売上が伸びると、なぜお金が足りなくなる?
多くの会社では、仕入れや外注、人件費の支払いが先にあり、売上の代金はあとから入ってきます。この支払いと入金の時期のずれが、成長期にお金が足りなくなる一番の原因です。
たとえば、月末締め・翌々月末払いで取引している会社の場合(例)、今月の仕事の代金が入るのは約2か月後です。その間にも、材料費や給与は先に払う必要があります。売上が倍になれば、先に払うお金もおおむね倍になります。そのため、黒字でも手元のお金が減っていくということが起こります。
- 売上が増えるほど、売掛金(まだ入金されていない代金)が増える。
- 在庫を多めに持つ必要が出ると、在庫の分だけお金が寝る。
- 人を採用すると、売上に結び付く前に給与の支払いが始まる。
この仕組みを理解しておくと、「なぜ足りないのか」を金融機関に説明しやすくなります。必要な運転資金は、売掛金と在庫の合計から買掛金(まだ支払っていない代金)を引くと大まかにつかめます。必要運転資金の計算で試算できます。
まず検討したいのは、どの融資?
成長期の運転資金は、まず融資から検討するのが基本です。手数料型の手段より、総額の負担が軽くなりやすいためです。
- 制度融資:自治体・銀行・信用保証協会が支える融資。保証協会の一般保証は、普通保証2億円+無担保保証8,000万円が上限です。運転資金は月商の1〜3か月分が目安です。
- 日本政策金融公庫:創業期に借りた会社が、追加で相談するケースも多くあります。民間の銀行と並行して借入先を持っておくと安心です。
- 銀行プロパー融資:保証協会を使わず、銀行が自ら判断して貸す融資。黒字・債務超過(負債が資産より多い状態)でないこと・取引実績が前提になりやすく、成長期の後半から視野に入ります。
融資の相談では、「売上が伸びたから足りない」という理由を数字で示すことが大切です。受注の状況、売掛金と買掛金の残高、今後数か月の資金繰り表を用意すると、借りる額の根拠になります。
融資は申し込みから入金まで時間がかかります。残高が底をつく直前ではなく、足りなくなりそうだと分かった時点で早めに相談しましょう。詳しくは制度融資とプロパー融資と保証付き融資のページで解説しています。
融資が間に合わないときは、どう埋める?
融資の審査を待つ間に支払いが来る、急な大口受注で仕入れが先に必要になる、といった場面もあります。そうした短い期間のすき間には、売掛金や支払いの時期を使う手段が役立ちます。
| 手段 | 目安 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| ファクタリング | 売掛金の70〜95%程度を資金化。最短即日〜数日 | 入金までの期間が長い売掛金がある |
| 仕入れファイナンス | 仕入れ額の50〜100% | 大口の受注で仕入れが先に必要 |
| 請求書カード払い | 支払いを最大60日程度先へ。手数料1回3%前後 | 外注費や仕入れの支払いを少しだけ遅らせたい |
ファクタリングの手数料は、取引先に知らせない2社間で5〜20%、取引先の同意を得る3社間で1〜10%程度が目安です。融資の利息とは計算の仕方が違うため、年率に直して比べると負担の大きさが分かります。ファクタリングの年率計算も参考にしてください。なお、取引先が個人の売掛金は対象外になるのが一般的です。
これらはあくまで一時的なつなぎとして使い、継続的に足りない分は融資で手当てする、という順番で考えると負担を抑えやすくなります。
大口の受注が来たとき、何に気をつける?
大きな取引は会社を伸ばすチャンスですが、資金繰りの面では注意も必要です。受注額が大きいほど、仕入れや外注に先に払うお金も大きくなるからです。
- 支払い条件を確認する:代金がいつ入るのか、前払いや中間金はあるのか。契約の前に条件を確かめ、可能なら交渉します。
- 先に出ていくお金を書き出す:仕入れ・外注・人件費を月ごとに並べ、入金までにいくら足りなくなるかを把握します。
- 資金の手当てを先に決める:融資の追加か、仕入れファイナンスやファクタリングか。受注を決める前に見通しを立てます。
一つの取引先への売上の割合が大きくなりすぎると、その取引先の支払いが遅れたときに会社全体が苦しくなります。売上が伸びる時期こそ、取引先が偏りすぎていないかを確認しておきましょう。契約書の内容に不安がある場合は、弁護士などの専門家に確認してください。
人を増やすときのお金は、どう考える?
成長期には、仕事が増えて人手が足りなくなります。ただ、採用した人が戦力になって売上に結び付くまでには時間がかかります。その間も給与や社会保険料は毎月出ていくため、採用は運転資金を増やす要因になります。
- 採用の前に、給与・社会保険料・採用費などを月ごとに見積もり、資金繰り表に入れる。
- 売上に結び付くまでの期間を、少し長めに見込んでおく。
- 雇用や人材育成に関する助成金が使える場合もあるため、制度の条件を確認する。
助成金は、条件を満たしたうえで後から受け取る仕組みが一般的で、採用の時点のお金の不足を埋めるものではありません。受け取れるかどうかも条件次第です。制度の内容は変わることがあるため、社会保険労務士などの専門家や、公的機関の窓口で最新の情報を確認してください。
人件費は一度増やすと簡単には減らせない支出です。売上が伸び悩んだ場合でも支払いが続けられるか、資金繰り表で確かめてから判断しましょう。
成長期に作っておきたい資金繰り表とは?
資金繰り表は、月ごとに入ってくるお金と出ていくお金を並べ、月末の残高を予測する表です。損益計算書(利益の計算)とは違い、実際にお金が動く時期で書くのがポイントです。
- 売上は「売れた月」ではなく「入金される月」に書く。
- 仕入れや外注も「支払う月」に書く。
- 借入の返済や税金の支払いも忘れずに入れる。
少なくとも半年から1年先までを作っておくと、いつ・いくら足りなくなるかが早めに見えます。足りなくなる時期が分かれば、融資の相談を前倒しできます。金融機関に説明するときにも、資金繰り表があると話が具体的になり、追加の融資を相談しやすくなります。
成長期は、売上の見込みが上振れも下振れもしやすい時期です。見込みどおりの場合と、売上が伸び悩んだ場合の2通りを作っておくと、慌てずに判断できます。作り方は資金調達計画のページでも解説しています。
資金繰り表は、作って終わりではありません。毎月、実際の入金と支払いを書き入れて、予測とのずれを確かめましょう。ずれが続く場合は、取引条件や在庫の持ち方を見直すきっかけになります。
準備しておきたい書類・数字
- 直近の決算書と、今期の月ごとの試算表
- 半年〜1年先までの資金繰り表
- 売掛金と買掛金の残高一覧(取引先ごと)
- 受注の状況が分かる注文書・契約書
- 既存の借入の一覧(借入先・残高・返済額)
- 主な取引先との取引条件(締め日・支払日)
売上の伸びが落ち着き、黒字が続くようになったら、借入の条件を見直す段階です。高い手数料のつなぎ資金から、低い金利の融資へ切り替えられないかを確認し、設備投資の計画も検討しましょう。
よくある質問
黒字なのに融資を断られることはありますか?
ファクタリングを使うと、融資の審査に影響しますか?
運転資金はいくら借りておけば安心ですか?
融資とファクタリング、どちらを先に使うべきですか?
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度の概要」
- 日本政策金融公庫「融資制度一覧」
- 中小企業庁「中小企業施策利用ガイドブック」
- 金融庁「ファクタリングに関する注意喚起」
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。