創業期は、どこに最初に相談すればいい?
創業期の最初の相談先として多いのは、日本政策金融公庫(国が出資する金融機関)と、自治体の制度融資です。どちらも、決算の実績が少ない会社を前提にした仕組みがあります。
民間の銀行が自分の判断だけで貸すプロパー融資は、黒字の決算や取引の実績が前提になりやすく、創業期には通りにくいのが一般的です。まずは公的な仕組みを使って借入と返済の実績を作り、あとで銀行との取引を広げていく流れが現実的です。
- 日本政策金融公庫:創業前から相談でき、創業計画書を中心に審査される。審査から決定までは平均3週間程度からが目安。
- 制度融資:自治体・金融機関・信用保証協会の三者で支える融資。窓口は銀行や信用金庫、または自治体。自治体によっては利子や保証料の補助がある。
両方を並行して検討する人もいます。どちらが合うかは、開業する地域や事業の内容、希望する金額で変わるため、早めに両方の窓口で話を聞いておくと判断しやすくなります。詳しくは公庫の創業融資と制度融資のページで解説しています。
いくら借りられる? 金額はどう決まる?
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)です。ただし、これは制度の上限です。創業期に実際に借りられる額は、数百万〜1,500万円程度が多いとされています。
金額を左右する主な要素は次の3つです。
- 自己資金:自分で用意したお金。どれだけ計画的に貯めてきたかが見られます。通帳で積み立ての経過が分かると説明しやすくなります。
- 経験:同じ業界で働いた経験や、管理する立場にいた経験。
- 計画の筋の良さ:売上の見込みと、必要なお金の内訳が具体的で、つじつまが合っているか。
運転資金(家賃・人件費・仕入れなど、事業を回すためのお金)は、月商の1〜3か月分が一つの目安です。たとえば、月の売上を一定額と見込む会社の場合(例)、売上が入金されるまでの期間に出ていく支払いを月ごとに書き出し、足りなくなる金額を積み上げると、借りたい額の根拠になります。必要運転資金の計算も参考にしてください。
多めに借りておきたい気持ちは自然ですが、根拠の無い金額はかえって審査で説明しにくくなります。必要な額を積み上げた結果として希望額を出すのが基本です。
創業計画書では、何を見られている?
決算書が無い創業期は、創業計画書が審査の中心になります。見られているのは、文章のうまさではなく「この人なら返せそうか」という点です。
- なぜこの事業なのか:経験やきっかけと、事業の内容がつながっているか。
- 誰に、何を、いくらで売るのか:お客さまの姿と、売り方が具体的か。
- 売上の見込みの根拠:客数×客単価など、数字の組み立てが説明できるか。
- お金の使い道:設備と運転資金の内訳が、見積書などで裏付けられているか。
- 返済の見通し:利益から無理なく返せる計画になっているか。
売上の見込みは、高すぎても低すぎても説明が難しくなります。すでに見込み客がいる、予約や受注の話がある、といった事実があれば具体的に書きましょう。面談では、計画書の数字について質問されます。自分の言葉で答えられるよう、数字の出どころを整理しておくと安心です。
計画書の作り方は、商工会議所や商工会、自治体の創業支援の窓口でも相談できます。自治体によっては、創業支援の講座を受けると制度融資の条件が有利になる場合もあるため、地域の窓口で確認してみてください。
補助金やリースは、融資とどう組み合わせる?
補助金は返済が要らない一方で、原則として後払いです。まず自分で支払い、事業を実施して報告したあとに受け取ります。受け取りまでは4か月〜1年ほどかかることもあり、その間のお金は融資や自己資金で立て替える必要があります。補助率は投資額の1/2〜2/3程度が目安で、上限は制度ごとに異なります。
そのため、創業期は次のように役割を分けて考えると整理しやすくなります。
| 使い道 | 考えられる手段 |
|---|---|
| 開業時の設備 | 融資、リース・割賦 |
| 売上が入るまでの運転資金 | 公庫、制度融資 |
| 販路開拓・設備などの特定の支出 | 補助金(融資で立て替え) |
リースは設備価格の80〜100%を対象にでき、導入まで1〜3週間程度が目安です。設備をリースにすると、融資で借りたお金を運転資金に回しやすくなります。ただし、総額で見ると購入より割高になる場合もあるため、見積もりを比べて判断しましょう。詳しくは補助金・助成金とリースのページで解説しています。
審査に通らなかったら、どうすればいい?
創業融資の審査に通らなかったとしても、事業をあきらめる必要はありません。まずは、何が足りなかったのかを整理することが大切です。理由がはっきり伝えられない場合もありますが、面談でのやりとりを振り返ると、見直すべき点が見えてくることがあります。
- 自己資金:計画に対して少なかった、または出どころの説明が足りなかった。
- 計画の根拠:売上の見込みの組み立てが説明できなかった。
- 個人の信用:カードやローンの支払いの遅れなどが無かったか。
見直しの方法としては、開業の時期を少し遅らせて自己資金を増やす、希望額を必要な最小限に絞る、設備をリースに切り替えて借りる額を減らす、などが考えられます。商工会議所や自治体の創業支援の窓口で計画を見てもらうのも一つの方法です。
焦って金利の高い借入で埋め合わせると、開業後の返済が重くなります。いったん立ち止まり、計画そのものを見直す時間をとりましょう。
創業期に気をつけたいお金の使い方は?
創業期によくあるのが、開業時の設備や内装にお金を使いすぎて、運転資金が早く尽きてしまうケースです。売上は思ったより遅れて入ってくることが多いため、手元に残す運転資金を先に決めてから、設備にかける額を考えるのが安全です。
- 高い金利の借入を最初から使わない:ビジネスローンは早く借りやすいものの、年8〜18%程度と金利が高めです。つなぎとして短く使う場合でも、返済の計画を先に立てておきましょう。
- 個人のカードローンで事業資金をまかなわない:個人の信用情報に影響し、のちの事業融資の審査で説明を求められることがあります。
- 事業と個人のお金を分ける:事業用の口座を作り、入出金を分けておくと、決算書づくりや次の融資の相談がスムーズになります。
最初の決算は、次の資金調達の土台になります。赤字でも、計画との違いを説明できれば次につながります。月ごとの売上と支出を記録し、計画とのずれを把握しておきましょう。税金や会計の扱いは、税理士などの専門家に確認してください。
準備しておきたい書類・数字
- 創業計画書(事業の内容・売上見込み・資金の使い道)
- 自己資金が分かる通帳(貯めてきた経過が分かるもの)
- 設備や内装の見積書
- 月ごとの収支計画と資金繰り表
- これまでの職歴・経験が分かる資料
- 店舗や事務所の賃貸借契約書(または予定が分かる資料)
- 許認可が必要な業種は、その許可証や申請の状況
最初の決算が出たら、計画との違いを振り返り、借入の返済実績を積みましょう。売上が伸びて運転資金が足りなくなってきたら、制度融資の追加や銀行との取引拡大、売掛金を使った資金化などを検討する段階に進みます。
よくある質問
自己資金が少なくても、創業融資は受けられますか?
公庫と制度融資は、両方同時に申し込めますか?
創業前でも相談できますか?
補助金を受けられれば、融資はいりませんか?
- 日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
- 全国信用保証協会連合会「信用保証制度の概要」
- 中小企業庁「中小企業施策利用ガイドブック」
本ページは一般的な情報提供です。金額・条件は目安で、実際は各金融機関・事業者の審査で決まります。法律・税務は専門家にご確認ください。