スタートアップの資金調達は、普通の会社と何が違う?
普通の会社は、売上から生まれる利益で借入れを返していくのが基本です。一方スタートアップは、製品の開発や人の採用に先にお金を使い、しばらく赤字が続いたあとで大きく伸びることを目指します。そのため、利益を前提にした融資だけでは、必要な資金をまかないにくいのが特徴です。
そこで多くのスタートアップは、返済の必要がない出資(株を渡してお金を受け取る方法)を中心にしながら、創業融資・補助金・ベンチャーデットなどを組み合わせて資金を用意します。
この段階でいつも意識したいのが、手元の資金があと何か月もつかという見通しです。たとえば、手元に3,000万円あり、毎月の赤字が300万円の会社の場合(例)、何もしなければ10か月で資金が尽きる計算になります。出資の準備には3〜6か月かかることが多いため、この期間を逆算して動き出す時期を決めることが大切です。資金計画の立て方は資金調達計画の解説にまとめています。
創業期でも借りられる融資はある?
あります。代表的なのが、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金です。融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)ですが、創業期の実際の融資額は数百万〜1,500万円程度が多く、自己資金や事業計画の内容で変わります。審査〜決定は平均3週間程度〜が目安です。(公庫の創業融資の解説)
自治体の制度融資にも、創業する人向けのメニューを用意しているところがあります。信用保証協会の保証が付き、利子や保証料の補助がある場合もあります。(制度融資の解説)
融資の良い点は、株を渡さずに資金を用意できることです。出資を受ける前の早い段階で融資を受けておくと、出資の準備をする時間を確保しやすくなります。ただし、借りたお金は返す必要があります。赤字の期間も毎月の返済が続くことを、資金の見通しに入れておきましょう。面談では、創業者の経験や、事業の進み具合を示す数字(利用者数や受注の見込みなど)を具体的に伝えると、実績の少なさを補いやすくなります。
出資はいつ、いくらくらい受ける?
出資は、株を渡す代わりにお金を受け取る方法で、返済の必要はありません。集める金額は事業によって大きく違いますが、一つの目安として、シード(製品を作り始めた初期の段階)で1,000万〜5,000万円、シリーズA以降(事業が伸び始めた段階)で数億円とされています。準備を始めてから入金までは3〜6か月かかることが多いです。
出資してくれる相手には、個人の投資家(エンジェル)、ベンチャーキャピタル(VC:スタートアップに投資する会社)、事業会社などがあります。相手によって、期待することや関わり方が違います。(出資者の種類の解説)
初期の段階では、株の値段をすぐに決めずに出資を受けるJ-KISS(新株予約権を使った出資の仕組み)が使われることもあります。(J-KISSの解説)
注意したいのは、出資を受けるたびに創業者の持ち株の割合が下がることです。一度渡した株は簡単には戻りません。誰にどれだけ株を渡すかの計画(資本政策)は、契約の内容も含めて、弁護士などの専門家に確認しながら進めてください。(出資の解説)
出資と借入れは、どう組み合わせる?
出資だけで資金をまかなうと、株を渡す割合が大きくなります。そこで、次の方法を組み合わせて、株を渡しすぎないようにする会社もあります。
- ベンチャーデット:VCから出資を受けた会社向けの借入れで、1,000万〜1億円程度が目安です。金利は年5〜15%程度で、新株予約権(あとで株を買える権利)が付くことがあります。出資と出資の間の資金を補うのに使われます。
- 将来債権の担保化:毎月の利用料が入る継続課金型の事業で、これから受け取る売上を担保に資金を用意する方法です。継続課金の月商の6〜18か月分程度が目安です。
- 補助金:研究開発や新しい事業への投資に使える制度があり、投資額の1/2〜2/3程度が一般的です。原則後払いで4か月〜1年かかります。(補助金の解説)
借入れは株を渡さない代わりに、返済が必要です。赤字の期間に返済が重くなりすぎないよう、どれくらいの割合を借入れにするかを慎重に考えましょう。出資と借入れの違いは出資と借入れの比較で詳しく解説しています。
資金が尽きそうなとき、何に気をつける?
出資の話が予定より長引き、手元の資金が心細くなることは珍しくありません。そうした場面で気をつけたいのが、費用の高い短期の資金に頼りすぎないことです。
- ビジネスローンは最短1週間程度と早いものの、金利は年8〜18%程度と高めです。
- 2社間ファクタリングは手数料5〜20%程度で、売掛金の少ない段階では使える金額も限られます。(年率換算の計算)
支払いの一時的なずれだけなら、請求書カード払い(手数料1回3%前後、支払いを最大60日程度先へ)で対応できることもあります。(請求書カード払いの解説)
根本的には、資金が尽きる時期を早めに把握し、出資や融資の準備を前倒しで始めることが一番の対策です。あわせて、広告費や外注費など減らせる支出を見直し、資金がもつ期間を延ばすことも考えます。既存の株主や出資を検討している相手に、状況を早めに正直に伝えることも大切です。資金が尽きる直前になってからでは、交渉で不利な条件をのまざるを得なくなることがあります。
資金調達の前に、準備しておきたいものは?
融資でも出資でも、相手が知りたいのは「この事業はどう伸びて、お金を何に使うのか」です。次の資料を用意しておくと、話が進みやすくなります。
- 事業計画書(市場、製品、売上の見込み、必要な資金と使い道)
- 毎月の損益と、手元の資金があと何か月もつかの見通し
- 利用者数・売上・解約率など、事業の伸びを示す毎月の数字
- 誰がどれだけ株を持っているかの一覧(株主名簿・資本政策表)
- これまでの出資や借入れの契約書
出資の契約には、経営や将来の資金調達に影響する条件が含まれることがあります。内容は弁護士などの専門家に確認してから進めてください。
資料は一度作って終わりではなく、毎月の数字を更新し続けることが大切です。数字を毎月そろえておくと、出資の相手から質問を受けたときにすぐ答えられ、融資の審査でも「管理ができている会社」と見てもらいやすくなります。計画と実績にずれが出たときは、その理由と次の打ち手を説明できるようにしておきましょう。
準備しておきたい書類・数字
- 事業計画書(必要な資金と使い道を含む)
- 毎月の損益と資金繰りの見通し
- 資金があと何か月もつかの計算
- 事業の伸びを示す毎月の数字(利用者数・売上・解約率など)
- 株主名簿と資本政策表
- これまでの出資・借入れの契約書
- 創業者の経歴と、チームの体制
事業が伸びて売上が安定してくると、銀行融資や売上を使った調達など、株を渡さずに使える方法が増えていきます。出資の段階が進むごとに、借入れとの組み合わせ方と、創業者の持ち株の割合を見直してください。
よくある質問
赤字のスタートアップでも融資を受けられますか?
シードではいくらくらい出資を集めるものですか?
ベンチャーデットはどんな会社が使えますか?
出資を受けるときに気をつけることは?
- 日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金
- 中小企業庁 中小企業施策利用ガイドブック
- 経済産業省 スタートアップ支援施策の案内
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。