製造業は、なぜお金が足りなくなりやすいの?
製造業では、お金が出ていってから戻ってくるまでの期間が長くなりがちです。流れを順に見ると、次のようになります。
- 材料を仕入れる:仕入先への支払いが先に来ます。
- 加工・製造する:人件費や電気代などがかかります。
- 在庫として置いておく:完成品や仕掛品(作りかけの品)も、売れるまでは現金になりません。
- 納品・請求する:締め日を過ぎてからの入金になります。
この間ずっと、会社は自分のお金を立て替えています。そのため、注文が増えるほど必要なお金も増えるのが製造業の特徴です。大口の注文を受けた月は、利益が増える見込みでも、手元の現金は一時的に大きく減ります。
さらに、製造業には次のような事情も重なります。
- 材料の値上がり:同じ量を作るのに必要なお金が増えます。
- 設備の入れ替え:機械は高額で、一度に大きな支出になります。
- 取引先の支払いサイトが長い:大手の取引先ほど支払い条件が決まっていて、変えにくいことがあります。
つまり製造業の資金繰りは、運転資金(材料・在庫・入金待ち)と設備資金(機械)の2つを分けて考えることが大切です。
運転資金と設備資金、それぞれ何で調達する?
運転資金は、融資を基本に考える
材料費や入金待ちのための運転資金は、制度融資や日本政策金融公庫が基本です。黒字が続き、取引実績がある会社なら、銀行のプロパー融資で必要なときに使える枠を作れることもあります。
在庫や売掛金が多いなら、ABLも選択肢
ABL(在庫や売掛金を担保にした融資)は、在庫や取引先の信用を評価して貸す仕組みです。在庫が多く、取引先がしっかりしている会社に向いています。ただし、在庫の評価や管理の報告が必要で、準備には時間がかかります。
設備資金は、長期の融資・リース・補助金を組み合わせる
機械の購入は何年も使うものなので、長い期間で返す資金で手当てするのが基本です。公庫や制度融資の設備資金、リース・割賦が候補になります。省力化や生産性向上の設備なら、補助金が使えることもあります。補助金は原則として後払いなので、いったん全額を立て替える資金が必要です。
急ぎのつなぎには、売掛金の資金化
融資が間に合わないときは、納品済みの代金をファクタリングで早めに資金化する方法もあります。手数料が高めなので、一時的な手段と考えましょう。
在庫が増えすぎると、なぜ苦しくなるの?
在庫は決算書の上では資産ですが、売れるまでは使えないお金です。在庫が増えると、帳簿の利益は出ていても、手元の現金は減っていきます。
在庫が増えやすい原因には、一般的に次のようなものがあります。
- 材料の値上がりに備えて、多めに仕入れた
- まとめて作ったほうが安いので、多めに作った
- 取引先の注文が急に減り、作った分が残った
- 売れ残りの古い在庫が、そのまま置かれている
対策としては、まず在庫を品目ごとに一覧にし、どれくらい動いているかを見ることです。長く動いていない在庫は、値引きして売る、材料として別の製品に使うなどの判断が必要になります。
また、在庫の金額は融資の審査でも見られます。売上に比べて在庫が多すぎると、「売れない在庫を抱えているのでは」と見られることがあります。適正な在庫の量を決めておくと、資金繰りと審査の両方に役立ちます。在庫の評価や税務上の扱いは、税理士に確認してください。
大口の注文を受ける前に、何を確認すればいい?
大口の注文はうれしいものですが、受ける前にお金が足りるかを確認しておくと安心です。
- 材料費がいつ、いくら出ていくか:仕入先の支払い条件も合わせて書き出します。
- 製造にかかる期間と費用:残業代や外注費が増えないかも見ます。
- 入金がいつになるか:納品日、取引先の締め日と支払日から計算します。
- その間に足りなくなる金額:毎月の資金繰り表に重ねて、一番少なくなる月の残高を確認します。
足りない金額が分かったら、足りなくなる月の2〜3か月前に金融機関へ相談を始めます。注文書や契約書があると、使い道と返済の元手を説明しやすくなります。
あわせて、取引先に前払いや分割での支払いをお願いできないかも検討しましょう。特注品や大口の注文では、着手時に一部を払ってもらう取り決めをすることもあります。必要な運転資金の考え方は必要運転資金の計算ページ、計画の立て方は資金調達計画のページも参考になります。
取引先の支払い遅れや注文減少には、どう備える?
製造業、特に部品や下請けの加工をしている会社は、少数の取引先に売上が集中しやすい傾向があります。主要な取引先の注文が減ったり、支払いが遅れたりすると、一気に資金繰りが苦しくなります。
備えとしては、一般的に次のようなことが考えられます。
- 取引先ごとの売上の割合を把握する:1社に大きく偏っている場合は、その会社の状況を日ごろから気にかけておきます。
- 新しい取引先を少しずつ増やす:すぐには難しくても、偏りを減らす方向に動くことが大切です。
- 手元資金に余裕を持つ:毎月の固定費の数か月分を目安に、すぐ使えるお金を残しておくと、急な変化にも対応しやすくなります。
- 融資の枠を平時に作っておく:業績がよいときのほうが、金融機関との話は進みやすいものです。
取引先が倒産した場合に備える制度として、国の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)などもあります。加入の条件や中身は、運営する機関の案内や専門家に確認してください。
日ごろからできる、資金繰りを楽にする工夫は?
- 支払いと入金のサイトをそろえる:仕入先への支払いが早く、取引先からの入金が遅いほど苦しくなります。条件の見直しを相談できる相手がいないか確認しましょう。
- 原価を製品ごとに把握する:材料の値上がり分を価格に反映できているかが分かります。値上げの交渉材料にもなります。
- 設備投資は運転資金と分けて計画する:機械の購入に運転資金を使ってしまうと、材料を買うお金が足りなくなります。
- 補助金は早めに情報を集める:公募の時期が決まっていることが多く、申請から入金まで時間がかかります。
- 決算書と月次の数字を整える:月ごとの売上・原価・在庫が分かると、融資の相談がしやすくなります。
製造業は、取引先との長い付き合いがある会社も多く、それ自体が信用になります。取引先の一覧と取引の年数をまとめておくと、融資やABLの相談で役立ちます。品質の認証や特許、長く続く取引の実績なども、会社の強みとして説明できるよう整理しておきましょう。
資金繰りが苦しくなってから相談するより、業績が安定しているうちに金融機関と話をしておくほうが、条件のよい資金を用意しやすくなります。設備の入れ替えの予定も、早めに伝えておくとよいでしょう。
準備しておきたい書類・数字
- 直近2〜3期分の決算書と月次の試算表
- 取引先ごとの売上と、締め日・支払日の一覧
- 仕入先ごとの支払い条件
- 在庫の一覧(品目・数量・金額・動き)
- 製品ごとの原価の計算
- 設備の一覧と入れ替えの予定、見積書
注文の量や取引先が変わったら、運転資金の必要額を計算し直しましょう。設備の入れ替えを考える時期は、補助金の公募とあわせて、1年ほど前から計画を立て始めると選べる手段が増えます。
よくある質問
在庫を担保にお金を借りられますか?
機械を買うのに補助金は使えますか?
材料の値上がりで運転資金が足りません。どうすればいいですか?
リースと融資で機械を買うのは、どちらが得ですか?
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 中小企業庁 中小企業向け資金繰り支援・補助金の案内
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。