運送・物流の会社は、なぜお金が足りなくなりやすいの?
運送・物流の仕事では、荷物を運ぶたびに費用がかかります。しかもその多くは、荷主からの運賃が入る前に払うお金です。
- 燃料費:走れば走るほどかかり、価格の変動も大きい費用です。値上がりすると、同じ仕事でも支払いが増えます。
- ドライバーさんの人件費:毎月決まった日に払う必要があります。
- 高速道路の料金:長い距離を走る仕事では大きな金額になります。
- 協力会社への支払い:自社だけで運びきれない分を他の運送会社に頼むと、その支払いも発生します。
- 車両の維持費:整備、車検、タイヤ、保険など、まとまった支出が定期的にあります。
一方で、荷主からの運賃は、一般的に月末に締めて、翌月末や翌々月に入金されます。つまり、1か月分の仕事の費用を立て替えたうえで、さらに入金まで待つことになります。
このため、新しい荷主の仕事が増えるほど、立て替えるお金も増えるのが運送業の特徴です。加えて、トラックの購入や入れ替えには大きなお金がかかるため、運転資金と設備資金の両方で資金繰りを考える必要があります。
運送・物流の会社に向いている調達方法はどれ?
立替の運転資金は、融資を基本に
燃料費や人件費の立替は、制度融資や日本政策金融公庫で運転資金を用意するのが基本です。黒字で取引実績がある会社なら、銀行のプロパー融資で必要なときに使える枠を作れることもあります。
トラックは、リースや長期の融資で
車両は何年も使うものなので、長い期間で返す資金で手当てするのが基本です。リース・割賦を使えば一括の支払いを避けられ、手元のお金を立替に残せます。公庫や制度融資の設備資金で購入する方法もあります。省エネの車両の導入などに、国や自治体の補助金が用意されていることもあるので、情報を集めておきましょう。
運賃の入金を待てないときは、売掛金の資金化
荷主は会社であることが多く、運賃の売掛金はファクタリングの対象になりやすいです。請求が確定した運賃を、入金日より前に資金化できます。ただし手数料は融資より高めです。運送業は利益率が高くないことが多いため、毎月使い続けると利益がほとんど残らないこともあります。融資が間に合わないときのつなぎと考えましょう。
支払いを先へ延ばす
協力会社や整備会社への支払いは、請求書カード払いで引き落としを先へ延ばせることがあります。
燃料費の値上がりには、どう備えればいい?
燃料費は運送業の費用の中でも大きな割合を占め、しかも自社では価格を決められない費用です。値上がりが続くと、同じ量の仕事をしていても利益が減り、資金繰りも苦しくなります。
備えとしては、一般的に次のようなことが考えられます。
- 燃料費の増えた分を計算する:前の年と比べて、毎月いくら増えたかを数字で把握します。
- 荷主に運賃の見直しを相談する:燃料費の上がった分を運賃に反映させる仕組み(燃料サーチャージ)を取り入れる会社もあります。国も、運送の取引で適正な運賃を求めることを後押ししています。
- 走り方を見直す:空車で走る距離を減らす、ルートを見直すなど、使う燃料を減らす工夫も大切です。
- 運転資金に余裕を持たせる:燃料費が上がった分だけ立替も増えるため、融資の枠を見直します。
燃料費の値上がりで資金が足りなくなったときは、国や自治体がセーフティネット保証などの資金繰り支援の制度を用意していることがあります。対象になるかどうかは時期や条件によって違うため、取引のある金融機関や信用保証協会、自治体の窓口に確認してください。
トラックの購入や入れ替えは、どう計画すればいい?
トラックは運送の会社にとって一番大きな買い物です。故障してから慌てて入れ替えると、資金の準備が間に合わないことがあります。
- 車両の一覧を作る:車両ごとに、使い始めた時期、走った距離、次の車検の時期、修理の費用を書き出します。
- 入れ替えの順番を決める:修理の費用が増えてきた車両から、入れ替えの候補にします。
- 購入とリースを比べる:一般的に、総支払額は購入のほうが抑えやすく、リースは一括の支払いを避けられ、手続きも比較的早いです。
- 1年ほど前から準備する:新しい車両は、注文してから納車まで時間がかかることがあります。補助金を使う場合も、公募の時期に合わせる必要があります。
複数の車両を同じ時期にまとめて入れ替えると、支出が一度に重なります。入れ替えの時期を少しずつずらすと、毎年の資金の負担をならしやすくなります。車両の購入とリースの税務上の扱いは、税理士に確認してください。
新しい荷主の仕事を受ける前に、何を確認すればいい?
新しい荷主の仕事は売上を増やすチャンスですが、受ける前にどれくらいの立替が必要になるかを確認しておくと安心です。
- 毎月増える費用:燃料費、人件費、高速代、協力会社への支払いがいくら増えるかを書き出します。
- 荷主の締め日と支払日:最初の入金がいつになるかを確認します。
- 車両やドライバーさんが足りるか:足りない場合は、車両の追加や採用の費用も必要です。
- 運賃が費用に見合っているか:燃料費や人件費が上がっている中で、利益が残る運賃かどうかを確かめます。
足りない金額が分かったら、仕事を始める2〜3か月前に金融機関へ相談を始めましょう。荷主との契約書や見積書があると、使い道と返済の元手を説明しやすくなります。必要な運転資金の考え方は必要運転資金の計算ページも参考になります。
また、ドライバーさんの働く時間には法律で上限が決められています。無理のない運行の計画で仕事が回るかどうかも、受ける前に確認しておきましょう。詳しくは専門家や所管の窓口に確認してください。
日ごろからできる、資金繰りを楽にする工夫は?
- 請求書をすぐに出す:締め日に間に合わないと、入金が1か月遅れることがあります。
- 荷主ごとの支払い条件を一覧にする:入金の遅い荷主が分かると、交渉や資金の準備がしやすくなります。
- 1社の荷主に頼りすぎない:大口の荷主の仕事が減ったときの影響を小さくできます。
- 車両ごとの利益を見る:車両ごとに売上と費用を比べると、利益の出ていない仕事が分かります。
- まとまった支出の月を資金繰り表に入れる:車検、保険の更新、賞与など、大きな支出が重なる月を前もって把握します。
運送業は、荷主との長い付き合いや、安全に運び続けてきた実績が信用になります。荷主の一覧、取引の年数、車両の一覧をまとめておくと、融資やリースの相談がしやすくなります。
資金繰りが苦しくなってから相談するより、業績が安定しているうちに金融機関と話をしておくほうが、条件のよい資金を用意しやすくなります。車両の入れ替えの計画も、あわせて伝えておくとよいでしょう。
準備しておきたい書類・数字
- 直近2〜3期分の決算書と月次の試算表
- 荷主ごとの売上と、締め日・支払日の一覧
- 毎月の燃料費・人件費・高速代・協力会社への支払いの一覧
- 車両の一覧(使い始めた時期・走行距離・車検の時期・リースの有無)
- 荷主との契約書・運賃の見積書
- 資金繰り表(車検・保険・賞与など大きな支出の月を含む)
荷主や車両の台数が増えてきたら、立替の大きさと使える融資の枠が合っているかを見直しましょう。燃料費の水準や運賃の条件が変わったときも、資金繰り表を作り直すタイミングです。
よくある質問
荷主への運賃をファクタリングすると、荷主に知られますか?
トラックは中古で買うのとリースのどちらがよいですか?
燃料費が上がって資金が足りません。使える制度はありますか?
軽貨物の個人事業主でも融資は受けられますか?
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 中小企業庁 セーフティネット保証制度の案内
- 国土交通省 トラック運送業の取引適正化に関する資料
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。