料の分だけ収入が減るため、毎月使い続けるのは避けたいところです。条件は会社ごとに違うので、契約の前によく確認しましょう。
人件費が重いとき、どう考えればいい?
医療・介護・保育は、支出の大きな割合を人件費が占める事業です。しかも、利用者さまの数に関わらず、決められた人数のスタッフを置く必要がある場合もあります。
- 人員の基準と利用者さまの数のつり合いを見る:利用者さまが少ない時期でも、基準を満たす人数のスタッフが必要です。開業直後の赤字はこれが原因になりやすいです。
- 採用の費用も計画に入れる:人手不足の中では、求人広告や紹介会社への手数料が大きくなることがあります。
- 処遇改善の加算など、報酬の仕組みを確認する:スタッフのお給料の改善に使える加算の仕組みがある場合があります。内容は制度の案内や専門家に確認してください。
- 賞与や社会保険料の支払い月を資金繰り表に入れる:まとまった支払いになる月を前もって把握しておきます。
人件費は遅らせることができない支払いです。報酬の入金日とお給料の支払日の差を資金繰り表で確認し、足りない月があれば早めに手当てしておきましょう。
融資の相談の前に、何を準備すればいい?
医療・介護・保育の開業や拡大で融資を相談するときは、収入の見込みが現実的かどうかがよく見られます。一般的には、次のような点を説明できるようにしておくとよいでしょう。
- 地域の需要:開業する地域の人口や年齢の構成、近くにある同じ種類の施設の状況など、利用者さまが見込める理由。
- 利用者さまの増え方の見込み:開業から何か月で、どれくらいの人数になる見込みか。根拠となる考え方も添えます。
- スタッフの確保:必要な資格を持つ人を、開業までに確保できる見通しがあるか。
- 経歴と経験:院長や管理者として、これまでどのような経験を積んできたか。
- 自己資金:自分で用意できるお金がどれくらいあるか。
事業計画では、収入は控えめ、支出は多めに見積もっておくと、計画どおりに進まなかったときにも慌てずにすみます。計画の立て方は資金調達計画のページ、運転資金の考え方は必要運転資金の計算ページも参考になります。
日ごろからできる、資金繰りを楽にする工夫は?
- 請求の不備を減らす:差し戻しになると入金が遅れます。請求の前の確認の流れを決めておきましょう。
- 自己負担分の未収を減らす:患者さま・利用者さまからいただく自己負担分の支払いが遅れていないか、定期的に確認します。
- 設備投資と運転資金を分けて考える:設備の購入に運転資金を使うと、お給料を払うお金が足りなくなることがあります。
- 報酬の改定の時期を意識する:診療報酬や介護報酬は定期的に見直されます。収入の見込みが変わるため、改定のたびに計画を見直しましょう。
- 月ごとの数字を整える:利用者さまの数、報酬の請求額、人件費を毎月記録しておくと、融資の相談がしやすくなります。
医療・介護・保育は、法律や制度の決まりが多い分野です。報酬の請求、補助金、法人の形などの細かい点は、税理士・社会保険労務士・行政書士などの専門家や、所管の窓口に確認しながら進めてください。
準備しておきたい書類・数字
- 開業または拡大の事業計画書(利用者さまの数の見込みを含む)
- 設備・改修の見積書
- 報酬の請求額と入金額の月ごとの記録
- 人員の配置計画と人件費の見込み
- 直近の決算書(開業済みの場合)
- 資金繰り表(入金までの期間を反映したもの)
利用者さまの数が安定してきたら、開業時の借入れの返済と、次の設備の入れ替えや新しい施設の計画を合わせて見直しましょう。報酬の改定があったときも、収入の見込みを作り直すタイミングです。
よくある質問
診療報酬や介護報酬は、いつ入金されますか?
開業資金はいくらくらい用意すればいいですか?
報酬債権のファクタリングは使っても大丈夫ですか?
医療法人は出資を受けて資金を集められますか?
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 独立行政法人福祉医療機構 融資制度の案内
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 厚生労働省 診療報酬・介護報酬に関する資料
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。