卸売・小売・ECは、なぜお金が足りなくなりやすいの?
物を仕入れて売るビジネスでは、仕入れの支払いと売上の入金の間に時間の差があります。この差が、お金が足りなくなる一番の原因です。
- 仕入れは先に払う:仕入先によっては前払いや、納品後すぐの支払いを求められます。海外からの仕入れでは、前払いが一般的なことも多いです。
- 在庫として置いている間は現金にならない:売れるまで、仕入れたお金は商品の形で寝ています。
- 売上の入金も後から:卸売なら取引先の締め日の後、ECならモールや決済会社から一定の周期でまとめて入金されます。
さらに、物販には季節やセールの波があります。年末や新生活の時期、大きなセールの前には、売れる量に合わせて多めに仕入れる必要があります。その分、仕入れの支払いが一度に重なります。
売上が伸びている会社ほど、次の仕入れの金額も大きくなるため、成長しているのに手元のお金が足りないという状態が起こりやすいのです。これは物販の仕組みから生まれる問題なので、早めに資金の手当てを考えておくことが大切です。
仕入れの資金には、どの方法が向いている?
仕入れと売上の時間差を埋めるなら、仕入れファイナンス
仕入れファイナンスは、仕入れの代金を立て替えてもらい、商品が売れてから返す仕組みです。目安として仕入れ額の50〜100%が対象になります。売れ筋の商品を切らさずに仕入れたいときに向いています。
まとまった運転資金は、融資を基本に
継続して必要な仕入れの資金は、制度融資や日本政策金融公庫が基本です。金利が比較的低く、返済期間も長めに組めます。黒字で取引実績がある会社なら、銀行のプロパー融資も候補です。
在庫が多い卸売業なら、ABL
ABLは、在庫や売掛金を担保にする融資です。売りやすい商品をまとまって持っている卸売業などで、在庫の価値を評価してもらえることがあります。
支払いを延ばす・売掛金を早く現金にする
仕入先への支払いは、請求書カード払いで引き落としを先へ延ばせることがあります。卸売業で会社向けの売掛金があるなら、ファクタリングで早めに資金化する方法もあります。どちらも手数料がかかるため、利益率と比べて使いましょう。
EC(ネット通販)ならではの注意点は?
ECの事業者は、店舗や卸売とは少し違うお金の流れになります。
- モールや決済会社からの入金周期:売上は、モールや決済代行会社が一定の期間ごとにまとめて入金します。周期は会社ごとに違うので、利用しているサービスの規約で確認しましょう。
- 広告費が先に出ていく:売上を伸ばすための広告費は、売れる前に支払います。セール前は仕入れと広告費が同時に重なります。
- 返品や返金:返品が多い商品では、入金が予定より減ることがあります。
- 倉庫や発送の費用:外部の倉庫を使う場合、保管料や発送料が毎月かかります。
なお、ECの売上はお客さまが個人のことが多く、個人向けの売上はファクタリングの対象外になるのが一般的です。モールの売上入金を早める独自のサービスがある場合もありますが、条件はサービスごとに違います。
ECでは、商品ごとの利益を、仕入れ値だけでなく、モールの手数料、広告費、送料、返品まで含めて計算しておくと、借りたお金をきちんと返せるかを判断しやすくなります。
在庫と資金は、どう管理すればいい?
物販では、在庫の量がそのまま資金繰りに響きます。在庫が増えすぎると、帳簿の利益は出ていても、手元の現金は減っていきます。
- 商品ごとの売れ行きを見る:よく売れる商品と、長く残っている商品を分けて把握します。
- 仕入れの量を売れ行きに合わせる:まとめて仕入れると安くなる場合でも、売れるまでの期間を考えて量を決めます。
- 長く残っている在庫は早めに手を打つ:値引き販売やセット販売などで現金に戻すことも検討します。
- 繁忙期の仕入れ計画を早めに立てる:いつ、いくら仕入れ、いつ入金されるかを資金繰り表に書きます。
資金繰り表には、仕入れの支払い、広告費、家賃や人件費などの固定費、売上の入金を月ごとに並べます。一番お金が少なくなる月が分かったら、その2〜3か月前には調達の相談を始めましょう。必要な運転資金の考え方は必要運転資金の計算ページも参考になります。
繁忙期やセールの前の資金は、いつから準備する?
物販では、売上が一番伸びる時期の少し前に、お金が一番少なくなります。仕入れの支払いが先に来て、売上の入金は繁忙期が終わった後になるためです。
たとえば年末に売上が集中する商品を扱う店の場合(例)、秋に仕入れの支払いが重なり、売上が入金されるのは年明け以降、ということがあります。この時期の流れを前もって書き出しておくと、慌てずにすみます。
- 前の年の売上と仕入れの記録を見る:どの月に、どれくらい仕入れて、どれくらい売れたかを確認します。
- 今年の仕入れの量を決める:売れ行きの見込みに合わせ、売れ残りも考えて量を決めます。
- 支払いと入金の月を資金繰り表に書く:一番少なくなる月の残高を確かめます。
- 足りない分の調達方法を決める:融資は審査に数週間〜かかるため、繁忙期の2〜3か月前には相談を始めます。
毎年同じ時期に資金が必要になる場合は、その事情を金融機関に伝えておくと、季節ごとの資金として話が通りやすくなることがあります。前の年の実績を数字で見せられるようにしておきましょう。
日ごろからできる、資金繰りを楽にする工夫は?
- 仕入先と支払い条件を話し合う:取引が長く続いている仕入先なら、支払いを月末締め・翌月払いにしてもらえないか相談できることがあります。
- 売れ筋に資金を集中する:限られた資金は、早く売れて利益が出る商品の仕入れに優先して使います。
- 取引先の数を増やす:卸売業で1社に売上が集中していると、その会社の支払いの遅れが大きな打撃になります。
- 店舗の売上は毎日記録する:日々の売上と入金の記録は、融資の相談でも役立ちます。
- 為替の影響を見ておく:海外から仕入れる場合、円安になると同じ商品でも支払う金額が増えます。
また、融資の審査では、売上の推移と在庫の量がよく見られます。売上に比べて在庫が多すぎないか、毎月の数字で説明できるように整えておくと、相談が進みやすくなります。会計や税務の扱いは税理士に確認してください。
調達の方法を選ぶときは、手数料や金利を、その商品の利益と比べることが大切です。利益の薄い商品の仕入れに高い手数料の資金を使うと、売れても手元にほとんど残りません。
準備しておきたい書類・数字
- 直近2〜3期分の決算書と月次の試算表
- 商品ごとの売上・仕入れ値・利益の一覧
- 在庫の一覧(商品・数量・金額・仕入れた時期)
- 仕入先ごとの支払い条件
- モール・決済会社ごとの入金周期の分かる資料
- 繁忙期・セールの仕入れ計画と資金繰り表
売上が伸びてきたら、仕入れの金額と使える資金の枠が合っているかを見直しましょう。新しい販路(モールの追加や卸先の開拓)を始めるときも、入金の周期が変わるため資金繰り表を作り直すタイミングです。
よくある質問
仕入れファイナンスと融資は、どう違いますか?
ECの売上をファクタリングできますか?
在庫が多いと融資の審査に不利ですか?
海外からの仕入れで前払いを求められます。どうすればいいですか?
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 中小企業庁 中小企業向け資金繰り支援の案内
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。