シード期は、出資と融資のどちらを先に考える?
シード期とは、プロダクトを作り、最初の顧客がつき始めた段階です。売上はあっても小さく、まだ赤字の会社がほとんどです。この段階の資金調達では、出資と融資の両方を組み合わせる考え方が基本になります。
| 比べる点 | 出資 | 融資 |
|---|---|---|
| 返済 | いらない | 必要(利息も払う) |
| 持株比率 | 下がる | 変わらない |
| 判断の材料 | 成長の見込み | 返済できるか |
| 時間 | 3〜6か月が目安 | 公庫は平均3週間程度〜 |
出資は返済がいらない代わりに、会社の持ち分の一部を渡します。融資は株を渡さない代わりに、毎月の返済が続きます。どちらが良い悪いではなく、使い道に合わせて分けるのがポイントです。たとえば、成果が出るか分からない開発や採用には出資を、見積もりがはっきりした設備や運転資金には融資を、という分け方です。
また、出資を受けて自己資本(返済のいらない元手)が増えると、融資の審査で評価されやすくなることがあります。順番としては、出資の見通しを立てつつ、公的融資も並行して相談する進め方が考えられます。詳しくは出資と融資の違いで解説しています。
出資を受ける相手は、どう選べばいい?
シード期の主な出資者は、次の3つです。それぞれの違いを知っておくと、相手選びで迷いにくくなります。
- エンジェル:個人の投資家です。起業経験者や業界の先輩が多く、金額は比較的小さめですが、判断が早く助言をもらえることがあります。
- シードVC:初期の会社に出資するベンチャーキャピタル(投資会社)です。投資家から預かったお金を運用しているため、将来の上場や売却による回収を前提にしています。
- CVC:事業会社が作った投資の組織です。取引先の紹介など事業面の協力が期待できる一方、競合他社との取引に影響が出ないかを確認する必要があります。
相手を選ぶときは、金額や株価だけで決めないことが大切です。次の点も確かめましょう。
- 次の資金調達のとき、追加で出資してくれる可能性があるか
- 取締役の派遣や、経営への関わり方をどう考えているか
- どんな権利(拒否権や情報を求める権利など)を求めているか
- ほかの出資先の経営者は、その投資家をどう評価しているか
出資は一度受けると、会社が続く限り関係が続きます。お金だけでなく、長く付き合える相手かどうかを見極めてください。
株価と持株比率は、どう考えればいい?
出資を受けるときにまず話題になるのがバリュエーション(会社の値段)です。出資を受ける前の会社の値段を「プレマネー」、出資を受けた後の値段を「ポストマネー」と呼びます。ポストマネーはプレマネーに出資額を足したもので、出資者の持株比率は「出資額÷ポストマネー」で決まります。
計算の例を見てみましょう(数字は説明のための例です)。プレマネーが4,000万円の会社が1,000万円の出資を受けると、ポストマネーは5,000万円です。出資者の持株比率は1,000万円÷5,000万円で20%になり、創業者の比率はその分だけ下がります。プレマネーや出資額を変えて、自分の会社でも何パターンか試算してみてください。株価が高いほど渡す株は少なくなりますが、高すぎる株価は次の調達で問題になることがあります。次の出資で前回より低い株価になること(ダウンラウンド)は、既存の株主との関係を難しくするからです。
持株比率で後悔しないために、次の点を意識してください。
- 一度に出しすぎない:シードで多くの株を渡すと、シリーズA以降の調達で創業者の比率がさらに下がります。
- ストックオプションの枠を残す:将来の社員に渡す株の枠を、先に資本政策に入れておきます。
- J-KISSの切り替えを計算に入れる:プレシードで発行したJ-KISSは、この段階の調達で株に切り替わります。上限の評価額や割引率によって、想定より多くの株を渡すことがあります。
市場の相場は事業や時期によって大きく変わるため、このページでは具体的な株価の水準は示しません。株価の考え方や契約条件は、スタートアップに詳しい専門家に確認してください。
出資の前後で、融資も使える?
シード期でも、公的な融資は検討できます。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、事業開始から間もない会社も対象で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。実際の融資額は、自己資金や計画によって変わります。
融資を出資と組み合わせるメリットは、持株比率を下げずに資金を増やせることです。出資で集めたお金に融資を加えると、ランウェイ(手元のお金で事業を続けられる期間)を延ばせます。
一方で、注意したい点もあります。
- 赤字の段階では、返済の元手は売上ではなく手元資金になります。返済が始まる時期と、次の出資の時期を合わせて考えましょう。
- 経営者の個人保証を求められるかどうかは、制度や金融機関によって異なります。条件は申し込み前に確認してください。
- 公庫には、返済の順番が後回しになり審査上は自己資本に近い扱いになる「資本性ローン」もあります。要件は公庫の案内で確認してください。
制度融資も、信用保証協会の保証が付くため、実績の浅い会社が検討しやすい手段です。
売上が立ち始めたら、資金繰りはどう回す?
最初の顧客がつくと、新しい悩みが出てきます。それが入金と支払いのタイミングのズレです。企業向けのサービスでは、請求してから入金まで1〜2か月かかることがあります。その間にも、人件費や広告費、クラウドの利用料は先に出ていきます。
この段階でやっておきたいのは、次の3つです。
- 月ごとの資金繰り表を作る:毎月いくら入り、いくら出るかを、少なくとも半年先まで書き出します。
- ランウェイを毎月確認する:手元のお金があと何か月持つかを把握し、次の調達を始める時期を決めます。出資は3〜6か月かかるため、早めの着手が必要です。
- 短期のズレを埋める手段を知っておく:請求書カード払いは、手数料1回3%前後で支払いを最大60日程度先へ延ばせます。企業向けの売掛金があれば、ファクタリングで売掛金の70〜95%程度を早めに資金化することもできます。
ただし、これらはあくまで短期のつなぎです。手数料は毎回かかるため、繰り返し使うと利益を削ります。根本的な資金不足は、出資や融資で手当てしましょう。
個人のお客さま向けのサービスの場合
個人向けの売掛金は、ファクタリングの対象外になるのが一般的です。個人向けのサービスでは、前払いや月額課金にして入金を早める、決済サービスの入金サイクルを確認する、といった工夫で入金と支払いのズレを小さくします。
準備しておきたい書類・数字
- 事業計画書と、売上・費用の見込み(月ごと)
- 顧客数・継続率など、プロダクトの手応えを示す数字
- 資本政策表(現在と調達後の持株比率)
- J-KISSなど既存の新株予約権の契約書
- 月ごとの資金繰り表とランウェイの試算
- 決算書または試算表
- 登記事項証明書・定款
売上が伸び始め、同じやり方で顧客を増やせる見通しが立ったらシリーズAの準備です。成長を示す数字をそろえ、次の調達でどれだけの株を渡すかを資本政策で確認しておきましょう。
よくある質問
シード期の出資は、いくらくらい集めるものですか?
VCとエンジェル、どちらから先に出資を受けるべきですか?
出資を受けたあとでも、公庫から融資を受けられますか?
ランウェイはどれくらい残っていれば安心ですか?
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 日本政策金融公庫「資本性ローン」
- 中小企業庁「中小企業白書」
- 経済産業省「スタートアップ育成5か年計画」
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。