返済が苦しくなったら、最初に何をする?
一番大切なのは、返済が遅れる前に、金融機関に相談することです。返済日を過ぎてから連絡するのと、事前に相談するのとでは、金融機関の受け止め方が大きく違います。黙って延滞すると、信用を大きく損ない、その後の話し合いが難しくなります。
相談の前に、まず今の状況を数字でつかみましょう。
- 手元のお金がいつまでもつか:今後数か月の入金と支払いを書き出し、残高が足りなくなる月を把握します。
- 借入の全体像:借入先・残高・毎月の返済額・金利を一覧にします。
- 支払いの優先順位:給与、仕入れ、税金・社会保険料、借入の返済など、何を先に払う必要があるかを整理します。
状況が分かると、「どれくらい返済を軽くすれば乗り切れるか」が見えてきます。これが、金融機関との話し合いの出発点になります。一人で抱え込まず、顧問の税理士や、公的な相談窓口も早めに頼りましょう。
苦しい時期ほど、目の前の支払いだけを見て判断しがちです。まず全体を一枚の表にまとめることで、打てる手と、優先すべき支払いが整理しやすくなります。
リスケ(返済条件の変更)とは、どういうもの?
リスケとは、金融機関と話し合って、借入の返済の条件を変えてもらうことです。たとえば、毎月の返済額を減らす、一定期間は利息だけを払う、返済期間を延ばす、といった方法があります。借入そのものが無くなるわけではなく、返済のペースを今の会社の力に合わせる手続きです。
リスケを相談するときに求められやすいのは、次のようなものです。
- 今の業績と、苦しくなった理由の説明。
- 今後の資金繰り表。
- どうやって業績を立て直すかを示す経営改善計画(売上の回復策や経費の削減策、返済の見通しをまとめた計画)。
リスケの期間中は、新しい融資を受けるのが難しくなるのが一般的です。そのため、リスケを申し込む前に、立て直しの間の資金が足りるかを確かめておく必要があります。また、すべての借入先に同じ条件で相談するのが基本です。一部の借入先だけに返済を続けると、他の金融機関との関係がこじれることがあります。
リスケは、立て直しのための時間を作る手段です。その時間で事業の内容をどう変えるかが、本当の勝負になります。
公的な相談窓口には、どんなものがある?
資金繰りが苦しいときに相談できる、公的な窓口や仕組みがあります。費用や条件はそれぞれ異なるため、まずは問い合わせて確認しましょう。
| 窓口・仕組み | 相談できること |
|---|---|
| 中小企業活性化協議会 | 収益力の改善や事業の再生について、金融機関との調整も含めて相談できる国の窓口。各都道府県に設置 |
| 認定経営革新等支援機関 | 国が認定した税理士・金融機関などの専門家。経営改善計画づくりの支援を受けられる場合がある |
| 信用保証協会 | 保証付き融資の返済条件の変更や、借り換えの保証の相談 |
| 商工会議所・商工会 | 経営の相談全般。専門家の紹介 |
経営改善計画を自分だけで作るのは大変です。専門家の支援を受けると、金融機関が納得しやすい形に整えられます。計画づくりにかかる費用の一部を国が支援する仕組みもあるため、認定経営革新等支援機関に相談してみましょう。
税金や社会保険料の支払いが難しい場合は、そのままにせず、早めに税務署や年金事務所などに相談してください。事情によっては、支払いを猶予したり分けて払ったりする制度が使える場合があります。法律や税務の扱いは、弁護士や税理士などの専門家に確認してください。
立て直しの間のお金は、どうつなぐ?
リスケや経営改善の取り組みには時間がかかります。その間にも、仕入れや給与の支払いは続きます。新しい借入が難しい時期に考えられるのが、すでにある売掛金や在庫を使う方法です。
- ファクタリング:売掛金の70〜95%程度を、入金日より前にお金に換えます。手数料は2社間5〜20%、3社間1〜10%程度が目安です。借入ではないため、借入の残高は増えません。
- 請求書カード払い:仕入れや外注の支払いを最大60日程度先へ延ばします。手数料は1回3%前後です。
- ABL:在庫や売掛金を担保に借ります。在庫の30〜50%・売掛金の60〜80%程度が目安で、実行まで1〜3か月ほどかかります。
注意したいのは、これらの手数料は年率に直すと重くなりやすいことです。毎月使い続けると、手数料が利益を削り、立て直しを遅らせる原因になります。使うなら、「いつまでに、何で返すか」を決めたうえで、短い期間に限りましょう。ファクタリングの年率計算で負担を確かめられます。
なお、ファクタリングに使った売掛金が、すでに金融機関の担保に入っていないかも確認が必要です。契約の内容によっては、他の借入の約束に反する場合があります。
お金の手当てと一緒に、事業の何を見直す?
資金の手当ては、あくまで立て直しのための時間を作るものです。赤字の原因そのものに手を打たなければ、しばらくするとまた同じ状況に戻ってしまいます。経営改善計画では、次のような点を一つずつ確かめていきます。
- もうかっている商品・取引先と、もうかっていないものを分ける:売上は大きくても、利益が出ていない取引が無いかを確かめます。
- 値上げの余地:材料費や人件費が上がっているのに、価格を据え置いたままになっていないか。
- 固定費の見直し:家賃、使っていない設備やサービスの契約、保険など、毎月決まって出ていく費用を点検します。
- 入金を早め、支払いを整える:取引条件を見直し、売掛金の回収を早められないか相談します。
こうした見直しの内容と、その効果を数字で示すことが、金融機関がリスケや支援に応じるかどうかの判断材料になります。小さな改善でも、実際に取り組んで結果を報告することが、信頼の回復につながります。
苦しいときほど、気をつけたい資金は?
資金繰りが苦しい会社をねらった、悪質な業者もいます。焦っているときほど、条件をよく確かめずに契約してしまいがちです。次のような点に気をつけましょう。
- 「審査が甘い」「すぐ貸せる」と強調する業者:貸金業の登録の有無を、金融庁の登録業者の検索で確認しましょう。
- 給与を担保にした個人向けの「給与ファクタリング」:金融庁は、実質的に貸付にあたるとして注意を呼びかけています。
- 契約書を渡さない、手数料の説明があいまいな業者:あとで想定外の請求を受けるおそれがあります。
- 返済のために、別の借入を重ねること:返済額が雪だるま式に増え、立て直しがさらに難しくなります。
高い手数料の資金に頼り始めたら、それは立て直しの計画を見直す合図です。目の前の支払いを乗り切ることだけを考えず、返済条件の見直しや公的な窓口への相談を優先しましょう。
一度契約してしまった場合でも、内容に不安があれば、早めに弁護士や公的な相談窓口に相談してください。
準備しておきたい書類・数字
- 直近の決算書と、今期の月ごとの試算表
- 今後数か月〜1年の資金繰り表
- 借入の一覧(借入先・残高・金利・毎月の返済額・保証の有無)
- 支払いが遅れているもの・遅れそうなものの一覧
- 売掛金と在庫の一覧
- 業績が悪くなった理由と、立て直しの方針のメモ
- 経営改善計画(作成中のものでもよい)
経営改善計画どおりに業績が戻ってきたら、リスケの条件を元に戻す相談や、借入の正常化を目指す段階です。高い手数料のつなぎ資金を減らし、金融機関に計画の進み具合を定期的に報告して、信頼を取り戻しましょう。
よくある質問
リスケをすると、もう融資は受けられませんか?
リスケは、どの金融機関に相談すればいいですか?
赤字でもファクタリングは使えますか?
税金を滞納してしまいました。融資に影響しますか?
- 中小企業庁「中小企業活性化協議会」
- 中小企業庁「経営改善計画策定支援事業」
- 日本政策金融公庫「融資制度一覧」
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度の概要」
- 金融庁「違法な金融業者にご注意!」
- 金融庁「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください」
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。