年商1億〜10億円だと、いくらくらい調達できる?
運転資金(仕入れ・給料・外注費など、日々の支払いに使うお金)を融資で用意するときは、月商(1か月あたりの売上)の1〜3か月分が一般的な目安です。月商は年商を12で割って出します。
| 年商(例) | 月商(年商÷12) | 運転資金の目安(月商1〜3か月分) |
|---|---|---|
| 1億円 | 約833万円 | 約833万〜2,500万円 |
| 3億円 | 2,500万円 | 2,500万〜7,500万円 |
| 10億円 | 約8,333万円 | 約8,333万〜2億5,000万円 |
この表は計算上のざっくりした目安です。この規模になると、年商よりも利益の額、自己資本(返さなくてよい会社のお金)の厚さ、今ある借入れの総額が金額を大きく左右します。年商が同じでも、利益が出ていて借入れが少ない会社と、借入れがすでに多い会社とでは、借りられる額がまったく変わります。
また、売上が大きいほど、売掛金(後で受け取る代金)や在庫にお金が寝ている時間が長くなり、必要な運転資金そのものも大きくなります。まずは必要運転資金の計算で、売掛金・在庫・買掛金から、自社に本当に必要な額を出しておくと、金融機関との話がかみ合いやすくなります。
信用保証の付いた融資には上限がある?
制度融資などで使う信用保証協会の保証(借入れを公的機関が保証する仕組み)には上限があります。一般保証では、普通保証2億円+無担保保証8,000万円の合計2億8,000万円が上限です。これは一つの融資ではなく、その会社が受けている保証の残高の合計で考えます。
年商が数億円以上になると、運転資金と設備資金を合わせた借入れが、この上限に近づくことがあります。そのため、この規模では次のような考え方が大切になります。
- 保証付き融資の残りの枠をいつも把握しておく
- 枠を超える分は、銀行のプロパー融資や公庫、ABLなどで考える
- 保証付き融資は、急な資金需要や景気悪化のときの備えとして残しておく
なお、信用保証を使えるのは、業種ごとの資本金や従業員数の基準を満たす中小企業者です。会社の規模が大きくなってきたら、対象になるかどうかを信用保証協会や金融機関で確認してください。(信用保証の解説)
銀行のプロパー融資を増やすには?
銀行が自分のリスクで貸すプロパー融資は、黒字・債務超過(負債が資産より多い状態)なし・取引実績が前提になりやすい方法です。この規模では調達の中心になっていきますが、いきなり大きな金額を借りるのではなく、段階を踏んで増やしていくのが一般的です。
メインの銀行と、それ以外の銀行
多くの会社は、売上の入金や給料の支払いをまとめたメインの銀行と、そのほかに一つ二つの金融機関と取引しています。メインの銀行は会社のお金の流れをよく分かっているため、相談に乗ってもらいやすくなります。ほかの銀行とも取引しておくと、条件を比べたり、一つの銀行の方針が変わったときの備えになったりします。
銀行から信頼されるために
- 決算が終わったら、決算書を持って各行へ報告に行く
- 毎月の試算表を早めに出せるようにする
- 業績が悪いときこそ、早めに正直に相談する
保証付き融資と組み合わせながら、プロパー融資の比率を少しずつ高めていくと、借入れ全体が安定します。
金額が大きくなると、銀行は社内で慎重に検討します。申し込みから実行まで時間がかかることも多いので、決算の数字がそろった時点や、大口の受注・設備投資の予定が見えた時点で、早めに相談を始めておくのが基本です。資金が必要になる時期と金額を数か月前から伝えておくと、銀行側も準備がしやすくなります。(プロパー融資と保証付き融資の違い)
在庫・売掛金・将来の売上を資金に変えられる?
不動産などの担保がなくても、事業の中にある資産を使って資金を用意する方法があります。
- ABL(在庫や売掛金を担保にした融資):在庫の30〜50%・売掛金の60〜80%程度が目安で、手続きに1〜3か月かかります。売掛金が1億円ある会社の場合(例)、計算上は6,000万〜8,000万円が目安です。(ABLの解説)
- 将来債権の担保化:毎月決まった収入が入る継続課金型の事業で、これから受け取る売上を担保にする方法です。継続課金の月商の6〜18か月分程度が目安とされています。
- 仕入れファイナンス:仕入れ代金の50〜100%を立て替えてもらい、売れてから返す仕組みです。(仕入れファイナンスの解説)
どの方法も、在庫や売掛金、契約の状況を正確に記録できていることが前提になります。在庫の数が帳簿と合わない、売掛金の回収が遅れている、といった状態では評価が下がりやすくなります。担保の設定や契約の内容は、法律の専門家にも確認しておくと安心です。
大きな設備投資の資金はどう組み立てる?
工場の機械、物流の車両、基幹システムなど、金額の大きい設備投資は、一つの方法でまかなうより組み合わせで考えるのが一般的です。
- 設備資金の融資:見積書と投資の効果(売上や経費がどう変わるか)を示して、銀行や公庫に相談します。
- リース・割賦:設備価格の80〜100%程度をまかなえ、1〜3週間程度が目安です。(リース・割賦の解説)
- 補助金:投資額の1/2〜2/3程度を補助する制度が一般的で、上限は制度によります。原則後払いで4か月〜1年かかります。(補助金の解説)
補助金を使う場合は、交付決定の前に発注すると対象外になる制度が多いため、スケジュールに注意が必要です。補助金の入金までは、融資でつなぐ計画を金融機関と早めに共有しておきましょう。リースは途中で解約しにくい契約が多いため、設備を使う年数と契約期間が合っているかも確認します。
金融機関に何を示せば話が進む?
この規模では、決算書に加えてこれからの計画を数字で示せるかが重視されます。
- 直近3期分の決算書と、毎月の試算表
- 今後1年の資金繰り表と、3〜5年程度の事業計画
- 借入れの一覧(借入先・残高・金利・返済額・保証の有無)
- 売掛金・在庫の一覧と、主な取引先の条件
- 設備投資の見積書と効果の見込み
借入れが増えるほど、「この会社は何年で借入れを返せるか」が見られます。毎年の利益と減価償却費(設備の費用を年ごとに分けて計上したもの)から、返済に回せるお金がどれくらいあるかを自社でも計算しておくと、借りる額が適切かどうかを判断しやすくなります。計画と実績にずれが出たときは、その理由と対策を説明できるようにしておきましょう。税務や会計の判断で迷う点は、税理士などの専門家に確認してください。資金計画の全体像は資金調達計画の解説にまとめています。
準備しておきたい書類・数字
- 直近3期分の決算書
- 毎月の試算表
- 今後1年の資金繰り表
- 3〜5年程度の事業計画
- 借入れの一覧(保証の有無も記載)
- 売掛金・在庫の一覧と取引条件
- 設備投資の見積書と効果の見込み
年商10億円に近づくと、信用保証の対象から外れる可能性や、銀行プロパー融資中心の調達への移行を考える段階に入ります。各行への決算報告と、計画どおりに数字を出せる管理体制を整えておくことが、次の段階での条件交渉の土台になります。
よくある質問
年商3億円の会社なら、いくら借りられますか?
信用保証の上限に近づいたらどうすればいいですか?
プロパー融資を受けるには何が必要ですか?
ABLと将来債権の担保化はどう違いますか?
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 日本政策金融公庫 融資制度の案内
- 中小企業庁 中小企業施策利用ガイドブック
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。