シリーズB以降は、資金の集め方がどう変わる?
シリーズB以降は、事業の形ができ、それを大きく広げる段階です。採用、新しい地域や海外への進出、設備や在庫への投資など、お金の使い道が増え、金額も大きくなります。
この段階で見直したいのは、すべてを出資で賄わないという考え方です。出資は返済がいりませんが、集めるたびに創業者や既存株主の持株比率が下がります。また、大きな金額を高い株価で集めると、その後も高い成長を続けることが求められます。
そこで、使い道ごとに資金の出どころを分けて考えます。
| 使い道 | 向いている手段の例 |
|---|---|
| 採用・研究開発・新規事業 | 出資 |
| 次の出資までのつなぎ | ベンチャーデット |
| 運転資金(入金までのズレ) | 保証付き融資・プロパー融資 |
| 設備・車両・パソコン | リース・割賦 |
| 在庫・仕入れ | ABL・仕入れファイナンス |
| 継続課金の上乗せ | 将来債権の担保化 |
成果が読めない投資には返済のいらない出資を、見通しが立つ使い道には借入を、という分け方が基本です。
大型の出資で、気をつけたい契約条件は?
シリーズB以降の出資では、金額が大きくなる分、契約条件の影響も大きくなります。特に確認したいのは次の点です。
- 残余財産の優先分配:会社を売却・清算したとき、優先株式を持つ投資家が先にお金を受け取る取り決めです。優先して受け取る額の決め方によっては、売却額が想定より低いと、普通株を持つ創業者や社員の受け取りが大きく減ることがあります。
- 希薄化防止の条項:次の出資で株価が前回より下がったとき(ダウンラウンド)、既存の投資家の持株比率を守るために調整する取り決めです。調整の方法によって、創業者の比率への影響が変わります。
- 事前の承認事項:大きな借入や担保の設定に、投資家の同意が必要になる取り決めです。後の借入の自由度に直結します。
株価を高くすることだけを目標にすると、こうした条件が厳しくなることがあります。株価と条件はセットで考えましょう。ダウンラウンドを避けるために無理な目標を立てるより、実力に見合った株価で着実に集めるほうが、後の調達が安定することもあります。市場の相場は時期によって変わるため、具体的な水準はスタートアップに詳しい専門家に確認してください。
銀行融資は、いつから使える?
銀行のプロパー融資(信用保証協会の保証を使わない銀行独自の融資)は、一般的に黒字であること、債務超過(負債が資産より多い状態)でないこと、銀行との取引実績があることが前提になりやすい融資です。赤字を続けて成長するスタートアップには、ハードルが高い場面があります。
ただし、いきなりプロパー融資を目指す必要はありません。次のような段階を踏む考え方があります。
- 口座と入出金を集める:メインの銀行を決め、売上の入金や支払いをまとめて、取引の実績を作ります。
- 保証付きの融資から始める:制度融資など信用保証協会の保証付き融資で、借りて返す実績を作ります。保証の上限は一般保証で合計2億8,000万円です。
- 財務を定期的に報告する:月次の試算表や事業の進み具合を共有し、会社を知ってもらいます。
- 黒字化の見通しが立ったらプロパー融資を相談:債務超過を解消し、利益が出る道筋を示します。
銀行が見るのは、今の数字だけではありません。計画どおりに進んでいるか、約束した報告を続けているかといった積み重ねも判断の材料になります。計画と実績がずれたときは、理由と対策を早めに伝えるほうが、信頼を保ちやすくなります。
出資で自己資本が厚くなった時期は、財務の見え方が良くなるため、銀行との関係を作り始めるきっかけにもなります。
ベンチャーデットと将来債権の担保化は、どう使い分ける?
株を大きく渡さずに資金を上乗せする方法として、ベンチャーデットと将来債権の担保化があります。違いを整理すると次のとおりです。
| 比べる点 | ベンチャーデット | 将来債権の担保化 |
|---|---|---|
| 前提 | VCから出資を受けていること | 継続課金など安定した売上があること |
| 金額の目安 | 1,000万〜1億円程度 | 継続課金の月商の6〜18か月分程度 |
| コストの目安 | 年5〜15%+新株予約権など | 契約による |
| 判断の材料 | 出資者の顔ぶれと次の調達の見通し | 売上の安定性と解約の少なさ |
どちらも返済が必要な借入です。財務の条件がつくこともあり、満たせないと一括返済を求められる場合があります。また、既存の投資契約で借入に同意が必要になっていないか、担保がほかの借入と重ならないかも確認しましょう。
設備・在庫・海外展開のお金は、どう用意する?
拡大期には、形のあるものへの投資も増えます。こうした使い道は、出資で集めたお金を使わずに賄える方法があります。
- リース・割賦:設備やパソコン、車両などは、設備価格の80〜100%を賄えるのが目安で、1〜3週間ほどで使い始められます。
- ABL:在庫や売掛金を担保にした融資です。在庫の30〜50%、売掛金の60〜80%程度が目安で、1〜3か月ほどかかります。物を扱う事業で、在庫が大きくなってきた会社に向いています。
- 仕入れファイナンス:仕入れ代金を立て替えてもらう方法で、仕入れ額の50〜100%が目安です。販売前に仕入れが先に出ていく事業で使われます。
海外展開では、為替や現地の決済の慣習によって、入金までの期間が長くなることがあります。資金繰り表を国や通貨ごとに分けて作り、どこでお金が足りなくなるかを先に把握しておきましょう。税務や現地の規制は、専門家に確認してください。
補助金も、拡大期の投資に使える?
新しい設備の導入や研究開発、新しい分野への進出などには、補助金・助成金が使える場合があります。一般的に投資額の1/2〜2/3程度が対象で、上限は制度によって異なります。原則後払いで、受け取りまで4か月〜1年ほどかかるため、リースや融資で先に支払える計画と組み合わせましょう。会社の規模によっては対象外になる制度もあるため、公募要領で要件を確認してください。
資金調達の担当は、誰が担えばいい?
シリーズB以降は、出資・借入・リース・補助金など、扱う手段が増えます。契約の数も増え、それぞれに財務の条件や報告の義務がつくことがあります。経営者が事業を見ながら、すべてを1人で管理するのは難しくなります。
この段階では、財務を担う責任者(CFOなど)や経理の担当者を置き、次のような仕事を任せる体制を考えましょう。
- 借入と契約の一覧の管理:金額、金利、返済日、担保、財務の条件を1つの表にまとめ、条件を守れているかを毎月確認します。
- 資金繰り表の更新:少なくとも半年から1年先までの入出金を見通し、次の調達を始める時期を決めます。
- 投資家・銀行への報告:月次の数字や事業の進み具合を、決まった形で定期的に共有します。報告が安定していると、追加の出資や融資の相談がしやすくなります。
管理の体制を早めに整えておくことは、その先のIPOやM&Aの準備にもつながります。
準備しておきたい書類・数字
- 月ごとの売上・粗利・顧客数の推移と黒字化までの計画
- 資本政策表(これまでの調達と今回の調達後)
- 既存の投資契約・株主間契約の条件(優先分配・承認事項など)
- 既存の借入の一覧(金額・金利・担保・財務の条件)
- 直近の決算書と月次の試算表
- 設備・在庫への投資計画と見積書
- 国・事業ごとの資金繰り表
上場や会社の売却が視野に入ったら、IPO・M&Aの準備段階です。借入の契約に支配権の変更に関する条件がないか、管理体制や会計の整備にどれだけ時間と費用がかかるかを見直しましょう。
よくある質問
シリーズB以降でも、銀行から融資を受けられますか?
ダウンラウンドになると、何が起きますか?
出資と借入の割合は、どのくらいがよいですか?
ベンチャーデットの新株予約権は、持株比率に影響しますか?
- 全国信用保証協会連合会 信用保証制度の概要
- 日本政策金融公庫 融資制度一覧
- 中小企業庁「中小企業白書」
- 経済産業省「スタートアップ育成5か年計画」
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。